つかぬことをお尋ねしますが、シャープペンシルのことをシャーペンと言いますか? 私はそう言うのです(汗) それを確認した上でお進み下さいませ。
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ちら、と未夢は彷徨を見た。
なぜだろう、近頃気がつくといつも彷徨が隣にいる・・・・・・気がする。
今だって、夜がふけてきたというのにわざわざ宿題をみてくれているのだけれど・・・・・・
(彷徨って、こんなにやさしかったっけ???)
いつからだろう・・・・・・
たぶん、商店街の発明コンテストが終わってからくらい・・・・・・
その頃から、彷徨は自分に対してやさしくなった気がする・・・・・・
「なんだよ?」
じろっと横目で見られて、未夢はあわてて数学の教科書に目を移した。
「べ、別に・・・・・・ なんでもないよ」
ふーんと彷徨は応じたが、未夢の答えに納得していないことは明らかだった。
「あ、あのね、彷徨、この問題なんだけど・・・・・・」
本能的に話題を変えるべきだと悟った未夢は、あわててその問題を彷徨に見せる。
「途中までは解けたのか?」
「え・・・と、最初から解けてませんです、はい・・・・・・」
呆れたような視線を送って、彷徨はため息をついた。
「な、なによっ! こんなの簡単に解けるなら苦労しないわよっ!!」
「あ、逆ギレ」
「うっ・・・・・・」
冗談とも本気ともつかない表情で、彷徨は応じてくる。
(おかしいよね、やっぱり。彷徨ならムダ口たたいてないで速く解け!とかなんとか言いそうなものなのに・・・・・・)
考えれば考えるほど・・・・・・
(すご〜く気になる)
なにが彷徨を変えたのか? 特番でも組めそうな事実が明らかになるかも!
にまにまと笑う未夢を横目で見ながら、ため息混じりに彷徨が言った。
「どうせまたくだらないことでも考えてるんだろ?」
その言葉に、未夢はガバッと反応した。
「ちょっと、大スクープかもしれないのよ! だって彷徨が・・・・・・あ・・・・・・」
言いかけて、未夢はあわてて口を押さえると、「しまった!」といった表情で彷徨を見た。
「オレが、なんだって?」
じとっとみつめてくる彷徨の視線を真正面から受けて、未夢も負けじと彷徨を見据えた。
「なんで?」
「なにが?」
「最近やけにやさしいもん」
「誰が?」
「彷徨が。それにいつも隣にいてくれるじゃない」
「いや、それは・・・・・・」
問いただすような未夢の視線をふいとそらして、彷徨はいつもの口調で言った。
「そんなことより、宿題終わらせないと、徹夜することになるぞ」
「徹夜!? 徹夜なんかしたら授業中寝ちゃうよ〜〜〜 それはマズイよ〜〜〜」
バサバサとノートを繰って、未夢は問題に取り組み始めたが、
「あ、シャーペンの芯がなくなっちゃった・・・・・・」
「ほら、これ使えよ」
「ありがと、彷徨。ちょっとシャーペン借りるね」
あわてて問題に取り組み始めた未夢を見ながら、ぼんやりと、彷徨は未夢の言葉を思い出していた。
*****
『なんで?』
『最近やけにやさしいもん』
『いつも隣にいてくれるじゃない』
(そう、決めたからな・・・・・・)
悲しげに未夢をそっと見ると、彷徨は目を伏せた。
先日の発明コンテスト。三太と望、ルゥにワンニャー。自分たちで考えて、製作して、発表して、自分は楽しい時間を過ごした。未夢たちも発表会に来てくれて、わるわる団によるアクシデントはあったけど、本当に嬉しかったし楽しかった。けれども、その陰で、未夢に寂しい思いをさせていたことに気付いた。
普段は元気な未夢。そんな未夢がときどき寂しそうな表情をすると、いつも「未夢は笑っているほうがいい」と思う。
それなのに、この自分が、未夢に寂しい表情をさせていたなんて・・・・・・
(情けねーな)
ルゥやワンニャー同様に、未夢はもうすでに自分の家族であって、今では未夢のいない生活なんて考えられない。だから、自分が未夢の笑顔を守ろうと思った。いつも未夢が、この西遠寺で明るく笑っていられるように、ずっと、未夢の隣で・・・・・・
(ちょ、ちょっと待て!)
彷徨の顔がサッと朱に染まる。
(ずっと・・・・・・? オレ、いったい何考えて・・・・・・)
表情を隠すように、彷徨は口元を手で覆った。
(でも・・・・・・)
守ろうと思ったことは嘘じゃない。
本気でそう思った。なんなら、宣誓してもいい。
でも、それって・・・・・・
(受け取りようによっては、一種のプロポーズじゃ・・・・・・)
動揺する彷徨の脳裏を、未夢の笑顔がよぎった。
(でも・・・・・・)
守りたいと思う。
ずっと、未夢のそばで、
ずっと、この西遠寺で、
未夢のすべてを、守りたいと思う・・・・・・
*****
「彷徨、彷徨ってば!」
自分を呼ぶ声に、彷徨は、はっとした。
「どうしたの? 顔、赤いよ。風邪??」
心配そうに覗き込む未夢の視線にくらくらして、彷徨は思わず額に手を当ててつぶやいていた。
「オレ、けっこう重症かも・・・・・・」
「え? 熱ひどいの? 大変! 早く寝ないと!!」
「あぁ、大丈夫大丈夫。でも、今日はここまでな」
「うん、ありがと。具合悪いのに、ごめんね」
しゅんとする未夢に笑いかけながら、彷徨はノートを持って立ち上がった。
「あ、彷徨、ちょっと待って」
「・・・?」
「はい、これ。ありがと」
にっこり笑って、未夢が彷徨のシャーペンを差し出す。
「あぁ・・・・・・」
受け取りかけて彷徨はその手を止め、ふっと笑うと、持っていたノートで未夢の頭をぽんとたたいた。
「やるよ。それでテストを受けたら100点取れるかもな」
そう言った彷徨に、未夢はどきどきさせられた。
(これって、彷徨がいつもそばにいてくれるってことみたいだよね・・・・・・?)
確かめてみたい。
近頃彷徨が隣にいてくれるようになった理由を・・・・・・
「あ、あのっ、彷徨っ!」
「・・・今度は何だよ?」
「さっきの答え、まだ、聞いてない・・・・・・」
一瞬、二人の時間が止まった。
(言って、いいのか・・・・・・?)
とまどったように、彷徨の瞳が揺れる。
(聞かせて、くれるの・・・・・・?)
期待と不安に潤む瞳で、未夢は彷徨を見つめている。
ふいに、すっと彷徨が指差した。
「それが、ヒント、かな・・・・・・」
「え・・・?」
未夢の視線が、手にした彷徨のシャーペンにそそがれる。
「じゃ、おやすみ」
「あ、あの、彷徨?」
後ろ手に戸を閉める彷徨を見送りながら、未夢はぎゅっとシャーペンを抱きしめた。
「これが、ヒント・・・・・・?」
未夢の口元に微笑が広がる。
(いつもそばにいてくれるってことなんだろうけど・・・・・・)
まったく彷徨は・・・・・・と、未夢はくすっと笑った。
(答えを見つけるのに、一生かかってもいいのかな?)
たぶん、彷徨はずっとずっと隣にいてくれる。
だから、一生かかって見つければいい。
(ゆっくり、見つければいいよね? その間にヒントをいっぱいもらって・・・・・・)
にゃぱ〜とにやけながら、未夢は机に突っ伏した。
(なんだか、ものすご〜く嬉しいよ〜〜〜)
自分は一人ぼっちじゃない。
ちゃんと彷徨が隣にいてくれるから。
現在も、未来も、ずっとずっと・・・・・・
答えを見つけた、その後も・・・・・・
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だーーーっと書いて、見直さないでアップしようとしているもので、「ここ変だよ〜」って箇所が多々あるとは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
おかげさまで、「だぁ!」の小説も通し番号を見る限り30編となりました。こちらの書棚に入れていないものも含んでの話ですが・・・。他所様に置いて頂いているものもありますし、企画期間のみ公開したものもありますし、まだ完成していないものもありますし(汗)、それでも私にすれば、30編書けたことはすごいことだと思います。
ただ、全部短編てのも・・・(--;)
今度は長編を公開してみたいものですが、2ページ分書いて止まりました(^^ゞ いや、登場人物がその続きではなくもっと先の場面の台詞を喋りだしてしまって・・・ ピンチでございます。で、あきらめて短編を書く私・・・
いつになったら長編を公開できるのでしょうねぇ(遠い目)
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