結局帰り道

作:五月芽衣





 ちょっぴり抜けたくなったから
 
 抜けただけなの、それだけよ


 肩に妹のバッグをさげて

 耳にはキロロのCDかけて

 両手はポケットつっこんで

 裾をすりすり歩いていった



 一本道は近くて遠い

 正面衝突しそうな勢い

 家族連れのボックスカーが

 ちょっぴり寂しい、なんちゃって


 せいたかのっぽの立派な木だけど

 枝をそがれてちょっと寒そう

 心なしか、背骨も曲がって

 ふしくれボツボツ、ニキビに見えるよ

 あたしに負けず劣らずの

 すっきりほっそりヤワな腰して


 気になっていたんだ、この施設

 クリーム色のドームな建物

 看板みたら「老人ホーム」

 急に小さく見えてきた





 てくてく歩くよりズムに乗って

 キロロはとっくに耳から消えて

 代わりに聞こえる、風のこえ

 カッコばっかの木々を笑って

 練習不足の鳥をおけいこ

 相も変わらず裾はずりずり

 ベルトを持って、ひっぱりあげた




 ふっとオレンジ、飛び込んできて

 止まりそうで止まらなかった

 疲れ果ててる大きな木

 おいおい、首が横向いて

 足もつられて、よそみして

 でも、後ろを見たら駄目なんだ

 キロロを触って、確認して

 ずんずんごまかし大また歩き


 リズムを戻せ、おいちいさんし

 前を見つめて、耳をそばだて

 ぽーんぽーんと電柱数えて

 しめった木の葉を踏んづけて

 食料集めのありさん軍団

 ちょいと邪魔してみたりして


 無精ひげの黒ノッポ

 底なし沼な臭う落ち葉

 遠くに見えるオレンジ色に
 
 目をそらしたりなんだりな

 ひょいと広がる雑草畑

 群れて生えてるねこじゃらし

 ぽつんと離れてねこじゃらし

 どれも同じねこじゃらし


 突然出てきた分かれ道

 ちろちろ聞こえる流れを追って
 
 左に号令、方向転換

 45度の坂道を

 重力に沿って降りていく


 ぶつっと切られたコンクリート

 ふいに流れたコンクリートロード

 そういやオリビアどこいったかな

 とっくに頭は帰ってたりね


 ゴロゴロ砂利を目で追って

 バランスとってザリザリ歩く

 気持ちが急くのはなんでだろうか

 ざぁざぁバシャバシャ心地よくって

 
 視界に入った小さな川

 裏切られた感コンクリート

 ぷくっと膨れたおなかの底が

 ズンズン行けよって指図する


 素直に従うズンズン歩く

 ビクったビビったでっかいタイヤ

 くるっと回転条件反射

 バッグを押さえてつったか走る

 







 



 



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