夢の続きに君がいるなら

作:あゆみ



目覚めると、朝日がまぶしく思わず目をつぶった。
あっ・・・もう朝か。



もう、起きなきゃ。




そう思うと私はまぶしい朝日差しの中、ゆっくりと目を開けて
眩しさになれるように勤めた。

ゆっくりと、瞳が光に慣れてくるのが分かる。
真っ白だった視界が徐々に鮮明な輪郭を縁取り
部屋の姿をかたどりだした。


いつもの光景。
変わらない風景。


寝起きの為頭がうまく回らない。
この居心地の良い、十分に体温で暖められた布団の中から出たくない。
本能的にそう感じながら、もぞもぞと私は布団の中で手足を伸ばし、
寝返りを打つ。

左肩を下に寝返りを打つと突如
まだ、お休み中の彷徨が端正な顔立ちを崩すことなく眠っていた。




あれ?何で彷徨が?





そう思うや否や、急に長いまつげが大きく動いた。

「おはよ。」



未だ眠いのか、彷徨も心なしかぼんやりとした表情でそういった。



「おはよぉ。」


私は間延びした声で答えた。

あれ?何で彷徨がここにいるの?

何で・・・

同じ布団の中で寝ているの?




夢から現実へ引き戻されるとはこういう感じだろうか?
私は今ある現実に急激に引き戻された。

トクン・・・

一つ胸がなれば早鐘になるのはあっという間だ。



あっ・・・そうか。私たち結婚してたんだ。



私はぼぉっとした頭の中がゆっくりと動き出したことを確認した。
布団から出ている顔が外気に触れているため
外の気温が小さく身震いするほど寒いのが分かる。

顔を持ち上げると時計に表示された日付を確認した。


12月25日 クリスマス
彷徨の誕生日だった。



「おめでと。彷徨。」


私は枕に顔をうずめたまま、笑った。


「ん?なにが?」


ぼおっとしたまま彷徨が聞く。


「クリスマス。誕生日。」


単語をならべて見る。


「あぁ・・・」


と彷徨は「おめでとう」の意味がつながったのかニッコリと笑って
ゆっくりと未夢の首元に腕を入れて抱き寄せた。


「彷徨?」

「ありがと。」


そういって彷徨はチュッっとおでこにキスをした。
未夢はへへっと笑うと抱き寄せられたことに便乗して
彷徨の胸の中に納まった。



「ママは相変らず甘えん坊ですなぁ・・・」


そう彷徨が言うと同時に「バタン」と扉の開く音がした。



「パパァ!!ママァ!!」


トタトタトタ・・・
と小さな足音が彷徨と未夢の寝室に侵入してきた。
とっさに愛娘未宇が来たことを察知すると
彷徨と未夢はバッっと身を離した。


「どうした?未宇?」

「どうしたの?未宇?」


彷徨と未夢は、息を切らせながら大きなクマのぬいぐるみを抱いた
愛娘をほほえましく思いながら
ベッドの上へ向かいいれた。

二人の間に小さな未宇を座らせると未宇はニコニコと説明した。


「未宇にサンタしゃんきたの!」


「そうか、よかったなぁ!」


「よかったね!未宇」


「うん!」


ニッコリと未宇は抱きかかえていた自分と同じくらいありそうな
ぬいぐるみを抱えなおした。
そんな娘のほほえましい姿を見ると彷徨は未宇の上で未夢の肩をそっと抱き寄せた。


へへっと未宇は二人を見上げてニッコリと笑うと
ぴょこんと立ってベッドから降りた。


「未宇どこいくの?」


「くましゃんとあそぶの♪」


「仲良くするんだぞ!」


「うん!」


というと未宇は来た道を戻っていった。




「よかったね!パパサンタ」


未夢は彷徨の肩にもたれかかったまま
彷徨の片方の手をそっと握った。


「あぁ。俺もいいプレゼントをもらったよ。」


「ん?どんな?」


「ガキの頃は親父の前じゃ絶対いえなかったこと。」


「なに?」


「『あったかい家族がほしい』ってね。」


「そっか・・・。」


「小さい頃からの俺の夢が今まさに叶ったって感じだな。」


「夢か・・・」


「そう、夢の先に未夢がいて、未宇がいて・・・
 こういうのっていいな。俺の大切なものが夢から現実になるって。」


「そうだね。」


そういいながら未夢は絡めていた指をギュッと握った。
彷徨もそれに応える。


「醒めてからも幸せな夢でよかったね!」

未夢は言った。


「あぁそうだな。」


彷徨はコツンと未夢の頭に自分の頭を乗せた。



「ところで未夢?」


「ん?」


「クリスマスと誕生日。俺は最高のプレゼントをもらったけど
 お前、何がほしい?」


「えっ?何かくれるの?」


「あぁ、パパサンタは無事勤めたしなぁ・・・
 旦那サンタもちゃんとしておかないと・・・」


と彷徨はニヤリと笑いながら言った。
未夢はその不適な笑みに、長年培われた一種の不安を覚えた。

 これはなにか彷徨がいたずらを考えている笑顔だ・・・



「えっ・・いいよぉ・・・私も幸せだし。」


未夢はおずおずと彷徨の胸を両手で押して遠ざかろうとした。
しかし、彷徨はそれを許すことなく未夢の背中からガバリと抱きつき
そのままベットに押し倒した。


ベッドの上に再び倒された未夢は
上から両手を突いて覆いかぶさろうとしている彷徨の笑みを確認した。
こういうところは学生のときとまったく変らない・・・



「か、  彷徨?」


「ママにはもう一人かわいい子供を・・っていうのもいいなぁ・・・」


「えっ!!?」


「旦那サンタからママへ 特別な愛を・・・」




そういって彷徨はゆっくりと未夢に唇を落とした。



 (か、彷徨!今朝なんですけど!)


そう抗議する未夢に彷徨がどう応じたか





それは、ご想像にお任せします・・・・











おわり



2007/12/24


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