作:英未
ぱさ、と軽い羽音が聞こえた。
その羽音は月の光に導かれるように、迷いもなく進んでいく。
やがてそのオカメインコは、一人の少年の肩に、その翼を休ませた。
「おかえり、オカメちゃん」
少年は、優しくその翼を撫でると、夢見るように月を見上げた。
「満月は、まだ先だね……」
(もうすぐだよ、パピィ。もうすぐパピィの願いが叶うんだ…)
少年は深く息を吐き出すと、物悲しい旋律を爪弾いた。
満月の夜 きっと 奇跡がおきる……
名前を呼ばれて、未夢は、はっとした。
目の前には心配そうに覗き込むクリスの顔。
(ここ、どこ?)
自分がどこにいるのか思い当たらず、未夢は辺りを見回した。
瀟洒(しょうしゃ)な壁紙、アンティークのような調度品……
(そっか、クリスちゃんの家だ……)
でも、それにしては…と、未夢は改めてクリスを見た。
クリスはこの部屋にふさわしく、レースやリボンをふんだんに使ったドレスを着ている。たしかに、その装いはクリスらしいが、どこか変だ。何と言うのか、妙に飾り付けられて、
(なんか、クリスちゃん、お姫様みたい……)
と、未夢の目には映るのだった。
「大丈夫? 未夢ちゃん」
クリスが心配そうに声をかけた。
「うん、大丈夫。なんかぼーっとしてたみたい……」
あはは…と笑う未夢を見て、クリスがほっとしたようにため息をもらした。
「よかったですわ。今日はせっかく王子様がお城にお招きくださったのですもの。未夢ちゃんも一緒に楽しめないと、わたくし、さびしいですわ……」
「……え? 今、なんて……??」
「未夢ちゃんも一緒に…」
「そ、その前!」
「……? 王子様が…」
不思議そうに首をかしげて自分を見るクリス……。よくよく考えてみれば、いくらクリスでも、こんな“いかにも”といったドレスを普段着として着るだろうか…。それにクリスが言う「王子様」とは…。未夢にはさっぱり分からなかった。
「あ、あのね、クリスちゃん。王子様って…? そ、それもだけど、ここ、クリスちゃんの家だよね?」
わたわたと質問を重ねる未夢に、クリスは心配そうに答えた。
「どうしましたの? 未夢ちゃん。ここはお城ですわ。今日はめずらしい方がお見えだとかで、王子様がわたくしたちをお招きくださったのですけど、未夢ちゃん、やっぱりどこか具合が悪いんじゃ…」
言い終わらないうちに、がばっと、未夢はクリスに詰め寄った。
「クリスちゃん、これってお芝居…」
きょとんとしたクリスを見て、未夢はがっくりと肩を落とした。
「じゃ、なさそうよね……」
お姫様のようなクリス、豪華な部屋、いったいどうなっているのだろう……。
(まさかっ! また絵本の中に入ったんじゃ……)
はっとして辺りを見回す。
そうだ、それなら説明がつく。
でも、そうだとしたら、いったい何の絵本に入ってしまったのだろう。
それに……
(……王子様って、また彷徨なんじゃ……)
ははは…と苦々しく笑う未夢を、クリスは心配そうに見つめていた。
■あとがき■
このお話、続きませン☆(うわぁ/汗)
2〜3年前からこの状態で、いっこうに進んでいませんが、設定メモもないし(もともとないのですが)、頭の中にも欠片しか残っていないので、とりあえずここまで書いたよ〜と公開することにしました。
ひとつ確実に覚えていることは、文中の“王子様”の正体。
どうぞ想像してお楽しみくださいませ(笑) こっそり教えていただけると嬉しいです(あれ?/汗)
思い出したら、ぼちぼち続きを書きたいなぁと。
では、そろそろ通院時間ですので、言い訳しながらウサミミ仮面風に「さらばだ☆」
(2006.10.10)