あしたはアシタ

変わらない日々

作:あゆみ












『明日は昨日』続編というか。
おまけ話です。







あれから3ヶ月の時が過ぎた。
今でも思い出そうとするだけで恐ろしい
自分の身に降りかかった出来事。




時間移動現象




毎日が不安で
このまま眠ったら自分が明日『いつ』に行くのか分からなくて
移動とは別の外部の力も見え隠れして。


一生分の怖いことがあの1週間に詰まっていた気がする。
光月未夢は今、休み時間始まりのチャイムを聞きながらそんなことを考えていた。


机の上にひじをつけ頬を載せる。
ふと窓の外を見上げると空の雲がわずかながらも
ゆっくりと風に乗って移動していた。


  雲だって風に流されるままこの時間を流れているのにね


未夢はフッっと笑った。
自分に降りかかった異常現象が
いかに不可解で奇妙な出来事だったのか。
それに関わっていなければきっと分かってもらえないだろう。





実際、未夢はあのときの出来事は
友人の綾やななみ、クリスの誰にも言っていなかった。

あの件に関して最後まで相談に乗ってもらい、
終息まで立ち会ってくれたのはただ一人だった。


休み時間になるといつもと同じ席で本を広げ、静かに読書している人物。
西遠寺彷徨だけだった。


未夢はボーっと西遠寺彷徨の横顔を見ていた。
3ヶ月前はまったく意識していなかったのに
一週間、たったそれだけの時間を共有しただけで、ここまで人の意識が代わる
というのは未夢にとって不思議だった。



相変らず憎たらしいくらい整った顔。

黙っていればいい男なのにね。

未夢は西遠寺彷徨の態度を思い出しながらそんなことを思った。



何の本を読んでいるのかわかないが相変らずの集中力だった。
西遠寺彷徨の視線は本のページの一文字一文字に集中していた。




これほどまでに西遠寺彷徨の横顔を凝視しているのにもかかわらず
まったくこちらに気づかないのも凄いと思った。
あれから、未夢は意識して西遠寺彷徨を目で追うようになった。
しかし逆に、西遠寺彷徨が未夢をみることは無かった。





あれ依頼、二人の視線は交わることなく、
未夢の一方通行だった。






しばらく西遠寺彷徨の横顔をみていると
前髪が目にかかりそう。
未夢は思った。


『なによんでいるの?』と話しかけるチャンスかな?
未夢はそう思って行動に起こそうか迷った。

しかし、窓から流れてくる風が、ゆっくりと彼の前髪をなびかせて
ダークブラウンの瞳に髪の毛がかかることは無かった。
まるで風が、読書の手伝いをしているようだった。



結局風に、邪魔されて、
というか、髪を風になびかせながら
集中して読書している西遠寺彷徨に見とれてしまったため
未夢は何も行動することができなかった。





●○○●○○●○○●○○





あれから、事件の終焉からの自分達は何が変わっただろうか?
未夢は何も変わっていないように感じていた。



 西遠寺彷徨の家で西遠寺君とのキス



あれがことの事件の始まりで終わりだった。
コーヒーの香りに包まれてた彼の部屋で
フルーツポンチと驚きの味がした。

未夢のファーストキスだった。
思い出すだけでも頬が赤くなる。
未夢は暑くなりそうな頬を手で覆った。




不意に背後から自分の体を抱きしめられる形となった。

 「み〜ゆ!」


ななみだった。
未夢はゆっくりと後ろを振り向くとななみの傍に綾とクリスも一緒に
微笑みながら立っていた。


 「ななみちゃん。みんな。」


未夢はニッコリと笑った。


 「未夢ちゃんまた見てたね。」


綾はムフフと含み笑いをした。


 「え?なにを?」


未夢はきょとんとたずねた。


 「西遠寺君ですわ。未夢ちゃん先ほどからずっと見ていらっしゃったのですよ。」


クリスはいつもどおりふんわりと笑いながら言った。


 「おーい未夢。うまく言ったんだなぁ!!コノコノ〜!!」


ななみは抱きしめた腕に力を込めて未夢の頭をぐりぐり撫で回した。


 「えっ?!なにが?」


未夢は分けがわからにといった感じでされるがままになる。


 「西遠寺君とうまくいったんだな?ってことみたいだよ。」


綾が捕捉する。


 「一見お二人の関係が変わってないように見えますが、
  なんとなく取り巻く雰囲気が違いますわ。」


クリスも捕捉する。


 「西遠寺君がねぇ〜未夢の彼氏か〜。」


ななみはテレながらもやや興奮気味に言う。


 「!!!そ、そんなんじゃないよ!」


やっと3人の言っている意味を理解すると未夢は慌てた。




 「「「何がちがうのよ」」」




3人が同じタイミングで反応した。


 「西遠寺君とはそんなんじゃなくて・・・
  確かに一時期相談に乗ってもらってたりしたけど・・
  別に付き合うとか、付き合わないとか・・・そういうんじゃ・・・」


未夢はあのときの出来事を思い出しながらいった。










そう、二人の関係は変わっていなかった。








●○○●○○●○○●○○●○○●○○







すべての出来事が終わって自分の気持ちをぶつけた。



 このあともずっと傍にいてほしい。



精一杯の告白だった。


 危なっかしくてみてられないな。



半ば仕方が無いなという表情だったが
西遠寺彷徨がこれまで見たことない柔らかな笑顔を未夢に見せた。



 それじゃ、そう思ってくれるなら・・・
 



  態度で示して



と未夢は目を閉じて、彼の反応を試した。
直後リープしたのだが、再び戻ってきた未夢に対して




  お帰り と


  やさしいキス で



西遠寺彷徨が未夢を受け入れてくれた。



しかし、その後。
まるであのときの出来事が何も無かったかのように
変わらない生活
変わらない日々が待ち受けていた。


世間一般の言う、
彼氏・彼女の関係になったわけではなかった。


休日どこかに行くわけでもなく。
学校で話すわけでもなく。

二人はあの事件以前と変わらない日々をすごしていた。


変わったことといえば、未夢が西遠寺彷徨に送る視線が多くなったことくらいだろうか。


なによ、
あんなことしておいて・・・


「未夢」って優しいく私を呼んで・・・

傷ついたおなかに構わず優しく抱きしめてくれた

腕も
胸も

何もかもあのときだけだったってこと?


やったらやり逃げ?!


未夢はめちゃくちゃになっていた日常に困惑していたのにもかかわらず、
今は何の変哲もない普通の日々に飽き飽きとしていた・・・。



 







                                 こっち向いて 笑って

                                 しかたないでしょ 好きなんだから


2007/09/22



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