作:五月芽衣






 やさしい雲が、空で泳いでいます。

 灰色になって、自分を隠していますが、

 それは、ただ単に恥ずかしいだけなのです。

 あまりにも静かなので、水たまりに教えてもらうまでは、

 雨が降っていることすら知りませんでした。

 そんなに隠さなくってもいいのに、と、私は雲に話しかけます。

 もっと、のびのびしてもいいんだよ。




 でも、聞いちゃいないのでしょう。

 雲は、相変わらずやさしく笑いながら、しとしと雨を降らせます。

 くもの糸のように細い雫は、地上のくものところに引っかかって、きらきら楽しく笑っています。

 くもはくもどうし、雫のお手紙を交換しているのでしょうか。




 光が差し込む帰り道。

 ようやく気づくか気づかないかの所に、そっと小さな虹を見せてくれると、

 なんだこいつ、こっそりなかなかやるじゃあないか、と思うのです。



 おとなしいようでいて、なかなか大胆なやつなのですよ。雲ってやつは。ねぇ。








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