月下楼

作:あゆみ












そばにいるのに
気づかない思い

たぶん気づくのは些細なこと
二人の心の燻るきもち


ベクトルの先が自分に向いてることを知らない
そんな二人の話・・・





月下楼









「みてください!ルウちゃま!きれいなお月様ですねぇ」
「あ〜い!!」

西遠寺の縁側ワンニャーに抱かれたルウとワンニャーがお月見をしている。

「こんなお月様の日にはみたらし団子と緑茶ですよね〜」
「あ〜い!ワンニャ〜」

意味を分かっているのかいないのかルウはニコニコとワンニャーの腕の中ではしゃいでいる。

「ルウちゃまもそう思いますか?ふふふ〜これはお団子しかありませんなぁ〜」
「うっ?」
「それでは。お団子とお茶、それにルウちゃまのミルクとボーロを持ってきましょうね!」
「み〜っうく!!」

ルウを抱いたままワンニャーは台所へ向かった。



ペタペタペタ・・・・

「…………なた!食べたでしょ!」
「未夢こそ俺のコーラ飲んだんじゃないのか!!」

台所では未夢と彷徨の怒鳴り声が聞こえる。

(・・・また大変なところにきてしまいましたかねぇ・・・)
とワンニャーが思ったときだった。

「ま〜んま!ぱ〜んぱ!」

(ルウちゃま!!!)


「えっ?ルウ君?」
中から未夢の声がした。

ワンニャーはこうなってはしょうがないのでルウを抱いたまま台所に入る。

「まんま〜!!」
「ルウ君!」

ルウはふわりと飛んで未夢の胸に飛び込んだ。

「どうしたの?ルウ君おきてたの?」
「あ〜い!!」
と未夢に抱かれたルウはニコニコと未夢の服をつかんでいる。

「どうしたんだ?ワンニャー台所に来て。」
「彷徨さんこそどうしたんですか?未夢さんと喧嘩して・・・」

ルウを抱いている未夢の隣にいた彷徨が、戸口に立っているワンニャーに声をかける。

「ちょっとな・・・」
「ワンニャー!彷徨ったらひどいのよ!私のおやつのプリン食べちゃったの!」
「でも未夢も俺のコーラを飲んだじゃないか!」
「・・・あぁぁあぁ、お二人とも!そんなに熱くならなくても・・・」

また喧嘩を始めようとする二人をあわててワンニャーが止める。

「まぁまぁ。お互い様ということでいいじゃないですか〜」
「「ううっ・・・」」
「ワタクシとルウちゃまはお月見用のお団子とボーロを取りに来たのです。」

とワンニャーは戸棚に向かう・・・・・

「・・・・・・っあ――――――!!ない!私のみたらし団子!!」
「ワンニャ?」
ルウは突然大声を出したワンニャーにいう。

「ルウちゃま〜〜私のお団子が〜〜・・・・・あ!ルウちゃまのボーロもありません!」
「うっ?!」
ルウの大好きなおやつのボーロまで戸棚の中から姿を消していた。

「こ・・・これはまたどこかの宇宙人が西遠寺に紛れ込んでいるのでしょうか・・・。」
「う〜〜!!」
ワンニャーは考え出した。





「……わ・・・・・・ワンニャー?ごめん。みたらし団子食べたの私・・・。」
「み!未夢さん!」
「ごめんねワンニャーおなかがすいてて食べちゃった〜」
「ひどいです〜〜〜」

「あ、あのさ、」
「何ですか?彷徨さん?」
涙を流しながらワンニャーが言う。

「ボーロ食ったの俺。」
「ええっ!!」
「小腹がすいて・・・」
「ルウちゃまのおやつですよ〜〜ひどいです〜!」
「パーんぱ!めっ!!」

未夢に抱かれていたルウが彷徨をみていう。

「わるかったよ・・・ルウ・・・」
そして彷徨はルウの頭を優しくなでる


「せっかくのお月見日和ですのに!ひどいです〜!!」
「だぁ!」

((こ・・・困った・・・))
「ど〜してくれるんですか〜〜彷徨さん〜未夢さん〜」
ジーっとうらやむようにワンニャーが二人に視線を送る。




「わ・・・わかった!今から買ってくるよ!コンビニならあいてるし。」
「未夢?」
「だ〜れかさんはコーラを飲まれて怒ってるしね。ついでにコーラも買ってくるよ」

とすこし頬を膨らませている未夢

「だってお前もう夜おそいぞ」
「いいもん。」

(いいもんて・・・お前・・・危ないだろうが・・・)
そんなことを考え、彷徨はフーとため息を一つ落として
「俺も行く。」
「えっ?!」
「俺も行くよ。」
「なんで〜?」

(心配だからなんていえるか。)
「誰かさんのプリンを買いに」

へへ〜と未夢の顔がほころび
「じゃあ!いこ!」
「あぁ・・・。」
彷徨は返事して思った




結局、心配なんだよな・・・






「いってらっしゃいませ。彷徨さん未夢さん。」
ルウを抱いてワンニャーが言う。
「「いってきます」」

ワンニャーとルウに見送られて彷徨と未夢は西遠寺を出た。








わぁ・・・きれい!

夜の道を月に照らされた桜が街灯のように。
照らしている。


その道を彷徨と未夢は歩いていく。


これはワンニャーじゃなくてもお月見したくなるよね
素敵・・・。

ふと隣の彷徨を見る
月の光が彷徨の髪を照らしている。

すごい。彷徨きれい・・・。



整った顔立ち、さらさらな髪、吸い込まれそうな瞳



もてるんだよねこの人・・・
一緒に暮らしていると色々な面が見えるけど
やさしいよね。
今だって多分心配してくれて付き合ってくれてるんだ。



未夢は分かっていた。
夜中に突然買い物に行くと言い出した自分を心配して
付き合ってくれている隣の存在に。


最近、彷徨のことが少しだけ分かってきた。
私がこう言えば怒る、笑う、照れる・・・。

前は何を考えてるのか分からない人だった。
それで、悩んだりしたこともあったっけ・・・。


それでも最近は些細な言いあいがうれしかったりする。


「彷徨、ありがとう。」
「なんだよ?」
「ん?月がきれいだね!」
「??そうだな。」








「これでいいかな!」
「買うものは全部そろったな。じゃあ会計いくぞ。」

みたらし団子、ボーロ、プリン、コーラ、あとついでだからといって他に
おやつ、ジュースも買い込んだ。






買い込んだ袋を彷徨が持ち来た道を戻る。
「やー!いっぱい買ったね!」
「買いすぎなんだよ!」
「いいじゃん。ついでだから私たちもお月見しようよ!」


彷徨が来てくれてよかった。
いくら月が出ていてもこの道を一人で歩くのは怖い


そんなことを考えていると未夢は数歩先に彷徨が先に進んでしまったことに気がついた。
それに気づいた未夢は少し頬を膨らませた


歩くの速いんだから
ちょっとはまってよ


と思っていたら彷徨が後ろを振り向いた

「おい。遅い!置いてくぞ。」
といって彷徨は走り出した。

「えっ?!ちょっとまってよ〜!」
未夢もあわてて追いかける。


うそ!しんじられない

未夢と彷徨の距離はあっという間に開いてしまい。
未夢からは彷徨の姿が見えなくなってしまった。




やだな。一人になっちゃった。
今にでもお化けが出てきそうだもん
やだなんか、ほんとに怖くなっちゃった。
どうしよう・・・


本当に怖くなってしまった未夢は必死になって彷徨を探した


彷徨どこ?
本当においていっちゃったの?


と次の角を曲がる時だった。
「な〜にあわててるんだよ。」
と舌を出して言う彷徨


ほっ・・・。良かった



「ひどいじゃない!おいてくなんて!」
と頬を膨らませて言う。

「ほら!いくぞ」
「も〜・・・」



先に歩き出した彷徨の後ろをつける未夢


そこに、後ろから車のライトを感じる
彷徨は未夢の肩をつかみ壁際によせ自分は車道側に移動する。
彷徨は自分の腕が未夢の肩を抱いている事にに気がついてパッ!と手を離す。
そしてまた歩き出した。
未夢はそんな彷徨に気がつかず何か考え事をしている。


怖かった。
一人になるのが怖かった。
やだな・・・自分がそんなに怖がりだとは思わなかった。
彷徨の腕にしがみつきたい・・・
でも、そんなことさせてくれないよね…。

聞いてみようか?
しがみついていい?

駄目って言うに決まってるか・・・
でも・・・

「あのね。彷徨。」
「ん?」
「しがみつきたい・・・」
「あ?」
「なんかね、今彷徨にしがみつきたいかも…だめ?」
「なにいってんだよ///」

と、さらに歩く速度を上げて前に行く彷徨


やっぱりね。
思ったとおり。
無理か・・・。


ふぅ・・・とため息をつき、あとを追う未夢。

付き合ってるわけじゃないしね
彷徨には迷惑だよね


と、突然前にいた彷徨が足を止めてこちらを向く。

「ほらこいよ。おいてくぞ」

そしてパット前を向きなおす。その後ろ姿が・・・腕が
自分を待っているような気がして・・・
未夢は彷徨のもとまで駆け出した
後ろから彷徨の腕に自分の腕を絡ませて
彷徨の腕に自分の顔を当てる


予想外!!
いいんだよね///


「へへっ///」
「なんだよ気味わり〜な。」


そんな事言って///
顔が赤いよ彷徨・・・


そっぽ向いている彷徨の横顔をみて微笑む未夢

「信じられない///」
「・・・・・・・。」




月下楼の魔法?
夜の買い物もいいね
信じられないことがおきちゃった





月明かりのした
二人の影はたどった道に
長く長く伸びていた。






END





BWG666キリ番小説です、ヒッターは虎酒さん。テーマは『夜の買い物』
第2作目のキリ番小説!これを書いてて思いました。私、テーマーを与えられた方が書きやすいと…(笑)。
いかがでしたでしょうか?
実は管理人の経験が含まれています(どこでしょう〜な〜(笑))
ヒッターさんが男性。ということで女の子(未夢ちゃん)視点で書きました。
『とびつきたい』えぇ。他の方はどうか分かりませんが、私はこんなことを思うときがあります。
しかし、そんなこと思っても私はいえないので未夢ちゃんに言わせました(笑)
夜の買い物は書いていて面白いテーマでした。
しかし、あまり甘めではなかったかな?甘いのを期待されていた方は残念だったかも。
とまぁ。雨の日外に出れなくて、一日中パコパコやってた作品です。
感想をお待ちしてますのでよろしくお願いします。


それではこの作品を虎酒さんにささげます。666踏んでくれてありがとうございました。


2003/3/25 あゆみ


注)この作品は2007/2/20をもって閉鎖しました「Blue White Green」のキリリク作品として投稿させていただいております。

2007/2/17 あゆみ


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