幻を手に入れるには!? 作:坂下あみ

貴方が、たとえ幻でもほしい”物”は何?
それが見つかることが、恋への一番の近道――



2月14日・・。バレンタインデーv
この日を悪夢の日と呼んでいる者が一人居た。 
それは、西遠寺彷徨。

「きゃ〜っ!西遠寺くぅ〜んvvv」
今年のバレンタインは土曜日だからといって、
女の力をなめていた彷徨は、
その声を聞いてがっくりと来た。

「またかよ・・・・」
チョコレートの山を抱えて戻ってくる彷徨に、
未夢は、手を腰に当てて、ビシッッ!!と言い張る。
「彷徨っ!!女の子の気持ちを無駄にしたら、絶対に許さないからねっっ!!!」
「はいはい〜・・・」

全く、こいつはどこまでお人好しなんだろうな?
そう思い、苦笑を浮かべながらチョコレートの山を居間に"ポイッ"と置く。

未夢は、その様子を見ながら、
(私のチョコも、あのチョコと一緒にポイッって放置されちゃうのかな・・・)
と少し悲しくなった。

けれど、すぐに頭をフルフルと振り、いつもの未夢に戻った。




AM10:00
ガラガラと玄関が開くと同時に・・・?
「お邪魔しま〜っす!!彷徨〜!居るか〜!!」
と、いつもの陽気な声が聞えてきた。

「あの声は・・三太だな・・。」
彷徨は、そう呟くと、玄関に顔を出した。



「にしても、すごい量だよなぁ〜」
今、三太は、チョコレートの山を見つめながらニヤニヤと不適な笑みを浮かべている。
「三太、お前、今何かたくらんでるだろ?」
「いぃやぁ〜、べっつに〜。」
頭をポリポリと掻きながらそういう三太。
彷徨には、わかった。三太がこういう不適な笑みを浮かべる時には、必ず何かあるのだ。

「実はさぁ、いつもいってる中古レコード屋で、な、なんと!!!
幻のトリのレコードが見つかったんだっっ!!!」
(またかよ・・・)
普通の人間なら、そう思うかもしれない。
けれど、この三太は、普通の人間では無いのだ。

そう、だいたい本当に人間なのか疑わしい。
もしかしたら、三太は、「サンタクロース」なのかもしれない・・。


「で、その幻のトリのレコードとやらが、どうしたんだ?」
彷徨は、言われる事がなんとなく判る様な気がした。

「じ・つ・は♪
その幻のトリのレコードは、全部で13枚あるんだ。
そしてだな、ここからが重要だ。
そのトリのレコード一枚につき、代金とは別に、
チョコレート1224個必要なんだ!」
今や、三太のバックには、メラメラと炎が燃え上がっている。

「そ、それで、今チョコは、何個あつまったんだ?」
彷徨は、その迫力に冷や汗を流しながらも、
一応尋ねてみた。

「224個・・。」
「それで、俺の元にチョコを恵んで下さい〜って来たワケか?」
「そうそう!!さすがは俺の親友、良くわかるじゃないの!」

そう言って、二人は手分けして、チョコの数を数えはじめた。

PM3:00
「はぁ・・、結局、何回数えても999個しかないんだよなぁ・・
彷徨のチョコ。」
三太は、そう言って、ため息をついた。

「ねぇ、彷徨。チョコ、あと1個でレコード手に入るんでしょ?」
そう言いながら、未夢は居間に入ってきた。
手には、きれいに包装されているチョコ。

「え?あぁ。」
彷徨は、そう答えながらも、未夢の手から目を離さない。

「そうなんだよぉ〜、光月さんっっ!!協力して〜」
涙を流しながら未夢の手を握って頼み込む三太。


「おい、三太!そのチョコだけは譲らねぇからなっ!」
横から、三太を睨みながら彷徨がそう言う。

「え〜?何でだよ〜?」
「そうよ、彷徨、大体ね、誰があんたになんかチョコあげるっていったのよっ?!」
未夢の顔には少しだけピキピキマーク。



「あのなぁ〜っっっ!!!!」
「何よっっ!!!」
「誰がお前からチョコなんか貰いたがるかっつーの!」
「あんたねぇ〜っっ!!今に見てなさいっっ!!彷徨も驚くくらいのカッコい〜い、男の人、探してやるんだからっっ!!」
「あぁ、そうですかっ!!
 どうぞお好きに!」
「「ふんっっ!!!」」



しばらく言い争った後、
未夢は、三太の手に無理矢理チョコを押し付けた。
「え?」
「三太君、これあげるよ。」
「で、でも、このチョコ彷徨の為に作ったんだろ?」
「いいのっ!彷徨は、女の子の気持ちなんてど〜でもいいのよっ!きっと!」
「だけど・・・・」
「いいから、これは三太君が貰ってっっ!!!」








コト。
三太が、西遠寺の石段を下りていた時、ふと上から何かが落ちてきた。
しゃがんで、拾って見ると、それはチョコだった。
メッセージカードも付いていた。

「サンタクロースさんへ。
クリスマスには、素敵なプレゼントをどうもありがとう。
これは、クリスマス・プレゼントのお礼。
私のペットのふくろうの配達を頼みました。
きっとそのふくろうがサンタさんの下へ、このチョコレートを届けてくれるとおもったから。

たとえ貴方が、サンタさんじゃなくても、
これは受け取ってください。」

と、書いてあった。
送り主の名前は、
西遠寺 瞳

「うそだろ・・・」
三太は、驚いた。
瞳は、彷徨の母。
もう、彷徨が3歳の時に他界してしまったはずだ。

「瞳さんは、光月さんと彷徨に幸せになってほしいんだ・・。」
そう思うと、三太は、
西遠寺に戻って、郵便受けに未夢(彷徨の)のチョコを入れると、
瞳からのチョコレートを抱えて、中古レコード屋へ急いだ。




セント・バレンタインデー・・。
今年は、西遠寺でまた、一組のカップルができたのである。










げげげっっ!!!
何じゃこりゃ〜・・。
皆さん、許して下さいね。
悪気があってこんな駄文書いてるのではないのです。
とほほほほほ。
こんなので許して下さる人ってきっと神様だわ。



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