作:五月芽衣
「っっふ、っふ、ふえーーーっくしょぉーーいっっ!!」
・・・ったく、なんつーオマヌケなくしゃみなんだよ。
ぐすっ、と鼻を鳴らして、俺はまたトボトボと歩き出した。背筋がぞわぞわぁっとしてきて、思わず身震いをする。学ランの襟を閉めても、風の冷たさは変わらない。
おぉー、さぶいさぶい。しまった、マフラーでも持ってくればよかったなぁ・・・。こんなに急に寒くなるなんて、思ってなかったし。そういやこないだ担任が立冬が云々とか言ってたなー・・・。
いろいろと考えることが多くて、むしゃくしゃする。
別に取り立ててイラついてるとか、そういうわけじゃないんだけど、なんていうか、こう、収まらないのだ。
美術の時間、絵を描いていて、イメージは浮かぶのだけれど、思うように描き表せないときのようなもどかしさ、体育のとき、ついこのあいだまで飛べていた跳び箱が、なぜか急に飛べなくなったときの静かなあせり。
そんなものに、近いかもしれない。
それでなのかなんなのか、おかしなことに寝つきも悪い。
なんだってこんな疲れているときに眠れないんだか。ボケーっとしていれば、いつのまにか寝ているはずなのに、どうにもこうにも眠れない。昨日なんかは、珍しく徹夜してしまったほどだ。おかしい。テスト前でさえ、記憶を失くすと聞いたおかげで、六時間は眠るようにしているというのに。
*
そんなわけで、俺は風邪をひいたらしい。
鼻をたらして帰った俺に、未夢は一人あたふたして早く寝ろだの薬飲めだのワンニャー体温計ーだの・・・。ルゥに移してはヤバい。俺は未夢の言うことにおとなしくしたがって部屋に戻った。もちろん、手洗いとうがいはすましてからだ。ワンニャーは、こういうとこだけはなぜか律儀だ。おー水が心地いい。やけに素直な俺に、未夢がいぶかしげだ。なんだそりゃあ、わけわかめー、余裕ねぇー、っつーか俺いま何してんだ?・・・うーん・・たるいな・・・あー早く横になりてぇ・・・布団、しいてもらえばよかった・・・でも敷く元気ねぇよ・・・・・う・・・・・ぅ・・・
押入れから毛布だけひっぱりだして、とにかく丸まった。体の中の骨という骨がしびれるようで、もう立ってなんかいられない。寂しいたった一枚の毛布で、俺は暖を求めて・・・・・。ぐああああいいいいいいぃぃぃぃぃ・・・・
*
あまりにも突然の出来事に、頭がついていかない。
だが、体の方は容赦なく外へ外へと向かっていって、俺の中身を空にする。なんとか間に合ってよかった。布団は汚れていないし、服もそれほどはぬらさなかった。だが、あまりにも気持ちが悪すぎて、体を支えることができない。頭がくらくらしてきて、このまま倒れてしま・う・・・・ぁ、未夢・・・。
最後に見たのは、真っ白になった、俺の顔だった。
未夢を見ていたはずなのに、その奥に見える大きくて古くて中が空になった木が、頭の中で流れていた。