束縛

作:あゆみ



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え〜・・・・・であるからして・・・・・本社は・・・・」

重役の集まる会議室
この重々しい雰囲気の中、彷徨はプレゼンをしている

しかし、先ほどの出来事が頭から離れない

集中せねばと思うほど考えてしまう。

(今は大事な会議中だ。しっかりしろ!)

心の中でどのくらいその言葉を唱えただろう

そんな風に思っているにも拘らず、彷徨はセンスの良いプレゼンを進めていく、
先ほどから重役たちもその説明に聞き入っているようだ。




(一体あいつら何課の奴だ?今度あったらただじゃおかねぇ・・・)


心中穏やかでない彷徨、
先ほどの出来事というのは現在行っているプレゼンの資料を家に忘れてしまった為
未夢にお使いを頼んだ。
しかし、会社まで来た未夢は社の独身貴族にナンパされていたのだ。

未夢の困ったような、涙ぐんだ顔
あんな顔させるなんて、本来ならボコボコにするところだが
会社だし、未夢は怯えていたし、会議も控えていたし、
いろんな不安要素があったので
鋭い眼光をお見舞いしただけだったのだ。


しかし、あいつ(未夢)も悪い!
なんで結婚指輪を忘れるかな・・・
家で家事をしていた為らしいが、指輪を忘れるなよ

はぁ〜

そういう抜けているところは相変わらずなんだな・・・




「というわけで、我が社の戦略といたしましては・・・・・・・していきたいと思っている次第です。以上プレゼンを終了させていただきます」

「ふむ。ありがとう西遠寺君。それでは質疑応答にうつろうと思う・・・」





しかし、オレも公衆の面前でよくやるよな
いくら心配だからって、未夢の薬指に

オレの印をつけて・・・・




独占
束縛
嫉妬



いろんな自分に気づかされる




「ここの説明だが、もう少し詳しく・・・」
「はい、こちらのグラフをご覧ください・・・・・・」






こんな会議早く終わらせて
家に帰りたい、

未夢を抱きしめて
最近
ハイハイできるようになった未宇を抱き上げて

二人の笑顔をオレが作りたい。



仕事がうまくいかなくても
どんなに疲れていても


二人の笑顔があれば
オレの名前を呼んでくれれば



どんな疲れも不思議なくらい溶けて
洗い流されるようで



オレの特効薬








「うん。そうだな。この方向で進めていこう!西遠寺君、これからもよろしく頼むよ!」

「はい、ありがとうございます」

「それじゃ、解散」









ふぅ〜
ひと段落



誰もいなくなった会議室
背広の上着を脱ぎ、
彷徨は使った資料類をまとめ
一つ深い息を落としていすに深く座り込む
きっちりと締めたネクタイを人差し指を入れて緩める。





未夢は無事に帰ったかな?







ガタッ・・・・







キー

ドアが開く音



彷徨は体を起こして音のする扉の方を向く



「やーやーやー!西遠寺君!お疲れ様、部長たちもご満悦だったみたいだぞ」
ニコニコしながら会議室に入ってきたのは同期の晴華だった。

「そうか・・・」

「なんだよ。つかれてんな」

「まあな」

「おつかれさん!さ!オレからの差し入れだ。」

「ん?」

「入ってきてくださいよ」


晴華が促した先にヒョコット出てきたあたま
一つにまとめられた髪の毛
うっすらメイクの未夢だった。

「未夢!!」

「へへ///おつかれさま」


(さてと・・・お邪魔虫は消えるかね)晴華はそっと会議室から出て行く


「まだいたのか!」

「う、うん・・・ごめんね」
怒られたと思った未夢は俯き、彷徨の様子を伺うように上目遣いで顔をみる

「あ〜怒ってないよ、ちょっと疲れてて気が立ってただけだ。」

「ほんと?」
みるみるホホを赤めて笑顔を見せる未夢
もう未夢の目が捕らえているのは彷徨だけだった
彷徨にしか見せない笑顔で
「よかった///」


そして自然に彷徨は未夢を抱きしめる

「彷徨///」
彷徨の普段とはちょっと違うスーツの香に顔をうずめて
目を閉じる未夢

「ん?なんだか抱き心地が?」

「えっ?あぁ!」

未夢はそっと体を離し下を指差す。
その先には普段あまり履かないピンヒールの未夢の脚だった。

「あぁ!それでか!」

確認した彷徨はまた未夢をそっと包み込む
「どうりで未夢の顔を近くに感じるわけだ」

「へへ!キャリアウーマンだよ!」

「楽しそうだな。」

「うん!いい社会見学になった///」

「今日は悪かったな、お使い頼んでいやな目にあわせて・・・」

「いいよぉ〜彷徨の働く姿も見れたしね///」

「脚も痛めたみたいだし?」

「!?気づいた?」

「あぁ。。。なれない靴はいて豆でも潰れたのか?」

「・・・・うん。歩いて帰ろうとしていたら足が痛くてね、晴華さんが気づいてくれて彷徨が会議終わるまで待ってたら?っていってくださったの!」

「そうか。」

晴華に感謝だな・・・
こんな危なっかしい未夢を外に出したら
何が起こるかわからなかったし。。。


「それじゃ!オレも今日の仕事は終わったし帰るか!」
「うん!」

体を離して、
でも未夢の体を支えている彷徨

「もう少し、ここで待ってろ!荷物取って来るから」
「あっ!ちょっと待って!」




未夢は彷徨の緩んだネクタイを締めなおす
きっちり締まったネクタイを手のひらでポンと叩く

「よし////」

「サンキュ!」

体をひる返して会議室を出て行く彷徨

















その日、会社内から腕を組んで家に帰った二人









その日、ショックを受けた女子社員指数はさらに上昇
その日、彷徨の普段見せない笑顔に心臓を打ちぬかれた女子社員も過去最高に・・・








どうでしょうか?やばい?
なかなかUPできないかも!と悩みに悩んだ作品でございます!

彷徨君仕事しようよ〜(笑)仕事中も未夢ちゃんのことでいっぱいですね・・・
そんな彼を書いていて楽しかった。
話的には本当に『駆除』続きになってしまいました。

それではこれからもよろしくお願いします。
こちらの作品をBWG7777キリを踏んで下さったイチゴさんにささげます。

2003/6/21 

注)この作品は2007/2/20をもって閉鎖しました「Blue White Green」のキリリク作品として投稿させていただいております。

2007/2/17 あゆみ


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