お好きなように

作:つむぎ





 「彷徨さんや、彷徨さんや…」

 「ん??」

 「トリック・オア・トリート!!」


ばぁ!!両手を広げて俺の前に立ちふさがる未夢。

ここは西園寺の母屋。
今日は10月31日 ハロウィンだった。

 「なんだそのかっこう・・・。」

 「彷徨こそ・・・。」

そういって互いの姿をまじまじと見る

先に口を開いたのは未夢の方だった。

 「なにって。見てわからない?魔女だよ?」

未夢は黒いミニのワンピースにシルクの黒マントを肩から下げ
頭には小ぶりのとんがり帽子。
これで手にホウキでも持っていれば魔女の変装といったところだ。


 「俺は、おやじに頼まれた蔵掃除・・・。」

彷徨の方はというと作務衣姿。
藍染された作務衣を全身に身にまとい素足でいた。
お寺ということもあってまんま子坊主といったところだろうか。

語尾も曖昧に彷徨は未夢の姿を上から下までまじまじと見る。

 「どう?可愛い?」

視線に気づくと未夢はその場でくるりとターン。
短い黒のミニスカートが翻り、白くて細い彼女の太ももがちらりの覗く。

ポンっと真っ赤に顔を赤く染める彷徨。
照れ隠しのように口元を手で覆って未夢から視線を外す。

 ―― 反則だろ・・・

「ねぇねぇ」と猫なで声を出す未夢を恨めしくも思った。
いつも、おればっかりこんな不意打ちの動揺ばかりされて腑に落ちない。

彷徨はなんだか悔しくなって反撃に出ることにした。
先ほどの未夢が言った言葉。
そして仮装。

・・・確か今日はハロウィン。

 「お菓子ならないぞ。」

 「えぇ〜。」

 「えーって昨日未夢が全部食べちゃったんだろ?ひとつ残らずテレビを見ながら
  バリバリ・・・バリバリ・・・。」

 「うっ・・。」

息を詰まらせる未夢。
ふてくされているのか、心なしか頬が膨れている。
そんな変な顔も可愛いと思うのだから俺も相当重症だ。

ハロウィンって確か、西洋文化。
生粋の日本の寺である西園寺では全く関係ないといいたいイベントだけど
去年、オットセイに帰ったルウやワンニャーたちがいたときは
盛大に仮装して遊んだ思い出がたくさんあった。

未夢のことだから二人がいない寂しさを紛らわせようと
同じことをしようとして・・・

俺は、そんな未夢の考えそうなことにふっと笑いを洩らすと。
馬鹿にされたと勘違いしたのか未夢は「なによぉ・・・。」とさらにふてくされた。


 「でも・・・さ。彷徨さんや。」

 「なに?」

 「お菓子がないってことはですよ?」

 「あぁ・・・。」

 「悪戯してもいいってことですよね。」


にんまりと、悪戯小僧が見せるような笑顔の未夢。
すでにその両手は奇妙な動きをしながら俺の脇を狙っているようだった。


 ―― ふぅん・・・ そういうこと考えているわけね。


未夢の考えていることはすぐにわかる。

 「えぃっ!」

はずみをつけて俺の脇へと飛び込んでくる未夢。
とっさに俺は体をずらして自分の胸の中へと未夢を閉じ込めて
ギュッっと力強く抱きしめた。


 「なっ・・・なっ・・・・。」


未夢が同様していると思うとわらいがこみあげてきた。
俺はべぇっと舌を出すと。どうやらそれを雰囲気で感知したらしく

 「くやしぃ〜!!」 と胸の中で未夢が暴れだした。


 「悪戯するんじゃないのか? どうぞ? お好きなように?」



こうしてしばらく未夢に甘い悪戯を楽しんだ彷徨。
今年も二人はハロウィンを楽しんだようです。





お久しぶりの投稿です。
今後ともどうぞよろしくお願いします。


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