最後にもう一度だけ

作:あゆみ



「なぁ?どうして逃げるんだよ?」

「だっ、だって・・・」



そういって未夢は俺の腕の中からするりと抜けて
腰が抜けたまま畳を擦るように後ずさりする。

顔を真っ赤にして
唇を尖らせて
俺を妬ましそうに上目使いでにらんでいる。


ばかだなぁ未夢

未夢がそういった態度をとるだけでも
もっといじめたくなる衝動に駆られてしまうことをそろそろ分かったら?


フッ・・っと
俺は小さく口から息が漏れ、くすくすと笑う。



「な、なによぉ!!彷徨の馬鹿!」

悲鳴にも近い未夢の声。
きっと頭の中はパニック状態。


「馬鹿?ひどいな。なんでだよ?」

理由は知っているけど
いたずら心に火がついては止められない。


「キ、キス・・・・しようとした・・・。」


未夢は来ていたピンク色のパーカーの袖をつまむと
腕の部分で自分の口元を隠す。


「おかしい?」


意識としてはからかっているけど
実際は本当に思っていることだからトーンを落として俺は答える。
急に、真剣な顔で答えたからなのか?
未夢はびくっとするとうつむいてしまった。



「お、おかしいって・・・なんでいつもこんな急に・・・。」

「おっ!耳まで真っ赤。」


「ば、ばかー!彷徨のおばかー!!」


キィー!っとゆでだこ状態のまま未夢は両手を振り上げて
俺に向かってくる。
俺は未夢のゆるい攻撃をかわして簡単に両手首を拘束した。

動きを止められた未夢ははっとした顔をして
ただ一言「くやしい・・・・」とポツリとつぶやいた。


このまま未夢の様子をからかっていても十分かわいいから
俺はいいけど、ずっとすねられても敵わない。


「じゃぁ、事前に『キスするぞ』って言えばいいのか?」

「そ、そんなこと言ってないでしょ!!」


俺は掴んだ未夢の両手を利用して自分のところへ来るように促した。
未夢の軽い体は簡単にバランスを崩し俺の胸元へ納まった。



「彷徨がこんな人だとは思わなかった・・・。」



未夢は諦めがついたのか、顔が見えなくなったからか
さっきの興奮状態から落ちついて
俺の胸に体を預けている。




「こんな人ってどんな?」




分かっているけど聞いてみる。



「こんな・・・真昼間から・・・キ、キスしようとするなんて・・・。」



もう何回目だよ。
初めてでもないのに
相変らず未夢の反応は始めの頃と変らない
初々しさがいつまでも残っている。




「いやなの?」



「いやじゃないけど・・」



「けど?」



「恥ずかしいの。」



プッっと俺は笑った。
それが分かると俺の中で未夢がピクッと反応した。
笑ったことを怒っているらしい。
また反抗される前に俺は未夢の頭を
長い髪の毛をゆっくりとなでた。



「お前だけだよ。」


「えっ?」


「俺が時間を気にせず触れたいと思うのは。」


「・・・」



「本当はもっと先まで行きたいんだぞ・・・それを俺は我慢してるんだ。」


思わず本音をぼそりと口にした。


「えっ?」


と未夢は意味が分からないというように
顔を上げる。
なに?と興味津々に俺を上目遣いで見る。



馬鹿未夢。
そういう顔をするから抑えられなくなるんだよ。



俺は未夢の後頭部を手で支えるとゆっくりと自分のほうへと促す。
未夢が「ぃゃ・・・」と小さな声で抗議したけど俺はそれを無視した。


「これが最後だから・・・」


と俺は言って未夢の唇に自分のを落した。
腕の中で始めは力んでいた未夢も少しずつ力が抜けてくるのが分かった。
うっすら目を開けて未夢を確認すると
俺はゆっくりと角度を変え、支えなおして未夢を味わった。



「ぷはぁ・・・。」



あまりにも長いキスだったからか
酸欠状態の未夢は顔を赤くして無理やり離れてしまった。
目は少しだけ潤んでいるようだ。


俺はそんな未夢の様子を見て、もっと・・・と思う。
今度は力ずくに唇を奪った。



「な、、、むぐっ・・・か・・な・・・  さい・・・・ご////」



未夢の言いたいことは分かる。
「これが最後だといったはずだ」というところだろう。



でも俺は離さない。
俺をこんなのにしたもの未夢のせいだよ。
休みの日ぐらい構ってくれよ。






俺がこんなになるのはお前が


  『最初で   最後だよ・・・。』














あは。20分で書いたショートストーリーです。
何したいんじゃ・・・と一人突っ込み。攻撃型彷徨です。GO!

2007/12/16    あゆみ 


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