ある一場面

「あたたかい」

作:英未


この「ある一場面」は、ふと浮んだ情景を文章にしてみたものです。
短編のオムニバスになっております(…というか、なる予定^^;)
お楽しみいただければ幸いです。

さて、この作品の場面とは…

2004年冬企画「Da!Da!Da! Happy-Lucky Bag! on hero-shan」参加作品のイラスト(「寒くなってきたね」「帰ろうか…」)を思い浮かべていただけるとうれしいです。~†~



 冴え冴えとした星空に、白い息が立ち消えていく。
 雪がちらつき始めた夜道を、二人はゆっくり歩いていた。

「寒くなってきたね」

 立ち止まって、未夢は空を見上げた。
 音も無く、雪はそっと降りてくる。

 ふいに、未夢が彷徨の前に回りこんで、にっこり笑った。

「早く帰ろう、彷徨…」

 白い吐息のむこうで笑う未夢にしばし見とれていた彷徨が、ゆっくり口を開いた。

「そうだな、帰ろうか・・・」

 そう答えながらも、彷徨は未夢を見つめている。
 そんな視線がはずかしくなって、未夢は顔を赤らめた。

「ねぇ、顔に何かついてる?」
「ん〜、そうだな…」
「えっ? ついてるの? いつから?? 早く言ってよぉ!!」

 あわてて顔をさわる未夢の仕種(しぐさ)がかわいくて、彷徨は未夢を抱きしめたい衝動に駆られていた。

「彷徨彷徨!どこについてるの?」
「…まず、ここに目があるだろ」

 すっと、彷徨の手が未夢の顔にのびた。

「それから、ここに鼻…」

 未夢の顔がますます赤くなる。

「ちょっと、彷徨! それって“ついてる”とは言わないのっ!!」

 ぷぅとむくれる未夢を、彷徨はおもしろそうに眺めている。

「ほら、まだついてる」
「えっ? どこど…こ……!」



 ふっと、彷徨の顔が近づいて、未夢の動きが止まった。



 冷たいくちびる…

 でも、心はこんなにあたたかい…

 だって、あなたがそばにいてくれるから……



 そんなことを考えているうちに、すっと彷徨の体が離れた。

「ほら、帰るぞ」

 にやりと笑う彷徨に、未夢は複雑な表情で答えている。
 うれしいような、くやしいような、この気持ちはいったいどのように表現すればいいのだろう。

「もぉもぉもぉ!」

 ポカポカと彷徨の胸をたたいて抗議してみるが、その甲斐なく、すっぽりと彷徨の腕の中に納められてしまった。




(あったかい…)




 外はこんなに寒いのに、どうして心はこんなにあたたかいのだろう。

 それは、きっと、

 彷徨が抱きしめてくれるから。

 未夢がそれに応えてくれるから。



 そして、帰る場所が、同じだから……




 未夢の手を取って自分のコートのポケットに突っ込むと、彷徨は未夢を振り返った。

「はやく帰ろう」

 その手をきゅっと握り締め、未夢が笑顔で答える。

「うん、はやく帰ろう!」



 笑顔でそう言えることに感謝したくなった、そんな一場面(ワンシーン)……






この世にツッコミが必要な作品が顔を見せるとき、必ずや現れるという希望の闘士“聖闘士”! おぉっ!ここに登場か!? 新コーナー誕生だ!!

【トレーズ閣下の“ビシッとつっこみ隊!”…ハイパー♪】

「一場面」? こういうのは「一幕」と言うべきではないかね?
それより問題なのは、私は「聖闘士」ではないということだ。レディ、このタイトルは一体なんだ? コトは全てエレガントに運びたまえ!



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