作:あゆみ
「なぁ西遠寺いいだろ〜付き合えよ!」
「やだよ。俺は早く帰りたい。」
「いいじゃんか〜たまには飲むの付き合えって!」
竅A仕事が終わったらすぐ帰りたいんだ!」
「なんだよ。急いで家に帰る理由は何だ?」
「そ・・・それは。」
「そうだ!こうしたらどうだ?」
「?」
「西遠寺の家で飲む!っていうのはどうだ?」
「はぁ?」
「うわさの奥さんも見てみたいしな!」
「なんだよ・・・うわさって。」
「なんでもわが社の中で切れ者のお前を射止めた奥さんはどんな人だろうってうわさだよ。」
「なんだよそれ///」
「家での西遠寺も見てみたいし!」
「そんな。今とさほどかわらねぇよ。」
トゥルルル・・・・
彷徨の携帯の着信音が鳴った。
彷徨はアンテナを伸ばして電話に出る。
「はいもしもし・・・」
『もしもし?彷徨?』
「あぁ。俺だよ。どうした?」
『ごめんね仕事中に。今日はどのくらいで帰ってくるの?』
「仕事は今終わったよ。これからすぐにでも帰れるよ。」
『ほんと?そしたらちょっとお願いしたいことがあるんだけど。』
「なんだ?」
『あのね…お酒が切れちゃったの…晩酌用の。』
「買ってこいってか?」
『うん。お願い!いま手が離せなくって!』
「わかったよ・・・・ん?」
彷徨の電話の側で口をパクパクさせているやつがいる。
(お・く・さ・ん?)
(そ・う・だ・よ)
彷徨が口ぱくした後その相手は目を輝かせて彷徨の携帯を取り上げた。
「おい!!」
慌てて手を伸ばす彷徨。
しかし。遅かった。
そいつは携帯をしっかり握り話し始めた。
「もしもし?奥さんですか?」
『もしもし?・・・』
「あっ!始めまして!僕、西遠寺君と同じ部署で同期の晴華と言います!」
『あっそうなんですか!いつもか・・・主人がお世話になってます。』
「いやいやこちらこそ!いつも西遠寺君には助けられて!」
『晴華さんでしたっけ?これからもよろしくおねがいします』
「こちらこそよろしくお願いします。ところでですね奥さん!」
『はい。なんでしょう?』
「今日これからお宅に伺ってもいいでしょうか?西遠寺君とうまい酒を飲みたいと思いまして。」
『そうですか〜。はい。お待ちしてます。』
「急にすみませんねぇ・・・」
『いえいえ。構いませんよ。お待ちしてますね。』
「それじゃあ。いま電話口で口を膨らませている西遠寺君に代わりますね。」
『(くすくす・・・・)はい。』
「ほら!」
晴華は携帯を彷徨に返した。
それを、いまだむすっとしている彷徨は無言のままで受け取る。
「未夢?悪い。そういうわけだ・・・。」
『(くすくす・・・・)うん!いいよ!おつまみ作って待ってるね』
「じゃあ。今から帰るから。」
『うん。気をつけて!じゃあね』
ツー―ツー―・・・・・
「強引だった??」
晴華は舌を少し出して手を合わせ彷徨を拝む。
「ったく!強引なんだよ。まぁ・・・しょうがないか。我が家へ招待するよ。」
彷徨は半ばあきらめ顔で目じりだけ上げ、仕事用の笑顔を晴華に見せる。
「いや〜奥さんの声初めて聞かせてもらったけどかわいらしい声だな〜」
と言い切るうちに彷徨は晴華をジロリとにらみつける。
晴華は少々ビックリし両手を上げ苦笑する
「はいはい!すみません!静かに御呼ばれにあがります!」
「分かればよろしい。」
彷徨は左眼を瞑り腕を組んで言った。
「いいか!未夢・・・いや俺の奥さんはなんていうか・・・俺より強いんだ」
「へ??????どういう意味だ?」
「くれば分かるさ・・・」
西遠寺玄関前
彷徨と晴華は両手に晩酌用の酒が入った袋とかばんを持ち玄関前に到着した。
彷徨はかばんをわきに抱え玄関の扉を開ける。
ガラガラ・・・・
「ただいま〜」
「おじゃましま〜す」
バタバタバタ・・・
「おかえりなさ〜い!!」
広く長い廊下を小走りして未夢が玄関に来た。
「おい!走るなって!」
彷徨は慌ててまだ姿の見えぬ未夢に叫びかける。
晴華は、ん?と首をかしげて彷徨の言った意味を考える。
と、そこに彷徨に言われて歩いてきた未夢が顔を見せた。
初めて同僚の、社内一といっていいほどもてる彷徨の奥さんを見るため晴華は緊張した。
そしてその初めて見た彷徨の妻、未夢を見て晴華は驚いた。
社を出る前彷徨に自分より強い奥さんとはどんな筋肉モリモリの女性だろうと色々考えをめぐらせていたのだが
その予想は見事外れた。
長い髪を料理をしていたためか後ろで束ね、白いエプロンをし、そのエプロンから細い腕、足が伸びている。
白い素肌にうっすら化粧をし、整っている顔立ち。
とびっきり美人という表現は当てはまらないが人形ともいえるようなすべてが整っている女性だった。
そして・・・なにより晴華が驚いたのは
筋肉モリモリどころではない。未夢のおなかが出てることであった。
「おっ!・・・・おじゃまします!!」
「いらっしゃいませ。」
未夢は膝を床につけて指折り、お辞儀をした。
「いくら安定したからって、走るなよ!」
「ごめ〜ん!!お帰りなさい!彷徨。赤ちゃ〜ん!パパが帰ってきたよ〜!晴華さんもお仕事お疲れ様でした」
未夢は頬を赤めてお腹をなでながら言った。
そして満面の笑みで二人を向かえる。
「え///いや///こちらこそ急にお邪魔してしまってすみません///」
「ゆっくりしてくださいね!」
「晴華、こっちだ。」
彷徨は荷物を持ち居間に向かった。
居間に着き自分のネクタイを緩めて買ってきたビニール袋を置いた。
「楽にしてくれよ。」
「あぁ・・・。おい!西遠寺なんだか可愛い奥さんだなぁ・・・」
「そうか?」
「あれじゃぁ、社の女子に目を向けないわけだよ。」
「何だよそれ。」
「それにあのお腹!お前の子だろ?!」
「ほかに誰の子だって言うんだよ!」
「お前もすぐに『パパ』なのか〜・・・どんどん置いてかれるな・・・俺は嫁さんだって・・・」
「おい・・・こんな所で落ち込むなよ・・・」
「それにしたってやっと分かったよ西遠寺が早く帰りたい理由。」
「だろ?俺は仕事しているときも心配でしょうがないんだ・・・あいつはすぐつまずくし、おっちょこちょいだし
目が離せないんだよ・・・って晴華に向かって何言ってんだ///」
「へぇ〜」
ニヤニヤしながら晴華は何度もうなずく。
「俺、西遠寺のそういうところ始めてみたなぁ・・・。心配してる表情?それに照れちゃって!!!このこの!」
「バッ////からかうなよ!」
「そんなところも初めてだよ。今日はいいもん見せてもらえそうだなぁ・・・」
「なにいってんだよ///」
「会社ではポーカーフェイスの西遠寺くんが、家では・・・なんて!」
「そんなことねーよ。ほら!飲むぞ!」
机に買ってきた袋を開け二人で管を開けたときだった。
扉からつまむものを持ってきた未夢が入ってきた。
「簡単なものだけど、よかったらどーぞ。」
「すみませんねぇ奥さん!」
「いいえぇ。」
未夢はにこにこしながら彷徨の隣に座った。
「奥さん。西遠寺君は家ではどうですか?」
「えっ?主人ですか?ん〜・・・そうですね、中学の頃からの付き合いですけどあまり変わりませんよ〜
人のことからかったり、いじめたり、たまに子供っぽくもなりますね〜。」
「へぇ〜!!!」
「未夢!!その辺で・・・」
彷徨は顔を赤くして口に手を当てて表情を隠そうとしている。
「会社ではどうですか?みなさんに迷惑かけたりしてません?たまに子供っぽい所あるから・・・」
「未夢!!」
彷徨はものすごい恥ずかしさがこみ上げてきて片手で顔をおおい、もう片方の手で腿の上で手を組んでいた
未夢の手を握る。
「えっ?」
「くっ、くっ・・・奥さん。家では西遠寺君はそんな感じなんですか〜へぇ〜
会社ではですね、かなりやり手ですよ!まだ若いのに上の人からの人望もあついですからね!」
「そうなんですか〜」
未夢は目を輝かせて今まで知らなかった彷徨の会社での様子を聞けて嬉しそうだった。
「しかもこいつ!!もてますからね〜 あっ!」
晴華はあわてて口に手を当てる。
未夢のコメカミがピクッ!としたきがした。
「おぃ!!」
「あっ!でも奥さん!こいつは全然相手にしてませんから!」
「・・・・っふふふ!知ってますよ〜!!学生時代からもてましたからこの人!」
「いやぁ〜まずいこと言っちゃったかな・・・すみませんお手洗いいいですか?」
「・・・はい!そこの扉を出て・・・」
「じゃあすみませんね。」
ガラガラ・・・パタン
あいつ〜!逃げやがったな!
「彷徨?また会社でももててるみたいねぇ〜」
ちょっと皮肉っぽく未夢は言う。
「なんだよ!それは俺のせいじゃないだろ!」
「それはそうだけど〜・・・」
頬を膨らませて彷徨の目を見る。
「そんな顔するなよ・・・」
「だって〜・・・」
彷徨は未夢の肩に腕を回して未夢の頭に自分の頭を載せる
「いいじゃないか。俺は奥さんにぞっこんなんだから!」
「・・・・////もうっ!ずるいんだから〜!」
彷徨は未夢の目じりに唇を落とす。
そのまま彷徨は未夢の膝に寝そべり、大きくなった未夢のお腹に耳をあてる
「なぁ〜パパのせいじゃないよなぁ〜?」
まだ見ぬ子供に問い掛ける彷徨。
「パパったらずるいわよね〜。」
膝に乗せている彷徨の頭を優しくなでる未夢。
彷徨は耳を未夢のお腹に当てたままお腹に腕をまわす。
「あぁ〜早く会いたいな〜俺達の子に・・・」
「・・・そうね///早く会わせてあげたい!」
「よろしく頼むぜ!奥さん!」
「まかせてよ。だんな様!」
二人はクスクス笑いあった。
「そうだよね・・・私彷徨の奥さんなんだ!普段会ってるみんなは中学からの付き合いだから『未夢ちゃん』
っていわれるけど、そっか///こんなに『奥さん』っていわれるの始めてかも////」
突然思いついたように未夢は言った。
「そういわれてみればそうだな。未夢に『主人』なんて呼ばれることもそんなになかったな・・・。」
彷徨は同意するように言った。
そして彷徨は体を起こしてまたあぐらをかく。
「それにしても晴華のやつ遅いな・・・」
「そうね・・・。トイレに迷っちゃったのかしら?」
「ちょっと見てくるか・・・」
彷徨は立ち上がってふすまを開けた。
そこには顔を赤くした同僚、晴華が立っていた。
口に手を当てている・・・
「なっ!!!お前ずっとそこにいたのか////」
晴華は顔を赤くしたまま声にならなくてうなずくだけだった。
「やだ!みっともない所見せちゃった///」
未夢も見られたことの恥ずかしさがあとからこみ上げてきて顔を赤くしている。
「////な・・・なんか、お邪魔みたいだから、俺帰るよ///」
「なにいってんだよ///来たばかりじゃないか///」
「いや、もう十分だよ///なんか満たされたかんじだよ俺・・・」
「やだ///はずかし〜〜///!」
未夢は両手を頬にあてておろおろしている。
晴華は上着とかばんを取って玄関に向かう。
「ほんとに帰るのか?!」
「あぁ!ご馳走様!!西遠寺君!!」
晴華はニヤニヤしながら彷徨を見据え靴を履く。
「じゃ!今日は突然悪かったな!」
「いや。こっちこそ、お構いもできなくて///」
「十分だよ。ヒヒヒ!」
晴華は二カッ!と歯を見せて彷徨に言う。
「明日以降のうわさを書き換えないとな〜!でも奥さんお前より強いってどういうこと?」
「うわさを書き換えるってなんだよ////」
「まあまあ!それよりどういうことだよ。何が西遠寺より強いの?」
「そこまで醜態をさらせるかよ!///」
「まっ!いいか!あんな普段見られない西遠寺君を見れたことだし」
また晴華はニヤリと笑った。
「うるせ〜!とっとと帰っちまえ!!」
「ハハハ!!じゃあな〜!!顔を赤くしている奥さんによろしく!」
ガラガラ・・・ピシャン!
扉が閉まり晴華は帰っていった。
「晴華さん帰っちゃったの?」
まだ恥ずかしいのか、壁から顔を少しのぞかせて未夢は彷徨に言った。
「あぁ・・・あいつ最後までからかってやがった!」
「そんなに会社での彷徨と家での彷徨が違うんだ〜!!」
「俺はそんなつもりはないけどな。」
「今度彷徨の会社に行って見たいな〜!!」
「それはダメ!!」
「なによケチ〜」
ブーっと頬を膨らませる未夢。
やめてくれ、未夢に会社に来られると多分俺、害虫駆除で
仕事になんねぇよ・・・
「まっ!いいか!そうだ彷徨お風呂やってよ〜!」
「えぇ〜!!俺仕事でヘトヘトなのに・・・。親父は?」
「御父様はゲンさんの所よ!ねっ!お願いパパ!!」
未夢は一番の笑顔で彷徨に微笑みお願いする。
「・・・・・・・・・・・・・わかったよ。」
「ありがと!彷徨!」
これだよ晴華・・・この笑顔には俺はいつまでたっても敵わない・・・
奥さんが俺より強い理由・・・・・
END
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はい!!春香しゃんどうでしょうか!!リクエスト通りになったかなぁ〜(心配・・・)
なんだかとても書いてておもしろかったですよ!長くなっちゃった・・・
こちらの作品はBWGキリ4444を踏んでくださった春香しゃんのリクエスト!キリ3333『家郷』の続き
「仕事仲間が西遠寺にやってくる(そして家と会社での彷徨の態度の違いに驚く)(未宇はまだお腹の中、
若しくは生まれたばかり)」です!
未宇ちゃんはお腹の中にしました(笑)結構、妊娠中の話って少ないですよね?
だから書いてみました!
どうでしょうか!?(2回目)家での微妙に甘える彷徨君とパパ間近の彷徨君をみてビックリしてしまった
晴華氏(笑)!!そしてお気づきになりましたか?晴華氏は(はるか)と読みます!
春香しゃんの名前の読みを使ってしまったよ〜!!ご・・・ごめんね?!(びくびく)
ということで(なにが?!)こちらおもしろいお題で楽しかったです!
お題をくれた春香しゃんサンキュー!!
こちらの作品をキリ4444を踏んでくださった春香しゃんに捧げます!
キリ踏んでくれてありがとねー!そして報告してくれてありがと〜!!
また題名をつけてくださったのも春香しゃんです!晴華氏視点ということで
「噂と真実」の名付け親は春香しゃんですよ〜本当にありがとー!!
2003/4/27 あゆみ