海上に浮ぶ月のように @hero-shan.tk

海上に浮ぶ月のように

「わ～、きれい…ななみちゃんの言うとおりだね」

「ああ…」

 

…寄せては返す波。
 

潮の香り。 

青色の砂浜。
 

爽やかな風。
 

月明かりが反射して、まるで大きな鏡の海。
 

そう、未夢と彷徨は夜の海にいる。 

ななみが「夜の海はすごく綺麗なの。特に満月の時とか……今日は満月だから二人で行ってくれば…？」と進めてくれた。 

未夢はそんなに綺麗なら自分も見てみたいと思い、彷徨にお願いして自転車でここまで来た。

 

未夢はカントリー風のパンプスを脱ぐと海の方へと歩む。

 

「冷たいっ…」 

夏なのに冷たい海水。
 

その冷たさが気持ちよくて、未夢はもう少し先のほうまで進む。
 

海水が未夢の足を撫ぜるように寄せては返す。
 

足元には冷たい感覚。 

そばにはあたたかい人。
 

夜の空には自分とすべてを優しく照らしてくれる月。

 

離れても、逃げても、追いかけてくるような不思議な月。
 

一人じゃないと囁くように眩い光を放つ。
 

ずっとそばにいてくれる…。 

まるで彷徨みたいに。

 

未夢は彷徨をちらりと見る。
 

彷徨は月を見上げている。 

なにを考えているのだろうか。
 

未夢は足元に浸っている海水を両手にすくって、彷徨には掛からないように、彷徨の目線に映るように、月にかかるように、そっとかける。
 

月に向かってかけた水が羽根のようにハラハラと舞って落ちてくる。
 

「彷徨も一緒にあそぼ」

 

未夢は彷徨に優しく微笑む。
 

その表情は無邪気な小さな女のコのようで。
 

未夢は「はやく」とせがみ始め、彷徨はやれやれと息をつくとサンダルを脱ぎ未夢のそばへ行く。
 

「冷たいな…」

 

「でしょ？この海の冷たさ…彷徨みたいだね…」

 

未夢はピンク色の貝殻を拾うと、彷徨と目をあわせる。

 

「なんて、ウソ。」
 

だってわたしは彷徨が誰よりも優しいこと知ってるもの。
 

ただ、表に出さないだけで。 

未夢は貝殻を下の場所へ戻すと彷徨の腕にぎゅっと自分の腕を絡ませる。
 

「どうした？」 

彷徨は無表情のまま、珍しく甘えてくる未夢に聞く。

 

「イヤ？」 

未夢は上目遣いに彷徨を見上げる。

 

「別に…」
 

「別にってことは…どういうこと？」

 

「いやじゃないってこと」

 

彷徨は頬を淡く染めながら、ベッと舌をだす。 

「……今日はなんか、素直だね。」

 

「……満月…だからかな」 

「うん…そうだね……」

 

未夢と彷徨は空を見上げる。 

数ヶ月前、満月の夜にオット星に帰っていった家族。 

天使みたいに優しい笑顔を持つ赤ちゃんと思いやりをもったシッターペット。
 

満月の度に思い出してはあたたかかったあのときをおもいだす。

 

「ごめん…」

 

「ううん……大丈夫…。彷徨がいるから…」
 

こんな素直になれるのは月の魔法？
 

こんな素直な気持ちになれるのはあのコたちを思うあたたかさ？

 

「未夢……」

 

「なあに？」
 

「もし…未夢が月で、新月みたいに…オレの前から見えなくなったときは…さ。
未夢をさがすから…」

 

未夢を抱きしめて。

 

「ん…わたしをさがして？
それで…ずっと、ずっと…抱きしめて」

 

さざなみのような優しい声で。 

「ああ……離れないように、連れて行かれないように、ずっと――抱きしめてる。」 

お告げのような甘い囁きで。 

「ホント？」
 

「ああ」
 

「ホントにホント？」 

「ああ」 

「信じてもいいの？」 

彷徨はふと微笑み、未夢の髪を愛しそうに撫でると顎に親指をあてる。
 

そのままゆっくりと彷徨の顔が近づいてきて、未夢はそっと目を閉じる。

 

「………っ」

 

彷徨はそっと唇をはなすと、未夢の額に自分の額をコツンとくっつける。

 

「…彷徨……大好き……」

 

「オレも、未夢のこと…誰よりも…好きだよ」

 

 

お月さま、ありがとう。 

あなたがいなくても、これからは素直になれる気がするよ。 

あなたが放つ優しい光。
 

この人みたいに優しくて。
 

わたしが新月みたいに見えなくなっても 

絶対、わたしをさがしてくれるってそう信じてるから―――――。 

 

だから…そっと見守っててね。

こんにちは、または初めまして。日和未亜です。 

今回は初めて企画に参加させていただきました。 

わたしなんかがこんな素敵な企画に参加しちゃってよろしいんでしょうか(><) 

…わたしは夜の海、すごく好きなんです。 

満月がでているときとか…本当に素敵で…。 

まさにオススメスポットですv(笑) 

山稜しゃん、李帆しゃん。 
こんな素敵な企画に参加できて、わたし本当に嬉しいですvv 
ありがとうございました。 
 

そして、ここまで読んでくださった方ありがとうございました。

[戻る]