『月』という名の贈り物

作:英未


(※2006年9月7日 加筆・修正)

以下、修正前の私のコメント&宮原しゃんのコメントです

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一茶のある俳句から出来た小説です。当初の狙いとは異なった作品となりましたが、私が抱く彷徨のイメージは反映されているのではないかと思います。私にとって、彷徨は冷静な判断が下せ、かつ行動力も伴った、精神的な面を見れば自律した大人のようでもあり、反面、小さい子供のように心を温めてくれる「誰か」を求めているようでもあり、いろんな意味で「少年」なんだと思わせてくれます。

なんとなく感じるのですが、彷徨は幼い頃から感情を押し殺してきたようで、あらゆる感情が希薄ではないかと心配でもあります。そんな彼の心を和ませてくれるのが「未夢」なのでしょう。でも、決して未夢に弱い自分を見せようとはしないでしょうが、心のどこかで未夢ならあるがままの自分を受け止めてくれると思っているのではないかと思います。
そういったイメージが根底にあるので、このようなストーリーが出来あがったのだと思っています。

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(以下コメント:宮原しゃん)

やっぱお母さんだわ、himi,しゃん。(笑)
キチンと未夢がお母さんやってるし、彷徨もとっても優しいし♪
未夢ってアニメ見てるとどんどん「お母さん」になってきてるのよね。彷徨もそんな未夢がすっごく好きなんじゃないかな?もう結婚してもバッチシやっていけるわよ。未夢は。(ほほ)
で最後のシーンはプロポーズですか!(うひゃぁ〜♪)
himiしゃん、素敵な小説ありがとねぇ〜★

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ありがと☆宮しゃん。

しかし、この私のコメントって、ホントに私のコメントか?(笑)
えらいマトモなこと書いとるような気がする……(^^;





西遠寺の縁側。いつもなんとなく始まるお月見。
秋に近づいたせいか、風が少し冷たくなって心地いい。
月はほぼまるくなって、夜空に浮かんでいる。

「まんま!」
月を指して、ルゥが未夢を振り返る。

「どうしたの? ルゥくん」
「どうやらルゥちゃまは、あのお月様が欲しいようですね」
「お月様をって言われてもね・・・。ちょっとムリだね〜」
困った顔で、未夢はルゥに応える。

「ぱんぱ?」
未夢がダメなら彷徨に・・・とでも思ったのか、今度は彷徨を振り返る。
「ルゥ、もしあのお月様をルゥが独り占めしたら、こうやってみんなでお月見が出来なくなるぞ?」
「?」
「きっとオレたちだけじゃなくて、世界中の人たちがお月見出来なくなるだろうな。」
「??」
「だってさ、ルゥがお月様を独り占めしたら、もうお月様は空にはいなくなっちゃうってことだろ?」

彷徨の言葉を理解したのか、ルゥは少し考え、にっこり笑って言った。

「ぱんぱ! まんま! わんにゃ! お・・きちゃ!」

「みんなでお月見する方がいいってことですね、ルゥちゃま! なんてお優しい! わたくし、ルゥちゃまのシッターペットとして鼻が高いです〜!」
「えらいよ、ルゥくん!」
「ありがとな、ルゥ」

みんながやさしい気持ちになって、月を見ていた。




*〜*〜*〜*〜*




「さっきのルゥじゃないけどさ…」

ルゥとワンニャーが部屋に戻った後も、未夢と彷徨は月を見ていた。

「出来るものなら、手に入れたいって思うよな…」
「あのお月様を? ルゥくんにはあんなこと言ってたくせに?」

くすっと笑う未夢に、彷徨がぶすっと答える。

「あのさ、ルゥの場合はあの月そのものが欲しかったわけだろ? そうじゃなくて、オレは月みたいなものが欲しいって言ってるわけ。」
「…ほえ???」
「だからさ、なんか、似てると言うか、思い出さないか? 何に似てるかって言われても、オレもよく分からないけどさ」

遠い目をして、彷徨は月を見上げている。

(お月様のむこうを見てる?)
未夢は、彷徨が感じていることがなんとなく分かるような気がした。

「・・・きっと、彷徨のお母さんに似てるんだよ」

そっと、子守唄を歌うように、未夢の優しい声が響いた。

「やさしく見守っていてくれている雰囲気がね、似てるんじゃないかな…」

すこし意外だったかのように、彷徨は未夢を見つめた。

「母さん…に……?」
「だって、うちのママでもこんな感じのときがあるもん。あ・の・ママがだよ! だから、『お母さん』て、みんなお月様みたいな雰囲気を持ってるのかも…ね?」
にっこり笑って振り向いた未夢に、彷徨は目を瞠った。


「おまえって、たまにいいこと言うよな」
「たまにって何よ?」

ぷぅと膨れる未夢に、彷徨は優しい表情を投げかけた。

「未夢も『お母さん』してるもんな」
「え?」
「ほら、未夢はルゥの地球のママだろ? 時々そんな雰囲気あるもんな」
「彷徨……」
めずらしい彷徨の台詞に、未夢は照れているようだ。
そんな未夢を横目で見ながら、彷徨はふと考えた。


(月と未夢が似てるから、欲しいと思ったのか…?)


「あれ? 彷徨、なんか顔が赤くない?」

はっ、と我に返った彷徨と、未夢の視線がぶつかる。

「もしかして熱がある??」

ずい、と未夢が覗き込んでくる。あわてて彷徨は目をそらす。

「気のせいだろ?」
「そうかなぁ?」
「そ、それよりさ、ルゥじゃないけど、月が欲しいって言っても、どうしようもないよな。ルゥと同じくあきらめるか〜」

あはは、と軽く流したつもりだったが、未夢は真剣な表情を浮かべていた。

「お、おい、未夢…?」

ためらいがちに声をかける彷徨を、未夢がじっと見つめる。

「あのね、彷徨、『月』はプレゼントできないけど、それに代わるものならできるよ」
やさしく笑って、未夢が言った。


「私が彷徨を見守っていてあげる」


「…え?」


驚く彷徨に、未夢はにっこり微笑んだ。

「約束ね!」

自分達を照らす月の光が、未夢の言葉で一層やさしくなったように、彷徨は思った。





*〜*〜*〜*〜*




ほんわりと心地よい風が二人を包むように吹いた。
月の光が心地よかった。

今は、何の言葉も要らない。
触れ合っているわけでもないのに、お互いの優しさや温かさを、肌で感じている。



しばらく二人は、押し黙ったまま月を見ていたが、ふいに彷徨が口を開いた。

「未夢は、欲しいと思わないのか?」
「欲しいって、お月様を?」
「ん……」

ためらいがちな彷徨の返事に、未夢は少し首をかしげ、考えるように彷徨の横顔を見つめた。

「え〜っとね、どっちかって言うと、お月様よりももっと確かなものが欲しい…かな?」

えへっと笑う未夢を、彷徨はじっと見つめた。

「…彷徨?」
きょとんと未夢が見つめ返す。

「…じゃあさ、オレも未夢にプレゼント」
「え? なになに?」
「『月』に代わるもの」
「『月』に代わるもの?」
「そう。『月』をあげるかわりに、オレが未夢を守ってやるよ」
「私、を…?」
「しかも出血大サービス。期限は無期限」
「……そ、それって、一生って、コト?」

彷徨の言う意味を飲み込んで、未夢は真っ赤になった。

「そういうコト。だから……」

未夢から視線をはずした彷徨も真っ赤になっている。

「ずっと側にいろよ」

「うん」

未夢の嬉しそうな返事が聞こえた。






*〜*〜*〜*〜*




二人は月を見上げていた。
今は何の言葉も要らない。
何も言わなくても、分かる。
側にいるだけで、心が温かい。

とん、と未夢が彷徨に寄りかかった。

「これって、『月』という名の贈り物なんだね…」

くすりと彷徨が笑った。
「なんで笑うのよ」
体を離して、未夢が軽くにらむと、ゆっくりと彷徨の唇が動いた。
きょとん、と未夢が彷徨を見返す。

「…何て言ったの?」
「さぁ?」
意地悪く彷徨が舌を出す。
「もおっ!」

やれやれといった態で、彷徨が月を指差した。

「つ・き…?」
「みたいなもん」
「…みたいな??」

むむむと考え出す未夢を引き寄せると、彷徨は耳元でささやいた。


「す・き」


かぁぁぁぁぁっと未夢が赤くなる。

「そう聞こえたんだ、さっき未夢が言ったこと」
「かっ、彷徨! すすすす好き、じゃなくて、月、て言ったの!」
「はいはい」
「あーっ! 信じてないっ!」
「はいはい」
「あーっ!やっぱり信じてないっ!」
「はいはい、信じてマス」
「…なによ、その投げやりな言い方」

ぷぅとふくれる未夢と今にも大笑いしそうな彷徨。
こんな関係が心地いい。


ふ、と彷徨が真顔になった。

どき、と未夢が動きを止めた。

彷徨の手が未夢の髪をすくう。

「好きだよ」
「私も、好きだよ」

彷徨との距離が、ゆっくりと縮まっていく。

未夢はそっと目を閉じた。
月に結んだ二人の約束が、ずっとずっと続きますように。
そんな未夢の祈りに応えるように、彷徨の唇が、そっと未夢のそれに触れた。





今になってこれを公開しようと思ったのは、先日頂いたメールがきっかけ。

>マキさま
メールありがとうございます。わざわざご感想をいただいて嬉しいです。
今回公開した作品は、以前書いたものを修正しただけではありますが、これまで書棚で公開しておりませんでしたので、お楽しみいただければ幸いです(^^*)

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で。
ネタプリ的コメント(笑)
加筆・修正時のBGMは「ウサミミ仮面のあるばむ」でした。ホントです。
そのせいか、ラストに付け加えたくてしょーがない台詞があったのですが、自粛しました。でもコレをつけたら笑えるよね。雰囲気変わるよね。うずうず、ウズウズ(笑)

では、興味のある方のみ、レッツラゴー!←Dグレ風
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「ホントに見るの?」o( ̄ー ̄)○☆パ〜ンチ
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「ではどうぞ」(*^ー^)ノ☆。・:*:.・★
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「なぁ、未夢」
「なに?彷徨」
「月って満ち欠けするよな?」
「そーだね」
「満ち欠け具合に応じて、見守り方にも変化があるとか?」
「…はい?」
「……そもそも新月の場合、この約束ってどうなるんだ?(←真顔)」
「……………(デリカシーのないヤツ!)

加筆・修正してて、謎だったんだよね、私(^^;
でもまぁ、愛に悩んでたらウサミミ仮面が来てくれるかも(笑) いやいや、出ている作品が違うから! きっと輝&流が来てくれるでしょう。……って、輝もウサミミ仮面も、CVは置鮎さんだわ(汗)



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