if... 作:まーや

もし彷徨が臆病だったら...


今日は毎年夏恒例の、西遠寺の肝試し大会。
クラスのみんながこぞって西遠寺に集まった。

バーベキューなどでみんな和やかに懇談してたところ、三太が背後から...
「西遠寺家にまつわる...四つの怪談って知ってる...?」
さぞかし不気味さを醸しだすかのように、手をかざしながら語った。

みんなは固唾をのんで、三太の語りを聞き入った。

「おれ ちいさい頃から彷徨と友達だから知ってんだけど...特に四つ目がすげぇんだ。」
「それは...下敷きになって死んだ化け猫の呪い...」

みんながざわついているところで、彷徨の表情は一人ちがっていた。
「ねぇ彷徨、どうしたの?」
「な、なんでもないよ...」
「もしかして怖いの?」
「そ、そんなわけないだろ!」
平然としてるかのような答えとは裏腹に、しきりに身震いさせていた。


しばらくしてから、人気がなくなったところで、未夢はよそよそしく彷徨に尋ねてみた。
「ねぇ、さっきの三太くんの話...もしかして彷徨...」
「な、なんでもないよ...」
平静を装った彷徨だったが、隠してるのは十分すぎるくらい表れていた。

「ん...言いたくなかったら、言わなくていいよ。」
未夢の声の後、しばしの沈黙があって...

「あ、あのさ...」
彷徨は未夢の腕を掴んで、本堂の裏へ連れ込んだ。

「彷徨...」
「オ、オレ...実は...こういうの、すんげぇ苦手なんだ!」
恥ずかしさと怖さに挟まれながら、彷徨は気持ちをふりしぼって答えた。

「怖くてしょうがないんだ...」
一瞬は冗談かとも思った未夢だったが、彷徨は真剣なまなざしで、未夢に訴えていた。
「は、恥ずかしいよな。寺の息子が怪談苦手だなんて。だけど...こういうの聞くと、母さんのこと思い出してしまうんだ...」
「あ...」
完全無欠と思わせるような彷徨もやっぱり普通の男の子。苦手なものだってある。とかくお母さんっ子だったとくればなおさらだ。
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「い、いってもいいんだぜ...。」
「言うって誰に?」
「い、言わないのか...みんなに...?」
「言うわけないでしょ。あたしってそんなふうに見える?」
「未夢...」
「お寺の息子が怪談怖くたっていいじゃない。」

またしばし沈黙が流れ、
「あの...」
「あ...」
お互い言いかけて止まった。
「彷徨、先にどうぞ。」
「お、おまえから言えよ...」
一瞬間を置いて、
「えっとね、彷徨、そういうの...」

未夢が思い切ったように言いかけた途端、
「なんだ彷徨、こんなとこにいたのか。」
三太が颯爽と現れた。
「あれぇ〜っ、光月さんも一緒?何してたのかかぁ...?」
「な、何でもないって!!」
微妙にずれたタイミングで言い合った。

「彷徨、もう始めるぜ。」
「あ、あぁ。」
「あたしも!」

三太に連れて行かれる彷徨に、未夢は背後から小声でささやいた。
(困ったときはおたがいさま。あたしにできることならなんなりと。一緒に住んでるんだもん。)
未夢も追うようにして、みんなの元へ足を運んだ。

盛り上げ役(?)ことクリスちゃんが突如現れ、
「あ〜ら、未夢ちゃんと彷徨くん、何してたのかしら...とってもとってもなっかよっしさ〜ん...」
「花小町、何もないって!」
暴走寸前のクリスを制止しながら、彷徨は未夢にちょっとうなずいた。
未夢も心に決めたものがあった。
(彷徨の分はあたしががんばるんだ。)


原作の導入をちょこっとだけ借りた、しょーもない短編です。
設定を頼りない彷徨ということで考えてみましたが...ホントしょーもないですね。




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