作:雨宮さや
夕暮れ時、いつものようにお互い親のいない中、西園寺の居間で過ごしていた2人。
そこで事は起きた。
「もう、彷徨なんて知らないっ!!」
「それはこっちのセリフだ!」
同じ敷地内にある自宅へと勢いよく飛び出していった未夢。
それとは反対の方向の自室へと歩き去る彷徨。
ケンカの理由なんて、いつものような些細なこと。
しかし、だんだんエスカレートして行き、この始末。
そんなに簡単には“仲直り”できない雰囲気となってしまった。
次第に暗くなっていく空。
・・・
・・・・・
・・・・・・・・・
―ねーう・・・
「ね・・こ・・・?」
未夢の耳に届いたのは、寂しそうに鳴く猫の声。
ねーう・・・・・・
「どこにいるんだろう・・・? おまえも寂しくって泣いているの・・・?
私も寂しいよ。彷徨にちょっと言い過ぎちゃった・・・」
姿も見えないまま、その猫の鳴き声だけが聞こえる・・・
・・・・・・・・・
「・・・ったく、未夢のやつ・・・」
そんな風に軽く毒づきながらも、本心では反省していた。
ふと部屋の窓から空を見上げれば、春の、ぼんやりと光る満月。
それはとても儚げに光っていた。
「・・・独りで見る月はこんなにも寂しそうに光るんだな・・・」
月は何も言わずただ、光るのみ・・・
++++++
暫くすると、いてもたってもいられなくなる。
猫が
寂しげに泣くから・・・・
月が
寂しげに光るから・・・・・・
猫が・・・
月が・・・・
2人して同時に玄関を出た。
真っ先に目に飛び込んでくる、お互いの姿。
「さっきは・・ごめんね、彷徨・・・」
先に呟く未夢。
「俺のほうこそ・・ちょっと言いすぎた・・・」
そう言ってばつが悪そうに横を向く彷徨。
未夢の顔がほころび、どちらからともなく歩み寄る。
2人の影が1つになると、猫は去り、月は優しく光っていた。
fin
突発なので、短く仕上がりました。
なんとなく、未夢は耳から、彷徨は目からきっかけが欲しくて書いたもの。
少しでも幻想的に映ればいいのですが、背景描写が全くと言っていいほどないですね(汗
それと、最後の「2人の影が1つ」は色々あると思うので、ご想像にお任せいたします!
では、読んでくださってありがとうございました。
雨宮さや 2007.04.11