としこし。

作:ちーこ




「あのね、わんにゃー…おそばの作り方…教えて欲しいの。」

おそばなんて自分で作ったことないけど…
やってみようと思ったのは、
彷徨がテレビを見ながら、
美味そうだな、って言ったから。


「いいですか、未夢さん。そもそもそばは『作る』じゃなくて『打つ』ですよ!」


まさか…わんにゃーがこんな熱血教官だと思ってなかったし
そばがこんなに難しいとも思わなかった。


「この水回しがそばの生死を決めるんです!」


「こねすぎちゃいけないんです。優しく、転がすようにまとめるんです!」


「ちっがーう!」


「平らに伸ばすんです、ほらそこ!厚さが全然違うじゃないですか!」


「同じ太さに切るんですよ!」


「さっとゆでるんです。さっと。」



やっと盛り付けが終わった時。
わたしはもうへとへとで。
おそばは太さがまちまちだった。


「彷徨さ〜ん。おそばできましたよ〜。」


「今行く〜。」


居間へやってきた彷徨はチラリとおそばを見た。
そのまま手を洗いに行ってしまう。
…何にもないのかな…これ見ても。



「いただきます。」



ずるずる。


ずるずるずる。


とうとう無言に我慢できなくなった。


「……どう?」


「太い。」


…だよね…。


「けど、まずくはない。」

「それはそうですとも、この優秀なシッターペットの」「もっと練習しとけよ。…やだぞ、毎年こんなでこぼこなそば食うの。」


…それは…。
来年も…おそばを作っていいってこと…?
毎年、わたしのおそばを食べてくれるってこと?


そばをすすっている彷徨をじっと見てみる。
特に深い意味で言ったわけじゃないんだと思う。
でも、だからこそ、うれしかったりする。

来年もいい年になりますように。
…そしてもっと美味しいおそばが打てますように。




2003年12月31日〜2004年1月1日にかけての年越しチャットで書いたものです。
ちょっとだけ加筆修正。
ずぅっと封印されていたのを思い出したので。
なんだか、昔のアルバムを引っ張り出してきたみたいでちょっと恥ずかしいです。
タイトルはついていなかったのですが…いいものも思い浮かばず。

みなさんにとって今年はどんな1年でしたか?
来年もいい年になりますよう、心よりお祈りしております。




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