作:ちょび
今日は、未夢と彷徨の結婚式・・・のはずが・・・。
某ウエディング・パレスでは・・・。
「たいへんよっっ!!西遠寺先生、緊急手術があって今日結婚式に間に合いそうに ないってっっ!!」
そう言って、新婦の控え室に入ってきた二人の少女。
黒髪を結い上げているのは、未夢と中学からの親友の小西綾。そして、その後ろに控えている少女は花小町クリスティーヌ。綾と同じく未夢と中学からの親友である。
「困りましたわね・・・。それにしても西遠寺先生ったら、ご自分の結婚式と、お仕事と、どっちが大切なんでしょうか?」
はあ、とため息をつくクリスに、綾も同意見だ。
「そうよねー。それに、未夢ちゃんだって、早く式を挙げなきゃ 色々と都合が・・・。」
うーん、とうなって
二人は未夢に聞こえないように相談を始めた。
(ねえ、いっそのこと、場所を変えて、わたしたちで 式をやってあげない?)
(それは、いい考えですわ。でも、どこで・・・?)
少しして、相談が決まったらしく、『ちょっと待ってて』と未夢に言って、部屋を後にした。一人になった未夢は、思わず涙がでてきた。鏡を見つめながら、自分にいいきかせる。
(泣くな、未夢。こんなんじゃ、彷徨が悲しむし、嫌われちゃうかもしれない・・・。)
ところ変わって、ここ西遠寺医院では・・・。
「はい、天地ですが・・・。なんだ、綾か。え、なるほどね。
うんうん、いいわよ。院長先生には あたしが説得するわ。OKが出たら、教えるから 5分くらい待ってて。」
そう言って、西遠寺医院の看護婦であり、綾の姉でもあるななみは電話を切ると、院長室へと向かった。
「・・・というわけなんです。けれども、いいですか?」
「ああ、いきなりやって、彷徨の奴を驚かしてやろうじゃないか。はっはっはっは。」
ななみと院長は、共犯者の笑みを浮かべて、『準備』にとりかかった。
「先生、おつかれさまでした。未夢ちゃんには直接お話になられたんですか?」
「いや、なんか怖くてな・・・。綾ちゃんに伝言を頼んだよ。」
看護婦のゆかりが淹れたコーヒーを口に流し込み、そっとため息をついた。
あいつ、怒ってるかな? いや、怒っているならまだいいけれど、もしかしたら 一人で泣いているかもしれない・・・・。
あいつは、昔から 人に迷惑をかけないように、影で泣くやつだった・・・。そんなあいつを守ってやりたくて、プロポーズしたはずだったんだけどな。
普通なら、個人病院に勤務している彷徨がこんなに忙しいはずはないのだが、先日『日本の明日を担う、若き青年医師』と、テレビで紹介されてしまってから、遠方からも彷徨に診察を頼む
患者が急増してしまい、今のような状態になってしまったのだ。
それは、式場を予約した後で、もはやどうしようもなかった。
「・・・先生、院長先生がお呼びです。中庭に来ていただけますか?」
「ああ、今行くよ ・ ・ ・ 。なあ、未夢からなんか連絡はあったか?」
その問いには答えず、彷徨を中庭まで連れ出し、ひそかにほくそ笑むななみであった。
「なんだ、これ ・ ・ ・ ・。」
そこには、テーブルがいくつか並べられていて、中央の花壇の傍にはウエディング・ドレス姿の未夢が立っていた。
「はーい、西遠寺先生。せっかくの結婚式を挙げられないんじゃ未夢ちゃんがあんまりかわいそうなんで、院長先生にお願いしてここで手作りの式を挙げさせてもらうことにしましたー!」
「あのな・・・。」
はあっと、ため息をつくと 未夢が哀しそうな顔をしたので、あわてて言い直した。
「み、みゆ・・・。あの、な・・・そうじゃなくて、いいのか?ちゃんとした式場じゃなくてこんなところで結婚式で・・・・・・。 」
「こんなところじゃないよ!忘れちゃったの?ここは、わたしが彷徨と、初めて会ったところなんだよ!」
未夢の顔を見つめていた彷徨が、はっとかつてのことを思い出したらしく、やさしく微笑んで、告げた。
「よし、ここで結婚しよう。」
その瞬間、未夢は今までみたこともないくらいきれいな笑顔になった。そして、彷徨の胸に飛び込んだ。
「さて、神父さんがおらんから、わし
が代わりをしようかの。」
「大丈夫かよ?オヤジ。」
「ああ、まかせておけ。」
ななみ、綾、そして二人を大事に思う人たちみんながこの場に集まり、二人は誓いのくちづけを交わした。未夢の両親、そして宝晶院長も涙があふれて、止らないようだった。
「彷徨くん、未夢のことを頼むね。強がりはするけれども、寂しがりやだから、どうか 守ってやってほしい。ひとりで泣くことのないように ・ ・・ ・ 。」
「はい、お父さん。きっと大切にします。」
「未夢さん、彷徨のやつは意地っ張りだし、色々たいへんじゃろうが、見捨てないでやっておくれ。」
「そんな、こちらこそ、おねがいします。どうか見捨てないでくださいね。」
両家族、感動のシーンが繰り広げられていると、綾が叫んだ。
「みなさーん!重大発表がありまーす!はいっっ、未夢ちゃん、どうぞー。」
すると、未夢は顔を真っ赤にして、は
ずかしそうに告白した。
「来年の5月には、もう一人家族ができます。もう一人の家族ともども、よろしくおねがいします。」
「未夢、おまっっ、できたのかっっっ!!!」
えへ、と笑う未夢にほほをそめなが
ら、彷徨はやさしくその体を
だきしめた。
二人を祝福する声は、その日、いつまでも続いていた・・・。
ちょびです。
しょうこりもなく、また駄文を書いてしまいました。なんとなく二人の結婚式を書きたかったですが ・ ・ ・ 。いかがでしたか?読みずらいとこなんかがあったら、管理人さまの判断で修正、おねがいします。
ちょびより