突発的アイディア文章最新

20110614

作:しーば


スノウ聞いて出てきた

黄昏のおいてけぼりをくらった彷徨だと思う


最後の場面は幽体離脱して、未夢との記憶を全部持ってる彷徨との、夜空のデート。
沢山の星を見ながら、手を繋いで。


2人になる。


以下、添削時切り取り文章


未来の運命を知ってしまった今、この気持ちをどうするかが1番大切。
未来から来た私は、この気持ちに整理を付けたいみたい。

今まで時空の歪が上手く運んでくれて、過去の整理をしてきたみたいだけど。
今回は時空の歪が全く発生しないみたいで、何処にも行けないみたい。
だから、今の私と一緒に居るようになった。

↑ここまで切り取り文章






彷徨編


未夢。

俺は未夢にとってどんな存在だったのだろう?
一緒にいた同居人、ただのおせっかい、五月蝿い奴だったのかな?

最近になって俺の感情がおかしくなってきている。
未夢と一緒に過ごしたはずの記憶が段々と薄れてきている。

ワンニャーとルゥの記憶ははっきりと覚えているけど。
そこに一緒に居たはずの未夢の姿を思い浮かべる事が出来ない。


あの時、俺は未夢に持っていた感情を全て伝えたつもりだった。
「俺は未夢が好きだ」と。
だけど、結局は変にはぐらかされて未夢はもどってしまい、返事という返事は貰っていない。

ショックのせいなのかな?
それとも、俺が無意識の内に未夢を忘れようとしているのかな?


でも、未夢は今までと何の変わりも無く、この街に遊びに来る事もある。
俺からの告白があってから、未夢がこの西遠寺に来る事はあっても
泊まって行く事はなくなった。

天地、小西、花小町達と集まってお泊り会をしているらしい。



「ねぇ、知ってる?未夢ちゃんに初めての恋人がでたんだって。」
「ええー!本当に!未夢ちゃん最近急に大人っぽくなって変だな〜って思ってたんだけど」
「うん、でも・・・私てっきり、未夢ちゃんの恋人って西遠寺君だと思ってたのに」
「・・・そうだよね〜、どうしたんだろうね」

俺は、委員会が遅くなって暗くなった教室に鞄を取る為に戻って来たけど
「未夢」と言う言葉を聞いて、入り口前で停まり、扉を背にして教室の中の会話を盗み聞きしていた。


未夢に恋人。


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなっていく感覚が俺を襲った。

教室の2人が「もう帰らないと」と話を変えたのを聞いて、俺は隠れるように隣の教室に入った。

夕方7時になっても、オレンジ色の光りが外から教室に入り込んでいる。
その光りが黒板に斜めに光りと影の境目を作っている。

俺はその部分を眺めながら、オレンジ色の光りが教室から無くなるまで未夢の事を考えていた。

2人で過ごした思い出の場面が、浮かんで来ない。
隣に居た未夢の本物の笑顔、何かを我慢して辛そうな顔、今にも泣きそうな顔。
そんな未夢と一緒に居て、ずっと居たいと俺の中で出来上がった感情があった。


胸が苦しくなって、無理に深呼吸を繰り返す。

「良かった」と何度も自分に言い聞かせた。


未夢を一方的に思っているだけのこの気持ち、早く無くしたい。

暗くなった自分の教室に戻って俺の席から鞄を取る。

無意識の内に、前未夢の席が有った所を見てしまう。




未夢編。


今の私は2人居る。
一人は、今存在している中学生の私。

もう一人が、未来から来た大人の私。


最初は幽霊だったと思っていたけれど、本当は未来から来た私だった。
未来の私、死んじゃうんだって・・・。


私が西遠寺に居た時、彼女は一時期姿を消した事が有った。
なんだか、西遠寺の幽霊に対する結界が強くなり、西遠寺に近寄れない時があったみたい。


その後、パパとママが日本に帰って来たから、私は西遠寺から実家に戻る事になった。


その時何故か彼女一緒について来て。
今私の目の前でぷかぷかと浮きながら寝ている。


最初会った時は、彼女が居た事に気付けなかったけど、私と長く一緒に居た事も有って、私に乗り移れるようになって、それから彼女の姿を私だけが見れるらしい。

見える姿は、今の私と同じぐらいの年齢で、容姿は鏡を見てるぐらいそっくり。
だけど、彼女の方が大人びた所があって、ちょっと悔しい。


そんな彼女は、私の部屋の中央部にふわふわ浮きながら寝ている。

浮いていてもしっかり仰向けになって寝てる。
何か空中に板が有る様に髪まで綺麗に横になってる。

不思議ですなぁ〜。

彼女曰く、
『やろうと思えば、人や物に触れることが出来るし話し掛けたりもできるけど、凄く眠くなるの』



私もその眠気をつい最近知ったばかり。

彼女が私の身体に乗り移ってがこの身体を使うことも出来るのと同じ様に。
私が彼女に身体を預けて、身体の外に出る事も出来る。

もちろん、外に出ずに一つの身体を2人で共有して使うこともでき、美味しいお菓子を食べる時は、必ず2人一緒に食べる決まりもできた。

何処でも行けるのが楽しくて、長い間身体から離れた時があったんだけど、その後凄く眠くなって、私は3日ぐらい眠り続けた事があったらしい。

私が寝ている間は身体を使っている彼女が、私の代わりに普段通りの生活をしてくれてた。

代わりに学校に行って貰った時、意外な事があった。
彼女はとても頭が良い。普通の大人だからって理由だけでは無く、普通に頭が良い。
信じられない、本当に未来の私なのかな?と疑いたくなる。


私と恋愛話をする事があるぐらい、友達のような存在になってる。


彼女が未来の私だって事は、彼女から直接言われた事は一度も無い。
彼女は気付いていないと思うけど、彼女が主体で身体を使って、私の方が乗り移ってた時。


何処からか、私の声が聞こえる事があった。
それが段々とハッキリ聞こえるようになって、・・・この人・・・もしかして私なのかな?
と思うようになった。


彼女は、私には『幽霊です』としか言って無い。
名前なんて教えて貰った事も無い。


考えてる事が私に筒抜けだから、すぐ分っちゃうよ。




今の私は彼女のおかげで何処にでも行ける様になった。
部屋の天井をすり抜け、家の屋根をすり抜け、私の家が小さくなるまで空に登れるし。
時間をかければどんな遠い所にも行ける。

実は彼女に内緒で彷徨の所に行く事もある。
私が伝えたかった彷徨への気持ちを、ずっと心の中にしまったままだからね。


私が彼女に身体を預ける時は、まず彼女を買収する為の賄賂が必要なの。

町で1番有名なタルト屋さんの1番人気の白いちごタルトを買って来て。
目を輝かせている彼女に「一緒に食べましょ」と言って、2人で身体を共有して1つの白いちごタルトを食べる。

食べてる途中で、「後お願いします」と言って私が身体から出てしまう。


不思議な事に、身体はカラッポには出来なくて、必ずどちらかが身体に入っていないと駄目みたい。
私が身体に戻るまで、彼女は私の身体から離れる事は出来ず、仕方なく?過ごしている。


ちょっと目を離すと、お菓子ばかり食べてしまう彼女。
う〜ん、体重大丈夫かな?






私は家の屋根が周りと見分けが付かないぐらい高く空に登ってから、彷徨が居る方向を目指して、空の中をぐんぐんと飛んで行く。

初めての頃は、飛んでる飛行機にビックリしたり、渡り鳥を追いかけていたら陸地が見えない海上だったり迷ったりもした。


だけど、曇りや雨の日でも、雲を突き抜けるぐらい高く空に登れば蒼い空を見れる。


今日は彷徨の様子を見に行く事に決めていた。
クラスメイトだった彩ちゃんやクリスちゃん達とは何度か会った事はあるけど、彷徨とは会ってない・・・。

久しぶりだけど、ちゃんと覚えてるかな?
会った瞬間「誰だお前?」とか言われたりしたらどうしよう。?
って、彷徨は今の私の姿見えないんだっけ。


西遠寺に到着したのが夕方、夏という事も有って6時過ぎだけどまだまだ明るい。
少し緊張しながら彷徨の姿を探す。

一応、玄関から入ろう・・・。
「おじゃましま・・・」言い終りそうになるこの言葉を止めて、私は言い直した。

「ただいま」

誰かの返事を期待して言った訳じゃないけど、こっちの言葉の方が良いと思ったから。
私は、そのまま彷徨の部屋の前まで行く。

「彷徨居る?」

そーっと、彷徨の部屋の襖を通り過ぎて中を伺う。

部屋の中には誰も居なかった。
その後、西遠寺の何処を探しても彷徨が居ない。

あらためて玄関に戻り、彷徨の靴を探してみる。
彷徨が通学時に使っていた靴が何処にも無い。


うーん、やっぱり彷徨まだ帰ってきてなかったか・・。
よし、学校まで行こう〜!




校舎の入り口に来た。
ちょっと前までは毎日通っていた場所。
だけど、長い間見ていないと記憶の中の雰囲気とはちょっと違う。



私はわざと下駄箱の場所から、地面を歩いて校舎の中を移動する。
一歩一歩歩き、階段もしっかりと一段一段踏みながら3年生の教室に向かう。
私にとっては初めての3年生の階。


あれ?彷徨って何組だったっけ?
そういえば聞いてなかった・・・。


私は、3年生の教室を1組から順番に回って行く。
3組に入ろうとした時に、隣の4組から女の子の話し声が聞こえてきた。



話の内容は、何組の女の子が何組の男の子が好きだとか、誰が恋人になったとかの話題だった。。
知っている子の話も出てきたのを境に、2人の声がもっと聞こえるようにと、2人の教室にすり抜けながら移動た。

次は誰なのかな?と期待を膨らませて2人の間でほお杖を突くような格好で寝そべった。
時たま、膝から下の足を交互に上げたり下げたりしながら聞いていた。


「ねぇ、知ってる?未夢ちゃんに初めての恋人がでたんだって。」
「ええー!本当に!未夢ちゃん最近急に大人っぽくなって噂があったよね。それが原因だったの?」

えっ!?私に恋人が出来たって?
ウソ、ウソそんなの嘘だよ〜。
あれ・・・でも大人っぽくなったって事は、もしかして・・・。
私じゃなくて・・・。


「うん、でも・・・私てっきり、未夢ちゃんの恋人って西遠寺君だと思ってたのに」
「・・・そうだよね〜、どうしたんだろうね」

あれ?
今何か人の気配がしたような?


私は、立ち上がってその気配がした入り口の扉に向かう。
扉を出た所で、扉に隠れるように話を聞いている彷徨を見つけた。

顔を下に俯かせている為、彷徨の表情は見えない。
私には恋人なんて居る訳が無い・・・だって、今私の目の前に居る彷徨をずっと想い続けているのだから。


だから、この瞬間が私にとって衝撃的な出来事だった。
この場に身体を持った私が居たら、言う事はできるけど、今の私は彷徨へ伝える事が出来ない。


ねぇ、彷徨?・・・今の嘘だよ。

今の私じゃ彷徨に触れる事は出来ないけど、彷徨に伝えたくて、恐る恐る彷徨の腕を掴もうとした。
でも、彷徨は私の手から逃げるように、隣の教室に行ってしまった。
2人の話が終わり教室を出ようとしたのに彷徨が気付いたからだった。


彷徨を追いかけて隣の教室に入る。
彷徨は廊下から見えない位置で、黒板の方を眺めながら立っていた。



私は彷徨のこんな顔は初めて見た。
落ち込んでいるような、悲しんでいるような、寂しいような表情。

私には見せた事の無い。

「彷徨」


私の声は届かない、だけど少しだけ宙に浮きながら彷徨に近づく。
彷徨と鼻と鼻が触れそうなぐらい真正面に立った。

どうして、そんな顔をするの?


どうして、今の彷徨がこんな風になるの?


・・・もう終わりにしたはずなのに・・・。



私が西遠寺から、私の実家に引っ越す数日前、私は彷徨から告白をされた。
私と言っても、その時彷徨が告白した相手は、未来の私・・・。


その時、私は身体を彼女に預けていた。
彼女から「どうしてもやりたい事がある」とお願いされて、それを了承していた。


未来から来た彼女は、彷徨が言うタイミングは分っている。
私の方は、彼女の答えが気になったので、気づかれない様に覗き見してたの。

彼女の答えは「好き・・・じゃない」だった。






未来の私は、生きていた世界で彷徨と幸せに暮らし続ける事が出来なかった。
この世界なら、最初からやり直せるチャンスはあると私は思っていた。
今ここで、彷徨からの告白に素直な返事をして、別な未来を作っていけば、別れの無い未来が来るだろうと予想していた。


そう上手くはいかなかった。


彼女が彷徨と死別してしまう原因を避ければ大丈夫だと、彼女は過去を変える事に専念した。
時空の歪を使って何度とそのタイミングを防ごうと努力したが、結局失敗。
その度に、彷徨の悲しむ姿を何度も見てきた彼女。


彷徨を好きだから・愛しているから。



だからこそ、彷徨の告白に答えてはならないと決めていた。
彷徨には私の事を「キライ」になってもらい、私と関わりの無い未来を過ごせば、彷徨は悲しむ事は無い。

彷徨からの告白の返事は彼女に任せようと、心に決めていた。


だって


未来の私は


「西遠寺未夢」


なんだもん、かないっこないよ。



でも・・・、私にだって彷徨を想う気持ちはあるよ。



私は彷徨の頭を胸で包み込むような形で、彷徨を抱きしめた。
触れる事は出来ないけど、これぐらいの事はさせて。

良いでしょ・・・私にとって、最後の・・・・・・。







窓の外では黒い雲が発生し、校舎の窓に大きな雨粒を落とし始めていた。



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