携帯

作:あゆみ



トゥルル・・・トゥルル・・・

8回、9回、10回の呼び出しのベルが耳元でこだまする。




 いないのかな?




未夢は彷徨につながらない携帯電話のOFFボタンを押してため息をつく。




 彷徨っていつもそう。
 せっかく持っている携帯も『携帯』してなきゃ意味ないじゃない!



彷徨の携帯がつながらないとき。
それは、

広い西遠寺のどこかにいて、携帯の音に気づかない。
もしくは携帯を所持しないでどこかへ行っている。

そのどれかだった。

けれど未夢はいつも心配になってしまう。



 
 もしかしたら事故に巻き込まれてるんじゃ?
 携帯に出れないほど体調が悪いのではないか?




悪いほうへと考えがいってしまう。

チャチャララ♪チャラララ♪
未夢の携帯がなる。
お気に色の曲「星に願いを」が流れる
携帯ディスプレに表示される相手の名前を確認して
悪い予感でなかったことに安心し
一息ため息をつく。



 「はい、もしもし」

 「あぁ、未夢か?」



よく通る低い声が未夢の耳にダイレクトに届く。



 「あぁじゃないわよ。」

 「何怒ってんだ?」

 「今日はなに?」

 「ん?あぁ、携帯持たないまま庭の掃除してた。」

 「・・・もう!携帯の意味がないじゃない!」

 「悪い悪い。どうも苦手でさ。こう、縛られている感じがさ。」

 「心配するんだから・・・」

 「そっか、ごめんな。」




ずるい。
素直にごめんなんて言わないでよ。
これ以上怒れなくなる。
未夢は口を閉じ黙った。




 「ずるいよ。」

 「なにが?」

 「私ばっかり。」

 「なにが?」
 
 「彷徨を好きみたい。」




ひとつ間が空く。





 「・・・そんなことないぞ?」

 「そんなことあるもん。」

 「そっか・・」

 「そうよ。」




しばらくの沈黙。
通話時間の表示だけが刻々と数字を刻んでいる。




 「なぁ未夢。」

 「ん?」

 「俺が携帯にすぐでないのがそんなに心配?」
 
 「・・・うん。」

 「そっか、気をつける。」

 「うん。」

 「でもそうか・・・うれしいな。」

 「え?なにが?」

 「ん?未夢が携帯をかける。」

 「うん。」

 「俺はでない。」

 「うん。」

 「次がつながるまで未夢は俺のことだけ考えてるわけだ。」

 「な!!うぬぼれ!!」

 「ちがう?」

 「ちが・・・くない。」

 「その時間だけ未夢は俺のことだけ考えてるんだ。」

 「・・・うん。」




未夢は携帯を持つ手が熱くなっている事に気づく。
心なしか頬も赤くなっているのを感じる。




 「ずっとそうならいいのに。」

電話の先で彷徨がフッっと笑ったのが分かった。


 「ばか。」

 「俺のことだけずっと、考えてればいいのに。」

 「ばか・・・」

 「俺はそうなのになぁ。」

 「うそばっかり。」

 「信じられない?」

 「信じられない。」



いつの間にか気持ちが落ち着いているのに気づいた。
不思議・・・彷徨の声を聞いただけで・・・



 「きっと信じられるよ。」

 「えっ?なんで?」

 「そのうちな。」

 「そのうち?」

 「携帯なんて必要なくなるよ。」

 「なんで?」

 「傍にいるから。」

 「えっ?」

 「これから未夢はずっと俺の傍にいるから。」

 「ん?どういう意味??」







 「ちゃんとしたのは今度な・・・」





 「うん?・・・」

 「じゃ切るぞ。」

 「あ!うん。」


プツッ・・・

ツーツー・・・・




そういえば何か話さなければと思って電話したのに
まったくその話に触れなかったことを思い出すと同時に
未夢は今彷徨に言われたことを頭の中で反芻した。




    ちゃんとしたのは今度な?



    なにが?



未夢は頭をかしげ、その場に立ち尽くした。






   きっともうすぐ
   お前は俺の傍にいる
   きっとそんな未来はすぐ

   今は分からなくても気づかせてやるよ











いただきました(笑)
有名な台詞。
フフフ〜 まぁ使い方は違いますが。
10分でポチポチ書いたものなのでこんなできです。


携帯も、携帯してなきゃ意味がない


私の周りにもいます・・・


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