作:つむぎ
第2回:書籍の勝手にコラボです
作品名:無精ひげのある日
作者:山稜しゃん
作品:http://uwdoko.s21.xrea.com/lib/docs/1-15-0.html
西遠寺での朝。
光月の家は今朝も、当たり前のように両親はいない。
年頃の娘をほおって置いて心配じゃないの?
なんて反抗しようにも
自分の夢にむかって輝いている二人を見ていると
そんな憎まれ口を叩く気はなくなってしまうのだから
確信犯じゃないか?って思う。
まぁ、反抗しているわけじゃないけど
当たり前のように西遠寺にお泊りして
こうして彷徨の隣で目覚める、幸せな時間が持てるのも
忙しい両親のお陰・・・
なんていったら、いくら周知の事実とはいえ
ママは喜んでも、パパは泣いちゃうだろうな。
今日は彷徨の大学の近くの喫茶店でバイトする日。
土曜日だった。
身支度して早く行かなきゃ。
昨夜の情事を思い出して恥ずかしくなる
布団の周りに散らかった服をひとつ、ひとつ拾い上げる。
疲れている彷徨を起さないように。
そおっっと。。。そっと・・・。
「寒い。」
突然背後から声がしたかと思ったら、
グイットものすごい力で布団の中で引き込まれた。
私はあっという間に、布団の中の彷徨の腕の中に納まった。
「わ!彷徨!!いつから起きていたの?!」
「未夢が、恥ずかしそうに服を拾っているところから・・・かな。」
顔が瞬間発火したように真っ赤になったのを感じた。
「ばか、ばか!狸寝入りなんてひどいよ!!」
大きな胸に抱きすくめられているから
彷徨の顔を見なくても、息を殺して彷徨が笑っているのが分かる。
腹立たしさも感じるけど
「はやく離してくれないと、バイト遅れちゃうよ。」
笑いながら、彷徨が甘えるように私の髪に顔を埋めているから
愛おしくて、怒りを持続することも出来ないじゃない。
私はため息を付きながらくるっと彷徨のほうを向いて
整った顔に手をやった。女の子みたいに綺麗な肌・・・
「あれ?今日は無精ひげ生えていないんだね。」
先週、寝坊した彷徨を起したときには生えていた無精ひげが
彷徨の顔のどこを触っても無かったからだ。
「あぁ、俺もともと薄いし・・ 三太みたいだったら伸ばしても
かっこいいんだろうけど俺には無理だろうなぁ・・・。」
話しながら自分の顎に手をやる彷徨。
「彷徨、ひげ、伸ばしたいの?」
「ん?そんな風には思っていないよ。」
ニヤリ・・・
彷徨がこんな風に不適な笑みを漏らすときはいつも決まっていた。
私は思わず身を強張らせて、それを迎え撃つ体勢をとった。
次の瞬間、彷徨は私の頬から肩、背中へと
順々に頬ずりするように下へ下へ・・・と降りていった。
私はくすぐったくて笑った。
「や・・・やめて・・・くすぐったいよ。答えになっていない・・・」
彷徨の強い腕に囚われているからびくとも動かないんだけど抵抗した。
「答えはこうだよ。」
「えっ?」
「髭なんか生えていたらこんな風にお前の肌に触れられないし?」
「なんで?」
「お前だってたまにネコみたいにじゃれて付いてくるじゃないか。」
「なっ!あれは・・・」
よく、彷徨の頬に自分の頬を摺り寄せる行為を思い出した。
私が甘えたいとき、お願いをしたいときにするのだ。
「それに・・・」
「それに?」
「お前が、俺の不精髭に触れようが触れまいが、俺は未夢を離さないし?」
「なっ//」
「離す気なんてさらさらないね。」
しれっと、べぇっと舌を出しながら言う彷徨に何も反論できなかった。。。
・・・その日の未夢はバイト中、あれから髭を伸ばし始めた
三太の顔を見るたびに、彷徨の言葉を思い出して
コーヒーをこぼした。
勝手にコラボ第2弾 2008/11/30メルマガ掲載作品。
山稜しゃんとの作品とコラボです。
無精ひげ。未夢ちゃん同様触るの好きです。