9回裏ツーアウト満塁。 | 作:ちーこ |
「そういえば、今日花小町に会ったぞ。」 あなたがそう笑って言うから…少し気になったりするんじゃない。 今日は毎年恒例のその日。 今年は絶対負けたくない。 朝、彷徨が出かけてからずぅっとどうしようか考えてたりする。 ホントは昨日から考えてたりするんだけど…朝は…忙しいから…ちょっと忘れてた…。 根が素直なものだから、なかなか簡単には思い浮かばないのよ…なんてね。 相手は彷徨。 生半可なものじゃ鼻で笑われてしまう。 掃除をしているときも、買い物に行っているときもずぅっと考えていたけど思いつかない。 晩御飯を作ってるとき、ただいまって玄関から彷徨の声がした。 「そういえば、今日花小町に会ったぞ」 ネクタイを緩めながらなんだか嬉しそうにそう言うから。 別に今さら…なにかあるって思うわけじゃないけど…ね やっぱりちょっと気になるかなっていうか… 「なんかすっげぇ変わってた。」 「うそぉ。」 「髪とかショートになっちゃっててさ、ホント一瞬誰だかわかんなかったし。」 「うっそぉ。」 彷徨がにやりと笑った。 「うそ。」 …やられた…。 「どこから嘘なの!?」 「全部。」 「まじで?最悪!」 「うそ。」 「はぁ?」 「花小町にあったのはホント。」 「ホントなの?」 「うそ。」 「うそなの。」 「いや、うそ。」 「どっちなの?」 「うそ。」 「も〜〜〜〜〜〜〜〜どっちなの!!!」 「どっちでしょう?」 わたしはぐっと彷徨をにらみながら見上げた。 「…もう知らない。」 「もう、彷徨なんか、知らないんだから。」 「そんなにわたしをからかうのが面白いの!?」 彷徨がぽかんとわたしを見ている。 「そうやってずっと笑ってればいいじゃない。」 「もう彷徨なんか知らないんだから!」 「おい、未夢。」 「勝手にすればいいでしょ!もうわたしは知りません!」 「おい、未夢ってば。」 「そんなに怒んなよ。毎年の事だろ。今日は…あ。」 ちょっと悔しそうな顔をした彷徨にわたしはさっき彷徨がしたみたいな笑みを返した。 「…やられた…」 「今年はわたしの逆転勝利ってことで。」 「…初勝利な。」 付き合い始めて10年目にして。 狙ったわけではなかったけど思いがけなく初勝利。 わたしもちょっとは成長してるってこと…かな。 「花小町にあったのはホント。相変わらずだったよ。最近、旦那があっちこっちでショーやっててぜんぜん構ってくれないってさ。愚痴られたのかのろけられたのかわかんないこといろいろ言われたよ。」 そう彷徨が言ったのは布団に入ってから。 「じゃぁ今度クリスちゃんにうちの旦那はいっつもいじわるなのよって愚痴っちゃお。」 「エイプリルフールはもう終わってるぞ。」 「本気だもん。」 「へぇ…。」 |
先に山稜しゃんに同じようなことをされてしまったちーこです。(笑) ちーこは…素直なのでホントに毎年引っかけられてます。妹に。 去年はちょうど私は友達と旅行中で 「ケータイ新しいの買ったからこのアドも番号ももうすぐ使えなくなるから」 とメールが来たから…「じゃぁ新しいの教えて。」と返したら 「ばかじゃないの。」と。 今年は「今日街で○さん(地元では有名な芸能人)みたよ〜」 「え、どこで?」 「なんか街のシュークリーム屋さんで取材してた。すごくない」 「そこって美味しいの?」 「バカじゃないの?」と。 …どうせバカだよ私は。 毎年毎年ひっかかってさ。 ちなみに妹は母にも「宿題終わった」とウソをついたとのこと。 私には母から電話が来た時「やっと宿題終わったんだってよ」と嬉しそうに話していたけど…騙されてますよ! 家は母子ともに素直な良い子です。(妹除く 笑) 企画全然参加できてなくてごめんなさい。 ここまで読んでくださった方々ありがとうございます。 相変わらずあとがきが長いちーこでした。 2004年春企画に出したものです。 |