作:雨宮さや
いつもと変わらない帰り道。
変わったととしたら、少しだけ風が涼しくなってきたことだろうか。
暑かった今年の夏の風と比べ、気温は高くとも秋を感じさせる風だ。
そんな風を感じながら2人並んでお話しながら帰っていた。
といっても未夢が一方的に話し、彷徨がそれに合わせて相槌をうつというものだが。
「それでね、今度綾ちゃんたちが・・・あ! 見て彷徨!」
突然声を上げた未夢が、指をさした先にいたものは1匹の赤とんぼ。
「彷徨、とんぼだよ! もう、秋なんだね〜」
「本当だ。最近はよく虫も鳴いているしな」
「私ね、小さいころ公園で遊んでいたときに空いっぱいに何百匹、何千匹っていうとんぼが一斉に同じ方向に飛んでいくのを見たんだ〜。
それが小さいときの私にとって、すっごく迫力があって、怖くなって泣いちゃったんだ」
「未夢らしいな」
「なによそれ〜。
でも、そんな光景、ルゥくんが見たらきっとおおはしゃぎしちゃうんだろうね!」
「そうだな。一緒になって飛びだすかもしれないな」
「ふふっ。で、ワンニャーが『ルゥちゃま〜』なんて言って慌てちゃうの!」
「いや、案外あいつも一緒に飛びだすかもしれないぞ」
そう言いうと、2人は笑った。
「そう言えばルゥくんってとんぼ見たことあったっけ?」
「ないかもしれないな。ま、そんな感じのやつはオット星にもいるんじゃないか?」
「そうかな〜。でもやっぱり地球のも見て欲しいな・・・」
「また今度来れば見れるさ」
少し悲しそうな顔をした未夢の頭に彷徨はポンッと手を載せた。
未夢は笑って頷いた。
そんな彼らの気持ちを知ってか知らずか、2人の後ろではさっきのとんぼが空高く飛び上がった。
それはまるで少しでも宇宙に近づかんとしているかのように・・・
fin
突発小話です。
お話のネタにした空いっぱいのとんぼ、実際に見たことがあるんです。
幼稚園の年長さんかな?のときに、まさに幼稚園にいるときに見たんです。
空にたくさんのとんぼが同じ方向に向かって飛んでいるんですね。
あれは何でなのか今でも不思議で仕方がありません。でも、とても印象に残っているものです。
ではでは、読んでくださってありがとうございました!
2007.09.12