作:英未
どうしよっかなぁ〜と考えて、小説の基本設定はアニプリに準じることにしました。私の「だぁ!」の基本設定はきまぐれなのですが、テニプリは大枠だけでも決めておかないと私自身が混乱しそうだから…
というわけで、リョーマが好んで飲むのは「ポンタ」です(笑) また修正か……
基本設定を決めたといっても、本編のDVD、持ってないんだけどね。
ポンタを買った。COOLな携帯ボトル缶。
テニスの上手いクールな王子様が好んで飲んでいるから、少しはご利益あるかもしれない。
ひとくち、ふたくち。
よぉし、練習開始!
竜崎桜乃、頑張ります!!
*〜*〜*〜*〜*
日曜日。天気は晴れ。
「ちゃんとボール見てるの?」
偶然会ったリョーマの、そんな台詞で始まった個人レッスン。
愛用の帽子を目深にかぶった王子様は容赦ない。
「ヒザ…のびすぎ」
(あ、アドバイス?)
喜んだのは、哀しいくらいホントに一瞬。
「ヒジ曲げすぎ…」
(ふぇ〜ん)
「肩開きすぎ…」
(ふぇ〜〜ん)
「髪の毛ながすぎ…」
(ふぇ…それってアドバイス???)
「へっぴり腰」
(もーーー)
リョーマのきれいなフォームにあこがれて始めたテニスだが、そのリョーマが見かねてレッスンしてくれるくらい“へたっぴ”だったとは…
(リョーマくんに見られた…… はずかしぃぃぃ)
はずかしくて情けなくて泣きそうになりながら、桜乃はリョーマのアドバイスにしたがってラケットを振ってみる。
(よし、気を取り直して壁打ちもう一回!)
気合だけは充分だった。いや、充分すぎた。この場合、「スカッ」という表現がピッタリだろう。一瞬言葉を失ったリョーマが、ため息混じりに言った。
「ちゃんと当ててくれ…」
「う…」
*〜*〜*〜*〜*
少しはマシになっただろうか。そう思うたびにリョーマの言葉が突き刺さる。
「まだまだだね」
部活で先輩に何度も教えてもらっている上、今日は偶然とはいえリョーマに個人レッスンまでしてもらっているというのに……
「『まだまだ』かぁ…」
しゅんとうなだれてしまう。
「じゃ、俺そろそろ帰るけど」
愛用の帽子を脱ぎながら、リョーマが声をかける。
「あ、今日はありがと、リョーマくん」
本当はにっこり笑って言いたかった。リョーマくんのおかげでこんなに上手くなったよって言いたかった。それなのに…
(だめだなぁ、私…)
うつむく桜乃の頭に、ぽすっと帽子がかぶせられた。
「リョ、リョーマくん!?」
「まだ練習するなら、かぶってるほうがいいんじゃない?」
「あ、あの」
「ずいぶん陽に焼けてるみたいだけど」
「え?うそっ!?」
「特に鼻の頭」
「お、お借りします…」
(ふぇ〜ん、はずかしい〜〜〜)
はずかしくて情けなくてどうしようもなくて、桜乃はますますうつむいてしまう。どうしてこう、リョーマには見られたくない所ばかりを見られてしまうのだろう。
「ねぇ」
「え?」
はっとして顔を上げると、リョーマの視線にまともにぶつかった。
かぁぁぁと顔が熱くなる。
「あのポンタ…」
「え?」
「飲まないならもらっていい?」
リョーマの視線が桜乃のバッグに注がれた。つられて見ると、バッグの横に練習前に買ったファンタが置いてある。
「あ、えーと、今は飲まないからいいけど…」
(興味あるのは私よりポンタかぁ…)
何故かよけいに落ち込みながら、桜乃は答えた。
(私って、何もかも『まだまだ』なのかなぁ…)
「じゃ、もらうよ」
そう言って飲もうとするリョーマをぼんやり見ながら、桜乃は何か忘れているような気がして首をかしげた。瞬間、はっとしてリョーマを止めにかかる。
「そ、それ! 私の飲みかけっ!!」
桜乃を振り返ったリョーマが、大きなため息をつく。
「ぬるい」
「…あの……」
(突っ込むところはそこなんだ…)
いや、がっかりしている場合ではない。
「ご、ごめんなさい。練習前に買ったから…」
上目づかいに謝る桜乃を見て、リョーマがふっと笑ったように見えたのは気のせいだろうか。
「持った瞬間分かりそうなものなのにね」
「え?」
かるくため息をついて、リョーマは憮然と言った。
「それに気付かないなんて、俺もまだまだだね」
「…リョーマくん」
リョーマが言うように、ファンタがぬるくなっているかどうかは持ったときに分かるだろう。ということは、リョーマは分かっていて飲んだ? でも、何のために??
(…もしかして、私をなぐさめてくれたの?)
桜乃のテニスの腕は『まだまだ』と言うリョーマ。でも彼は、そんな自分も『まだまだ』だと言う。青学レギュラーのリョーマも、レギュラーではない桜乃も、お互い『まだまだ』。だからおあいこ。そう気付いたとき、桜乃の顔に微笑が浮かんだ。
「ありがと、リョーマくん…」
そんな桜乃を確認するかのようにちらっと横目で見ると、リョーマはくるりと背を向けた。
「じゃ」
「あ、あの、リョーマくん。今日はほんとにありがと」
「いいよ。かわりにポンタもらったから」
「それ、どうするの?」
「飲むに決まってるだろ?」
「え?でもさっきぬるいって…」
「冷やしてから飲む」
「……」
それはそれでいいのだけれど…
(だけど、それ、私の飲みかけ……)
キャップがあいていたことに気付いていないのだろうか? まさか。
でも、だとしたら…
なんとなくうれしくて、桜乃はつぶやいた。
「『まだまだだね』……か…」
一方、当のリョーマは、桜乃が言った何かがひっかかって、歩きながらずっと考えていた。自分が「ぬるい」と言う前に、確かに彼女は何か言っていた。確かに何か……
「あ…」
『そ、それ! 私の飲みかけっ!!』
思わず、手にしたファンタをまじまじと見る。
心なしか、顔がうっすら赤くなっているようだ。
「ま、いいか。まだまだ残ってるし」
桜乃が聞いたらガックリきそうな台詞を言って、リョーマは振り返った。青空の下、桜乃の姿が見える。
「ここだけの話だけどね」
初のテニプリ小説です。まさか書くとは思わなかったけど、書いてみると楽しいね(苦笑)
「テニスの王子様」#tp-s001西遠寺英未(2005.5.29)
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気になっていたところを修正。何回目よ(^^;
(2005.6.5)
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さらに基本設定に従って修正。
(2005.6.27)