Hello,Again 〜昔からある場所〜

作:友坂りさ



Hello,・・・Happy New Year――

今年も同じ季節がやってくる。
大好きなあの場所に帰るんだ。

ほんの短い間だけど。
私の帰る場所。昔からある場所――





「ただいまっ」

「お前なぁ〜、いきなり戸開けて入ってくんなよ。びっくりするだろ?」

そういいながらも、彷徨の口の端が綻んでいるのは隠せない。

「でも、待っててくれてたんだよね!」

期待を込めたような未夢の瞳に思わず彷徨の言葉はつまる。


「と、とにかく久しぶりだし、まぁ、例によって親父はいないけど、お正月だしさ。ゆっくりしていけよ、な?」
そういう、彷徨の微笑みは出会った頃とは考えられないくらいやさしくて。

「うんっ!」
未夢も精一杯の笑顔で応えた。




かわらない和風の居間。
ちゃんと飾ったままのルゥくんと彷徨の写真。
そろばん三級の賞状もそのままだったりして。

ふふふ。
何だか、それだけで。
私は、嬉しい。



「あれ?」

ふと、気づいた。

ルゥくんと彷徨の写真の横に。新しい写真が一枚。


「彷徨っ」
お茶を出してくれる彷徨を私は呼び止めた。


「これ・・・飾ってくれてたんだね。」

そう、その横にあったのは。
ルゥくんとワンニャー、ペポ、そして彷徨と私の写真。


「あ、ああ。だって・・・な」
「だって、って何〜?」

少し恥ずかしげに彷徨はつぶやく。


「大切な家族、――だからな。」




うわ・・・

何だか、とっても・・・嬉しい。

そうだよね、彷徨。
決して忘れないよ、あの大好きな季節(とき)

どんなに時間が流れても、あの輝きは幻じゃないから。

ルゥくんもワンニャーもペポも・・・彷徨もみんな大好き。



西遠寺の鐘のところで、見上げたあの空。ルゥくんが重ねてくれた手。
また会えるよねって、約束したんだ。


これからどんなに季節が流れても、ずっとずっと変わらないから。

そのために、そのときのために、また会えるときまでに、

素直になろう――



「何ぼんやりしてんだよ」

ふいに、彷徨の声。
いつの間にか、お茶の横にはたくわん。

・・・。




「彷徨ってさ〜、美少年なのに、お漬物好きだよね〜」

ちょっとからかうつもりで言ってみた。

「お前さ〜、それやめろっていっただろ」



あれあれ?ちょっと怒ってる?




「・・・あ。天地たちが未夢に会いたがってたぞ」


やっぱり、・・・好きなんだ。
そういいつつも、まだ食べてる。


「うん、私も会いたいっ。明日遊びにいこうかな?」
「・・・」


ん?
何だかあんまり・・・



「明日はさ、うちも寺だし、何かとお正月の準備あるから、ここにいろよ」
「え・・・」


じいっと見つめられた。
自然に頬が熱を帯びてきてる。


「あれ〜、もしかして彷徨さんは私がいないと寂しいとか〜??」
わざと、照れを隠したくてそういったのに。

だけど、以外にも返ってきたのは。


「うん・・・」




――想いが通じたのは。

ルゥくんとワンニャーが帰って、しばらくたってからのこと。
秋風が心にしみて、懐かしくなって、いつも見上げてた、空。

そして彷徨からの信じられない言葉。

素直なこころに初めてなれた。


家族としての「好き」から大切なひとへ・・・何だって話せるくらいの心地よさを感じて。

大好きって、そう、思った。


「じゃあ、ずっと明日はここにいるね」

もっともっと好きになってもらいたいから。
とびきりの笑顔で私も伝えるよ。





「未夢」
「っ!?」


突然触れた唇。



「好きだよ」


〜っ!!もうなんでいっつもそうかな〜っ、この人は〜っ。

だけど・・・やっぱりこういうのも悪くないかな、・・・なんて、ね。





ときに強引で。
でも、ときにはすぐに照れちゃって。


そんな彷徨が誰よりも大好きだよ。




Hello,Again・・・私の帰る場所。



「あけまして、おめでとう、かなたっ」
まだ頬は熱いけど。ちゃんと彷徨の目をみて。


「今年も・・・その先もよろしくなっ」





それって。


「ルゥとワンニャーにまた会えるときが来るまで、なっ。」

「うんっ!!」


彷徨もおんなじこと思ってたんだ。
そうだよ、約束は絶対だから。


「いやもっと――ずっとずっと俺の傍に・・・」




ん?

彷徨何か言ったみたいだけど、聞こえないや。




――待っててね、ルゥくん、ワンニャー。
私たちはここにいるから。

遠く離れても。




Happy,Happy,New Year・・・

来年もまたここ(西遠寺)へ戻ってこれますように。

懐かしい気持ちが切なさから愛しさに変わるから。

ずっとずっと笑っていられるように。


ゆっくりゆっくり大人になっていこう。

新しい一年にささやかな祈りをこめて。









こんにちは。
新年あけましておめでとうございます。

今回初めて、未夢ちゃん視点のみで書いてみました。
同好会の素敵な小説書きさんに憧れて、ショートストーリー風に初挑戦してみました。

昨年は本当に皆様にお世話になりました。
今年もどうぞよろしくお願い致します。


みなさんにとって素敵な一年になりますように・・・

ヒーロー同好会!&しゃん同盟大好きですvvvv

また、こちらは、冬企画にも投稿させていただいたものです。


2004.1







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