燐愛

作:あゆみ










探していた本をふと立ち寄った店で見つけたとき
町で偶然友人にあったとき
かぼちゃの煮つけがうまいとき
親父のお経が変わりなく響くとき
小さな君が生まれてきてくれたとき
泣いてたきみが笑顔に変わったとき・・・・







おいしいケーキに出会えたとき
変わらぬ友人とおしゃべりしているとき
パパとママが仲がいいとき
あなたとの愛を世に生み出せたとき
初めてママと呼んでくれたとき・・・・








燐愛

















「あのさ・・・・未夢・・・・」
「な・あ・に〜?」
「俺、昨日出張から帰ってきて・・・・」
「・・・・うん。」
「報告書を書かないといけないんだけど・・・。」
「どうぞ〜。書いてください。」
「・・・・この状態でどう書けっていうんだよ。」
「大丈夫でしょ。両手は使えるんだから書ける書ける!」
「あのなぁ〜////」








ここは西遠寺の中の書斎。
彷徨の部屋である。
彷徨は今、社会人としてある企業に勤めている傍ら住職もしている。
昨日まで出張。
仕事で家を空けていた。

今日は休暇を取っていたので仕事はない。
あるとすれば明日提出しなくてはならない報告書だ。
その報告書を家で書いている。

昼食も終え、
午前中の続きと思って書斎に戻り
報告書を書いていた。
と、妻の未夢が入ってきた。(・・・らしい)
お茶を持ってきたみたいで、集中していた俺は片言返事しただけだった。
お茶を置いた未夢は部屋から出て行った・・・・
・・・・と思ったら
机に向かって椅子に座っていた俺の背後に忍び寄り
ちょうど考え事のため顔を上げたときだった。

未夢が座ったままの俺の首に腕を回し
抱きしめてきた。
肩に置かれた未夢の顔
俺の顔のすぐ横にある。

突然のことで驚いた俺は・・・・
初めの会話に戻るんだな。













「気にしないで続けてよ!」
「あのな〜気にするなって方が無理だぞ////」

俺の耳元でつぶやく未夢の声だけで動揺・・・
結婚してもこういうことは照れてしまう


「・・・・だめ?・・・・・」
「だめ?・・・ってなぁ・・・」
「・・・・いや?・・・・・」
「いやって訳じゃないけど・・・・・」
「けど?・・・・」








・・・・・う〜ん・・・・・・・・・・・・・・・・













「こういう事されるとさぁ・・・・」
「なに?」
「仕事する気ぶっ飛ぶんだよね。」














・・・・・・・プッ!・・・・
未夢が肩を揺らして笑らう

「ぶっ飛ぶって・・・・」
「まぁ、嬉しいってことだ。」


彷徨は首にまわされた未夢の腕をそっとつかんだ。
そして自分にまわされた腕をそっと解き
自分の体から未夢を放し
回転いすで体の向きを未夢に向ける


彷徨は手招きをし自分の膝を軽くたたく

「えっ?そこに座るの?」

優しく微笑みおいでというジェスチャーをする

未夢は少し恥ずかしくなったが
彷徨のいうとおりにする
そっと彷徨の腿に腰を落とす
彷徨は未夢の背中を支え横抱きする形になる



未夢は体をひねって先ほどとは違い
彷徨の胸に顔をうずめ
彷徨の首に腕をまわす


ただ座っていたときより未夢の体が近づいたので
背中に回した腕とあいていた腕を未夢の腰に回して組む














「どうした?今日はずいぶんと甘えるな・・・・」
未夢の耳元にささやく

「いいじゃない////」
「いいけど。まるで未宇だな。」
「たまにはママにもパパに甘えさせてよ///」

「未宇は?」
「・・・・学校。・・・・」













「・・・・へへっ////充電!」
「充電?」
「ちょっとね。ちょっとだけだけど、彷徨が家に帰ってこなくて寂しかったの。」
「そうか・・・。」
「未宇もね。少しさびしそうだった。」
「もう、小学生なのになぁ。」
「関係ないわよ////」
「未宇もずいぶん甘えん坊だもんな。」
「パパが大好きなのよねー」
「誰に似たのやら・・・。」







クスッ。と未夢が微笑む
「私よ。」
「あぁ・・・。」
「似すぎたみたい///」
「俺のお嫁さんになるって言ってたしな・・・」
「よかったじゃない。」
「まあな。」
「でも、未宇だけにパパを独り占めさせないわよ!」


・・・・・フッ・・・・・

彷徨は参ったという風に未夢の抱きしめる力を強くする。
未夢は彷徨の胸に顔を埋め体を預ける。








「・・・・・いいの?仕事。」
「いいよ・・・・。寂しがらせた奥さんを喜ばせることの方が大事・・・。」
「またぁ〜キザね〜////」


未夢は彷徨の胸に埋めていた顔を上げ
それに気づいた彷徨は未夢の視線に合わせる









お互い、・・・・フッ///・・・・と短く微笑んだあと
軽いキスをした













「私、しあわせよ。」
「俺も。」











そしてまたお互いに相手を強く、強く抱きしめた・・・・








バタバタバタ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ただいま〜」

ガチャン!
小学校から帰ってきた未宇が玄関から走って
彷徨の書斎を開けた。

「うわぁお!!」
扉を開けた未宇の目に飛び込んできた光景は
自分の父親の膝に座っている母親と父親が抱き合っている光景だった。



突然扉が開いたことにビックリして
未夢と彷徨は扉を振り返った。

「「未宇!!」」
「パパもママもラブラブだねぇ〜!」

昔、彷徨がよく見せた舌を少し出してからかうような表情を未宇はした。
彷徨は慌てて未夢を抱きしめていた腕をほどき
未夢は慌てて彷徨の膝から立ち上がった。

「おかえりなさい。未宇!」
「おかえり。未宇。」

「ただいま〜。パパ! ママ!」

恥ずかしいのか未夢は少し頬を赤くしている。
「未宇。ちゃんとノックしないとだめじゃない。///」
「パパとラブラブできないから?」
「なにいってるの!未宇!」
「へへへ〜。」
「もぅ!こういうところは誰に似たのかしら・・・。」

と視線を彷徨に向ける。
それに気づいた彷徨は俺?と驚きの表情をして自分に指を指した。

「ママ〜!おやつ〜!」
「はいはい。」
「ここで食べたいよ〜」
「パパの迷惑にならないようにこぼさないわね?」
「うん!!」
「分かったわ。ちょっと待ってて!私もここでおやつにしよ〜っと!!」







満面の笑顔をして未夢は部屋の扉から出て行く。







「ああいうママってかわいいよねぇ〜。」
「そうだな。」

残された未宇と彷徨は噴出しながら言う。

「パパってさ。」
「ん?」
「ママが大好きだよね〜。」







彷徨は突然の娘の発言にビックリしたが優しく微笑んで
「そうだな。ママが大好きだから結婚したんだ。」


父親の素直でまじめな答えを聞いて少し恥ずかしいのか
未宇は駆け寄って先ほどまで未夢が座っていた彷徨の腿に飛び乗る。
彷徨の腿に座り彷徨の胸に背をもたれる。
そんな娘を後ろから優しく包み込み
未宇の頭に自分のあごを載せる。

(クッ!クッ!・・・未夢にそっくり・・・)

「あのねパパ。」
「なんだ?」
「ママ好き?」
「うん。」
「未宇は?」
「好きだよ。」

未宇は顔から喜びを漏らす







「じゃあね!ママと未宇どっちが好き?」
「えっ?!」
「どっちがすき?」
「そうだな〜やっぱりママかな〜。」
「え〜!!ママ〜?未宇は?」
「ママと紙一重かな。」
「か・・・かみ?」
「かみひとえ!ちょっとの差ってことだよ。」
「そっか〜・・・。ママいいなぁ――。」
「こればっかりはしょうがないな。でも未宇のことも大好きだよ。」







「///へへへ///パパが未宇のこと大好きだって・・・////」













・・・・・・・・・・・・・・・・パタパタ
「ほら!ママがおやつ持ってきたぞ!ドア開けてあげなさい。」
「うん!」

















「お茶にしましょ――――――!!」











君と喧嘩するとき・・・・・・

あなたと喧嘩するとき・・・・・・・

君が微笑んでくれるとき・・・・・

あなたが微笑んでくれるとき・・・・・

これから先も、
君が・・・・・・・
あなたが・・・・・・・


そばにいてくれることが一番嬉しい











どっか〜ん!!暴走しました!!
途中書いてて止まらなくなり(笑)少し長めになりました・・・。
この作品「○○が嬉しく感じるとき」ふみさんからお題の方いただきました!
初めは詩にしようかと思ったのですが、いやぁ〜センスナッシング!!
(文章が得意というわけでもないのですが・・・(笑))
題名の『燐愛(りんあい)』身近な人々へ注ぐ愛という意味です。
とにかく今回は甘甘こてこてだったでしょうか?書いた本人はそう思っております!(笑)
いや!もう振り返りません!!
叱咤・激励・感想お待ちしてます。叱咤が多そう・・・・。

それではこの小説をBWG1001番ヒッターふみさんへ贈ります。

2003/3/28            あゆみ

注)この作品は2007/2/20をもって閉鎖しました「Blue White Green」のキリリク作品として投稿させていただいております。

2007/2/17 あゆみ


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