誘惑花

作:あゆみ

















ここはどこだ・・・・・・・・


















暗い闇の中をどのくらい歩いたのだろう・・・
いや、まだ一歩も進んでいないのかもしれない・・・

自分の位置、場所、方向が分からない
俺はなぜこの場所にいるのだろう

なにか目的があったはずなのに
強い意志でこの場所に来たはずなのに
視界に入るものは、闇で、
俺は目を閉じているのだろうかと錯覚さえする

なぜこの場所に
ここにいる

あの強い思いはなんだったのか
段々どうでもよくなってきて・・・・・・

俺は、俺は・・・・・・・・











自分の歩いていた感覚を止め先を見る












闇。












全ての光を吸収する闇














自分の姿さえ見えない
















俺はいない・・・・















意識の遠くなる中俺は闇の先に白い光を見る











自分でもなぜだかわからないが、休めていた足をまた動かす。
その光に向けて


だんだん



だんだんその光は点から円に



円から視界いっぱいに



いつのまにか俺は光の中にいた



ここは・・・・・・・



見覚えのある寺

石段


あぁ・・・ここは西遠寺だ。
俺は西遠寺彷徨
思い出した。俺は西遠寺彷徨という名でここの住職の息子じゃないか
ここは自分の家の境内だ
でもこの風景はなんだか自分の知っている西遠寺じゃない


え―――ん・・・え――ん・・・


子供の泣き声がする

あたりを見回すと鐘の前で小さな女の子が泣いている
俺はその子の側まで駆け寄って片膝をたてるようにしゃがみこむ

女の子の目の高さより自分の目線を下げて泣いている女の子に話し掛けた

「おい。どうしてないてるんだ?」

女の子は目を手の甲でこすっているまま顔を上げずにまだ泣いている。

この子・・・ももかちゃんくらいか?
檀家さんの内の誰かの家の子かな・・・

いまだぐずっている女の子を彷徨は脇に手を入れて持ち上げた。

「ほら!泣くなよ!」

「うっ・・・っ・・・」

「どうした?お前のお母さんはどこにいるんだ?」

「っ・・・っ・・・」

「こまったなぁ〜・・・ほら!高いたか〜い!!」

彷徨はさらに自分の頭高さまでその女の子を持ち上げ、胸の高さまでおろし、また持ち上げる動作を
何回かした。
次第に女の子はぐずるのを止め、顔を隠していた手をはずす
まだ、目を赤く、涙をためてはいるが次第に女の子が笑顔を見せる

「よし!わらったな!」

「きゃ!きゃ!」

「お前のお母さんはどこにいるんだ?」

「きゃ―――パパ〜!!」

「パパ?!!」

彷徨はあたりを見回す。
が、周りには自分とこの女の子しかいない

「パパ・・・って俺のことか?」

「あ〜い!!パパ〜!!」

どういうことだ、この子は俺の子?
だって俺はたしか・・・

なんだっけ?
思い出せない

「あっ!ママ〜!!」

抱きかかえていた女の子は西遠寺の玄関に向かって叫んだ
彷徨もつられてそちらを見る。

「あっ!こんな所にいた〜!!もう!心配したんだからね!この子はもぉ〜!」

「ママ〜!!」

キャ!キャ!っと自分の胸の中で小さな女の子ははしゃいでいる

「彷徨!見つけてくれたのね!」

小さな女の子にママと呼ばれていた女性が自分に向かって言う

「は・・・はぁ・・・。」

「どうしたの?なんだか寝ぼけてるみたいねぇ〜」

クスクスとその女性は笑いながら小さな女の子を自分の腕の中から受け取る
そして、少し背伸びをし、彷徨の額に自分の額をつける

「うん。熱はないみたいね!」

「なっ///なに!」

「なによ〜!顔赤くしちゃって!ねぇ〜変なパパね〜?」

「あ〜い!」

女の子を抱えながらその女性は微笑んでいる

えっ?パパ?
パパって言ったよな、この人も
っていうことは俺はこの人の旦那であり、この子の父親なのか?
いつから?
っつてえぇ〜????
ちょっと待てよ!
落ち着け!俺は結婚してるのか?




もしかしてこの女性は・・・・






「未夢??」
家に向かう未夢は振り向いて声をかける。
「なぁに〜?」


未夢だ///
俺達結婚したのか!
それで、この子は俺達の子!!!!



そうだ。そうだった気がする。
俺達は恋人同士になって
結婚し、子供ができた。
子供が生まれて、今こうして平和に暮らしてるんじゃないか!


未夢の背中を追いかけるように彷徨は歩き出し、その顔は赤くしている。



どうしてこんなに大切なこと俺は忘れていたんだろう///








「あの子寝ちゃった。」

居間の戸を開けて未夢が入ってきた。

「そうか・・・」
彷徨は今だ夢を見ているような気分で居間にいた。

「ほんと、どうしちゃったの?彷徨。今日の彷徨変よ?」

未夢はあぐらをかいて座っている彷徨の隣に座り、自分の腕を彷徨の腕に通し、絡ませ
自分の顔と体をぴったりを彷徨の腕につける。

「//////」
「なに///これくらいで赤くならないでよ〜///」

「未夢も赤いぞ///」
「これは彷徨につられて///」

「あぁ・・悪い・・・。なんか変な気分だけど、なれない感じでさ・・・」
「珍しいね///いつもは彷徨がからかって遊んでるのに」

「・・・・」
「・・・・・へへっ!じゃぁこれでど〜だ!」

未夢は絡めていた腕をを強くし自分の方に彷徨を引き寄せる。
自分の顔の高さまで彷徨が来たことを確認すると
未夢は彷徨のほっぺにちゅ!っとキスをした。

「なっ///なにすんだよ〜」
「きゃー!!その反応なに///こっちまで照れる〜///」

彷徨は耳まで顔を赤くし、未夢は少しはしゃぎながら興奮している。


「未夢。俺で遊んでるだろ〜///」
「だって、こんなに照れてる彷徨はレアじゃない!」
「このやろ〜」

彷徨は未夢にヘッドロックを軽くかけ拳で未夢の頭をぐりぐりする。

「きゃーーまいった!まいった!」

「そーいえばさっき、あの子に『パパ』って呼ばれてルウの事を思い出したよ。」
「ルウ?」

「あぁ・・・なんだか、さっき記憶が曖昧になっててあの子のことがよくわからなかったんだ。
いわゆる、泣いてる小さな子に突然『パパ』って呼ばれてビックリしてさ〜。あぁまたか・・・
ってな。ルウのことを思い出したよ。」

「えっ?彷徨何言ってるの?ルウって?」

「ルウはルウだよ!宇宙人で俺達が親代わりしたじゃないか!」

「なんのこと?宇宙人?」

「分からないのか?ルウだよルウ!!」

「知らない・・・」

「・・・・・・・・・・・・・おまえ、未夢じゃないな・・・。」

「な・・・何言ってるの?私よ!未夢よ!」

「ルウのこと覚えてないなんて!未夢じゃない!この世界は・・・・」

「彷徨!私よ!未夢よ!」










「・・・・・・・・・・・・・・・思い出した。俺は未夢を助けに来たんだ。そしてワンニャーが家で待ってる。」

「彷徨・・・・」

「ここは俺達の世界じゃない!」



一瞬にしてまた闇・・・・・・・・・・・・・・・・






思い出した。俺は未夢と光ヶ丘を助けに誘惑花に入ったんだ。
ワンニャーの言ったことを思い出した。
誘惑花に入ると自分の居心地のよい世界を作り出し、花にとらわれる。
自分をしっかり心を持っていないと捕らわれる・・・


後は未夢と光ヶ丘が花に捕らわれているはずだ助け出さないと




未夢!待ってろ!・・・・・・・・・・・・



























「未夢さんは花の中で一体何を見たんですか〜?」

西遠寺の縁側で未夢、ワンニャー、ルウ、と俺でお茶をすすって誘惑花の中体験した話をしている。

「私はねぇ・・パパがいてママがいて、ルウ君ワンニャー彷徨がいて、みんなで食卓を囲んでいるの!すごい楽しい食事をしたんだ〜」

「ほほ〜そうですか!私も誘惑花の中に入ってみたらし団子をお腹いっぱい食べてみたかったですねぇ〜」

「ワンニャーがもし誘惑花にとらわれていたら戻って来れなかったよ!」

「そうだな!」

「そんな〜ひどいですぅ〜」

「だぁ!」

「ルウちゃままで〜・・・」

「「ははは・・・・・」」

「ところで彷徨は花の中で何を見たの?」

「そうです!彷徨さんは一体何をごらんになったのですか?」

「///////////」

「「おぉ!赤くなった!・・・うぅ〜ん・・・・あやしいですなぁ・・・・」」

未夢とワンニャーは二ヤリと彷徨を見る。。

「俺は何もみてねぇ〜よ!」

「へぇ〜。よほどやましい願望があると見た!!」

未夢は彷徨の周りを飛び跳ねる。










///言えるかよ!
でもあれが俺の願望なのか?
あれが実現するかは別として、こいつとの関係はこの先ずっと続くといいなぁと最近思う
まぁ!あれが未来予想図なのかは







この先のお楽しみ。










BWG5000hit記念小説リクエスト作品第1位の作品

です!
いかがでしょうか?私なりに考えて彷徨君があの時赤くなった理由です。
彷徨君はこ〜んな事を誘惑花の中で見ていたのですね〜(ニヤリ)
いくら誘惑花の中の空想の未夢ちゃんだからってルウ君のこと忘れちゃダメでしょ!!
なんて一括をいれつつ…
このリクエストは常に1位を保っていましたね〜そんなに皆さん気にしていたのですね
まあ確かに私も言われて気づきました(ニブ!!)
気に入ってくださると私も嬉しいです!
それでは、5000hitありがとうございました!これからも頑張って毒を吐いていこうと思いますので
お付き合いよろしくお願いします!
ありがとうございました!これからもよろしくお願いします!

2003/5/5       

注)この作品は2007/2/20をもって閉鎖しました「Blue White Green」の記念作品として投稿させていただいております。

2007/2/17 あゆみ



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