作:五月芽衣
おまえはそう、水のようで
いつでもキラキラ輝いている
底なしに笑う、おまえの横顔
思わず笑ってしまうのは、なぜだろう
おまえはそう、水のようで
どこへでもするりと入ってしまう
たとえば、そう、宇宙からきた小さな赤ん坊の中に
たとえば、そう、そんな存在を忘れていた俺の心の中に
おまえは、まったく不思議なやつだ
日の光に触れて、七色に光ってさ
おまえはそう、水のようで
いろいろなものに姿を変える
ときには賑やかなクラスメイト
ときには呆れるほどのおっちょこちょい
ときには思い切りからかいたくなるし
ときには、―そう、ときには―思わずドキッとするような表情を見せて
ときには、一人の赤ちゃんの大切なママさ
朝、起きた後の洗面所
囲む食卓、洗濯機
お風呂上りに食器洗い
毎日通る通学路
おまえはいつでもそこにいて
気づかないけどそこにいて
意識することすらないほどさ
あまりにね、ほら、近すぎて
コップに注ぐ、水道水のように
いることがもう、あたりまえの存在なのさ
おまえはまるで水のよう
水がなくっちゃ生きていけない
おまえはもう、いて当たり前
いつのまにか、そうなってたのさ
おまえはそう、水のようで
ときにはあたたかく、ときには冷たく
俺を、周りを、包んでくれる
冬の夜のホットレモン
夏の星としゅわしゅわサイダー
なんでこんなに、染み渡るんだろう
とくん、って体中で受け止めてるよ
おまえはまるで、水のようで
おまえはそう、水のようで
俺にはなくてはならない存在
ルゥにもなくてはならない存在
ワンニャーだって、そう思ってるはずさ
おまえはまるで水のよう
なくてはならない存在さ
おまえはなくてはならない存在
庭に咲いた小さな向日葵
水にさして、食卓に置こう
おまえはいつでも笑っているけど、
本当はそっと支える水のようで
おまえのすがたは、本当は目に見えないくらい
近くて遠い、やさしい存在
おまえはまるで、水のようさ
水に惚れた俺はこれから
雨になって、川になって、
海になって、すいすい泳ぐ
いつかおまえを受け止めるため
いつかまたおまえに会うためさ
俺は大きな海の中を
おまえを待っておよいでいるのさ
おまえはまるで水のよう
惚れた俺は海になって
おまえをしっかと受け止めるのさ
おまえはまるで水のよう
いつでもキラキラ輝いていて
おもわず笑ってしまうくらいさ
2005夏企画 出品できなかった悪あがき
企画閉幕翌日
いつもこうして間に合わないのさ
時はいつでも水のように
キラキラ輝いて、魅了して
いつのまにやら行ってしまうのさ
時はまるで水のよう
魅了するだけ魅了して
するっとすりぬけて
いってしまうのさ
捕まえておくことなんて
できやしないのさ