作:しーば
(((('A`)))プチみかん際に出すつもりで書いた物を今さら出します。
(((('A`)))許してください。
スーパーたらふくで会計を済ませ、買い物袋に品物を詰め込んで、スーパーの出口に向かう途中に未夢は笹飾りを見つけた。
折り紙で作った長い輪飾りが、笹を回るように飾られていて、願いことが書かれた短冊や金色や銀色の折り紙がキラキラ光っていた。
近づいてみると、短冊に書かれていた文字が目に入る。
『だいすきなたかひろくんのおよめさんになりたいです』
『サボテンマンになってわるものをやっつける』
『ゆみこちゃんをおよめさんにしたいです』
『だいすけくんと、ひろくんと、ゆうすけくんをおむこさんにします』
『しょうらいは、がいこうかんふじんになりたいです』
『あたらしいゲームがほしいです』
『みどりちゃんがすき』
『にほんだいひょうのさっかーせんしゅになりたいです』
『あめりかのだいりーぐでかつやくしたいです』
『おとこのこがたくさんでてくるまんがほんをつくっておかねもちになりたいです』
『ほうちょうげきだんにはいっておおとりをやります』
笹の後ろの壁には桃の木幼稚園と書かれた張り紙が貼ってある。
うっ、なんだか凄いのも混ざってるわね・・・。あれももの木ってどこかで聞いたような?
『いつもパパとママがいないのでたくさんあそんでもらいたいです』
・・・・・・。
その短冊を見てから、未夢は小さい頃にいつも両親を待っている自分を思い出していた。
イスに座りながら大きなテーブルに肘を着けて組んだ両手を枕にしながら、ただ単に時間が過ぎるのをただボーっと待ち続ける。
そんな頃に自分も同じような願いがあった。『パパとママが早く帰ってきて、一緒にご飯を食べたい』
確かそんな感じだった。
両手いっぱいの荷物を持った未夢が西遠寺の石段を登り終える。
「遅いぞ」
不意にかけられたその声の方を振り返る。
「・・・しょうがないでしょ、今日の結構重たいんだから。ちょっとぐらいは手伝ってくれても良いんじゃない?」
右手を彷徨の方に突き出す。しかし、彷徨はその荷物を受け取らずに未夢の顔をしばらく見続ける。
うっ、段々手が疲れて来ちゃった。
腕に力が入って目をぎゅうと閉じて頑張った未夢だが、とうとうこらえなくなって突き出した手を下ろそうとした。
あれ?
だけど、右手が急に軽くなった。
目を開けてみると、袋を左手に持った彷徨が玄関に向かう後ろ姿が見えた。
その後姿を小走りで追いかけ、横に並ぶ。
「なんでもうちょっとはやく持ってくれなかったのよ」
「未夢って七面鳥みたいだな」
「え?」
「ころころと表情が変わって面白いからさ」
「なんですと〜?」
彷徨はそう言って廊下を進んで行った。
見えなくなった彷徨を追って台所に入ると、彷徨が買い物袋の中の物を冷蔵庫の中に移していた。
彷徨と入れ違うように冷蔵庫の前にしゃがみ冷蔵庫を開ける。
「未夢・・・あのな、帰ってくるのがいつもより遅かったから・・・心配したんだぞ」頭の上から彷徨の声が聞こえた。
見上げると冷蔵庫に片手を着いた彷徨の顔が真上に見える、夕焼けの光がキッチンを薄く染めているせいで、彷徨の表情がはっきりと見えない。
彷徨が私の事を心配?
彷徨の手が未夢の頬を目指しながらゆっくりと近づいてくる。
えっ・・・嘘でしょ?
しかし、未夢の頬には触れずそれよりも下の方に進み、同時に彷徨の顔も近づいて来た。
彷徨・・・ちょっとまっ・・・・・・。
状況に耐えられない未夢は目を瞑った。
・・・・・・・ガサガサ・・・・・・ガサガサ・・・。
あれ?何?この音?
恐る恐る、瞑っていた目を開ける。しかし、さっきまであったはずの彷徨の顔がどこにも無い。
「早く残りのやつも冷凍庫にしまっておけよ、融けるぞ」
イスに座って、少し融けたアイスを食べている彷徨が、私をを見ていた。
「ん?どうかしたのか?顔が赤いぞ?」
「あ・・・あいすね、うん。そうだよね、早く冷凍庫に入れないと融けるよね・・・あはは」
ふう、そうかさっきのガサガサって音は袋からアイスを取り出す時の音だったのか・・・。
心配だったんだぞ?ってあんな風に言われて、あんな状況になちゃったから少し誤解しちゃったじゃない。
全ての品を冷蔵庫に入れた後、麦茶を注いたコップを持って、食卓を挟んで彷徨の向かい側のイスに座った。
両肘をテーブルに着け、両手で自分の顎を支える姿勢でアイスを食べる彷徨を見る。
彷徨は、融けてできたアイスの雫を零さないように、顔を上に向けながら食べてる。
小さい時はこうやってパパとママの帰りを待っていたんだっけ・・・
夕方になって部屋の中が暗くなっても電気も付けない暗くなったテーブルに一人。
あの時は寂しかったけど、今は・・・全然寂しいなんて思えない。
「どうかしたか?さっきから俺の事じーっと見て」
アイスを食べ終えた彷徨が、話しかけてきた。
「ううん、何でもない。あっ!聞いてよ、さっき買い物終わった時に、幼稚園に行っている子達が作った七夕の短冊付けた笹飾り見つけてね。
サッカー選手になりたい。とか、ゆみこちゃんをお嫁さんにしたい。とか男の子の願いは普通だけど。
3人の男の子をお婿さんにする。とか、外交官婦人になる。とか、女の子の考えが凄くてビックリしちゃったのよ」
私が話している途中、彷徨がテーブルの上でうつ伏せになって背伸びをしていた。
「・・・なあ未夢、そこの幼稚園ってもしかしたらももかちゃんの行っている所じゃなかったか?」
あれ?彷徨も麦茶飲んでる。いつの間に持ってきてたんだろう?
「そうか・・・桃の木ってどこかで聞いた覚えがあると思っていたけど、ももかちゃんが行ってた幼稚園か、ちょっと納得・・・。」
「男の子は普通そうだけど、女の子の方はももかちゃんみたいなのが多そうだな」
麦茶が半分ぐらいまで減ったコップを置く彷徨。
「ねえ?彷徨って小さい頃に七夕の短冊に願い事書いた?」
「うーん、書いた事はあったかもしれないけど、何書いたかまでは覚えてねーな」
「サボテンマンみたいに悪者をやっつけるって短冊もあったけど、彷徨はそんな事かかないよね?」
彷徨はちょうど麦茶を飲み干した所だった。
私はイスから立ち上がり、テーブルの上に両手を付き二ヤ付きながら彷徨に迫った。
彷徨はそんな私の視線から逃れるために顔を横に逸らす。同時にコップの中の氷がカラッ、コロンと音を立てた。
もしかして・・・彷徨、照れてる・・・?。
「ほほぅ、今はこんなにクールな彷徨さんでも、そんなカワイイ時代もあったんだね〜」
まあ、今の照れてる彷徨も十分に可愛いんだけど・・・。
「そうゆう未夢は何だったんだ?未夢の事だからお姫様になるとかか?」
彷徨はコップから口を離して私にも聞いてきた。
「えーと、その、うーん。」
えーと・・・お花屋さんになって、綺麗な花に囲まれたいとか。
ケーキ屋さんやお菓子屋さんっで、美味しい物ををたくさん食べたいって・・・書いた事もあったわね。
「そうそう、お花屋さんとか、美味しいお菓子屋さんとか・・・かな?」
「両方とも未夢には難しいんじゃね?」
彷徨が不敵な笑みを浮かべた。
「ちょっと、なんで難しいのよ?」
「だって、綺麗な花に囲まれても未夢には似合わないし、未夢がお菓子作っても美味しいとは思えないし、仮に作らなくても売ってるもの全てつまみ食いしそうだからな」
鼻で笑う彷徨。
「ほーぅ、言いたい事はそれだけですかなぁ〜?」
彷徨の方もちょっとだけ詰め寄ってきた。
途中で、彷徨がめんどくさそうな顔をすると、私の前から顔を離し、キッチンから出て行った。
く〜なんだって彷徨はいっつもああゆう態度取るかな〜?まあちょっとカッコイイの認めてあげるけど、あんな性格は絶対に嫌。
イスに座って大きなため息を一つ付き、手元にあったコップを持ち上げて口元に運こんだ。
でも、カランッと音を立てた冷たい氷の感触を唇で感じ、喉に流れ込んで来たのは融けた水だった。
あれ?たしか麦茶を入れて置いたはずなんだけど、いつのまに飲んだんだろう?
うーん・・・・・・。
記憶を巻き戻しして、彷徨と話していた時のことを考える。
あれ、そういえば・・・彷徨も麦茶飲んでいたような・・・?
テーブルの上を見ても、置いてあるのは未夢が持っているコップだけ。
「あっ!」
未夢はコップの置いてあった位置から彷徨が座っていた方向に水滴の様な跡があることに気づいた。
「・・・っ・・・彷徨の・・・・・・ばぁかぁあああああああああ!!!」
違うコップに麦茶を注いで、一気に飲み干した。
「・・・ばか・・・」
イスに座って自分の左手を腕枕にてし、空いてる右手の人差し指でコップの縁をくるっと回すようになぞった。
なんで彷徨って私の物を勝手に取るのかな?
ご飯の時は私の味噌汁を間違えて飲んじゃうし・・・、残しておいたお菓子とかも食べちゃうし・・・。
ふう・・・・・・、今日は疲れちゃった・・・。
カサカサ・・・・・・カサカサ・・・。
ん・・・?何か鼻がムズムズする・・・。
右手でムズムズする鼻の部分をゴシゴシ擦る。
カサカサ・・・カサカサカサカサ、カサカサ・・・。
なんなのよ〜、もぉー。
目を開けると、目の前に笹が見えた。
あれ、私ってキッチンで彷徨と話してて、麦茶飲んで、そのままテーブルの上に居たのに・・・
どうしてここに笹があるの?
視線を笹から少し上の方に移すと、彷徨の顔が見えた。
腕から頬を離して、眠たい顔のまま彷徨を見上げる。
「彷徨ぁ? 何してるの?」
彷徨は黙ったまま笹を持ったままぼーっとしていた。
「その笹、どこから持って来たの?」
「なんでって言われてもな・・・今日は七夕だろ?未夢の事だから、七夕、七夕って騒ぐと思ったから・・・」
彷徨は少し澄ましたような表情で、未夢から視線を外した。
未夢はイスから立ち上がり、彷徨と向かい合うように立って彷徨を凝視する。
・・・本物の彷徨かな・・・?さっきまでの彷徨がこんな事をするなんてありえない。
いつもみたいに、シャラク星の星矢君が彷徨に変装しているのかも・・・。
うーん。
差し出した右手で彷徨の頬をつねってみる。
う〜ん。触った感触は本物にそっくりだけど。
「俺、何かしたのか?」
左頬をつねられても無抵抗な彷徨。
あれ?
もしかして、もうちょっと強く引っ張んないと取れないとか?
今度は残った左手も使って、彷徨の両頬を強く引っ張ってみた。
あれれ?おかしいな?全然取れないや・・・
引っ張り続けていると、未夢の両手首を彷徨に捕まれて、掴んでいた頬から引き離された。
「ねえ?本当に彷徨なの?」
本人に聞いてみることにした。
「俺以外に誰だって言うんだよ」
引っ張られて赤くなった頬を両手で擦る彷徨。
「だって、いつもの彷徨だったらこんな事しないでしょ?いつもはもっと意地悪だから、星矢君が変装してからかってるのかなって思って」
「ほーぉ、いつもの俺はそんなにも意地悪なのか?」
今度は私の両頬が彷徨につねられる。
うっ・・・本物の彷徨だったんだ・・・。
だが、その手はほんのやさしく頬を掴んだだけで、すぐ離された。
「それに矢星だったら、七夕の意味をまともに理解してると思うのか?」
あっ、そうだった・・・。シャラク星の地球ガイドってまったく違った事書いてるから、本当の七夕の意味を知っているはず無い・・・。
「その・・・ごめんね・・・。痛かった?」
彷徨の頬にそっと手を添えて、やさしく擦る。
しかし、彷徨が一歩下がり未夢の手から離れてしまう。
「あっ・・・」
やっぱり怒るよね・・・。
あれだけ強くひねりすぎちゃったからね、それに頬がちょっと赤くなちゃってるし。本当にごめんね・・・彷徨。
「まあ、とにかく準備は終わってるから・・・、早くしろよ」
彷徨の後を追って行くと縁側にいくと、笹飾りなどで装飾された笹の木が立っていた。
「わぁ・・・綺麗・・・」
笹の木の隣まで行って飾りなどをよく見てみた。
大きさは私の身長と同じくらい、そして、笹飾りはキッチンのテーブルで彷徨に話した物とほぼ一緒だった。
「ねぇ?この飾りって全部彷徨が作ったの?」
後ろに立っている彷徨を振り返って聞いてみる。
「未夢が言ってたのを想像して適当に作っただけなんだけどな」
「ありがと、彷徨」
今日の彷徨はいつもとちょっと違ってやさしいよね・・・
どうしてかな?
「ねぇ、早速短冊に願い事を書こうよ」
うーん、願い事。何にしようかな?
短冊を持って、願い事を考える。
素敵な恋人ができますように・・・。
う〜ん恋人か・・・こんな私の恋人になってくれる人、居るのかな?
まあ、書いたら書いたで彷徨にからかわれちゃうから無しと・・・。
七夕は織姫様と彦星様が年に一度会える日・・・か、私達もルゥ君達に会えたらいいのにな。
ルゥ君達がオット星に帰って、もう4年経ったんだよね
最後は「また会おうね」って送り出したけど、元気かな?
私は彷徨と一緒に住んでるけど、昔と変わらず私のパパとママが忙しくて、そのまま西遠寺に居るだけなんだけどね・・・。
料理だって中学生の頃に比べていろいろ作れるようになったよ。
一時期、カボチャ料理を何度も何度も練習して、彷徨が『美味い』って言ってくれるようになたんだよ。
まあ、他の料理はまだまだだって言われてるけど・・・。
本当は、ルゥ君達にもう会えないのかな?って思ったりした日もあって不安だったの
だから願い事は[ルゥ君とワンニャー達に必ず会えますように]にするからね。
そうだ、彷徨は何て書くんだろ?
「ねね、彷徨は何て書くの?」
「俺か?とっくに書いて飾ってあるぞ」
「彷徨だから、死ぬほどかぼちゃを食べたいとか?」
カボチャの山に囲まれて、よだれを垂らしながら喜ぶ彷徨を想像してみる。
「それはワンニャ―だろ」
「ワンニャーだったら、世界中のみたらし団子を食べたいって書いてるよね」
よし、書き終わった。
さて何処に飾ろう・・・あれ?彷徨のって何処にあるんだろう?飾ってある短冊の中を探しても見つからないんだけど。
「ちょっと〜彷徨の短冊何処にもないよ?」
私の横で寝そべっている彷徨に聞いてみる。
「ん?探し方が悪いだけだろ」
起き上がることなく彷徨が答えた。
ん〜?どこどこ〜?見つかりませんよ〜、おーい出ておいで〜彷徨の願い事さーん。
いくら探しても見つからないんですけど・・・。
「大丈夫だ、未夢が探したって見つかる訳がないから、諦めろ」
彷徨が起き上がった。
「じゃあ、なんて書いたの?」
「分かった、見せるから」
彷徨が立ち上がって、笹の木の一番上にあった笹を手に取った。
「ほらこれ読んでみろ」
彷徨が笹の上部を引っ張って、私の目の前に差し出した。
『未夢の料理がもっとマシになりますように』
・・・私の?料理が?もうちょっと・・・マシに?
・・・やっぱり私の料理ってまだだめなんだ・・・。
「なになに、ルゥ君とワンニャー達とまた会えますように・・・か」
彷徨が私が短冊に書いた願い事を声に出して読んだ。
「また会おうねってルゥ君達と約束したのに、それを願い事にするなんておかしいかな?」
彷徨は少し黙ったままだったけど、少し笑いながら私を見た。
「大丈夫だろ、願い事にした方が早く会えるかもしれねーし」
彷徨はそう言って、空を見上げた。
見上げると空は雲が無く、星が綺麗に見えた。
ルゥ君達も同じ空を見ているのかな?
時間を忘れて、彷徨と一緒に星を見続けた。
「じゃあ、俺はそろそろ風呂に入るからな」
彷徨は縁側から自分の部屋に向かっていった。
「うん」
今日はありがとね、彷徨。
さて私もそろそろ部屋に戻ろう。
お風呂からあがって部屋に戻る途中、もう一度笹飾りが見たくなって縁側に向かう。
自分の願い事を書いた短冊を見たり、飾りを眺める。
あれ?こんな所に短冊ってあったかな?
一番上の空に近い場所に、見知らぬ短冊が飾ってあった。
うーん、裏返しになっていて、何て書いてあるか読めないよ〜。
背伸びをして、上部の笹を引っ張り寄せて、短冊を裏返してみる。
そこには彷徨の文字で、さっきとは別の願い事が書かれていた。
・・・・・・嘘・・・これが・・・彷徨の願い事・・・・?
桃の木幼稚園は末恐ろしい所なので、そこの園児だったらどんな願い事を書くのかな〜?
と考えるのが意外と楽しかったです。
彷徨の願い事は彷徨サイドに書いてます。
小さい頃、同級生にお寺の子が居たのでお寺で遊んだ事が数回ありました。
その時、竹やぶに入って竹を取った記憶があったので、西遠寺にも竹やぶがあるだろうという設定で書きました。(但し、竹を素手で取ると凄く細い竹が手にたくさん刺さって痛いです)