And that's all...?

作:あゆみ











「見て見て!ルウくん!ど〜お?」

未夢は今日、ななみと綾と一緒に行ったバーゲンでの戦利品を西遠寺で着てみた。
紫色のワンピースに、おそろいの髪飾り。
西遠寺でちょっとしたファッションショーの始まりだ。

お客様はルウ君とワンニャー。

「キャーイ!!まんま〜!!」
両手をパチパチとたたくルウくんに

「未夢さんお綺麗です〜///」
台所の片づけをしていた。ワンニャーは手を止めて、居間に来る。


「二人ともありがと〜〜///」

未夢はおそろいの髪飾りで一つにまとめ上げたポニーテールを軽やかに揺らしながら、その場でくるくる回り、ワンピースの裾を翻す。
今回の戦利品は未夢にとっても、好きなブランドのワンピースだったのでとてもうれしい。
西遠寺の居間で、はしゃぐ未夢とルウ。


そこに

「ただいまー」

この家の住人彷徨が帰ってきた。
今日は委員会で帰りが遅くなる日だった。

「お帰りなさい。彷徨さん。」
ワンニャーは声のする方向にお出迎えに向かった。

「お帰り彷徨ー」
「パンパ〜!」
居間から声をかける未夢とルウ。


廊下を歩く彷徨は、普段なら自分の部屋に直行するのに居間へやってきた。

「ただいま。ルウ。み・・・・ゆ・・・」

居間を覗いた彷徨の目に飛び込んできたのは、紫色のワンピースを着て長い髪を、おそろいであろう髪飾りでまとめている未夢の姿だった。
透き通る白い肌に映える紫…
彷徨には今まで見たことのないその服に包まれた未夢を見て言葉を失った。


「あ!お帰り彷徨!」

未夢はあやしていたルウの手を握りながら彷徨のほうへ振り返る。

「・・・あぁ!・・・ただいま・」

見とれていた自分に気づいて、なんとなく赤くなってしまう彷徨。

「見たことない服だな。」

「え!!彷徨に服のこといわれるなんてはじめてかも!」

「・・・そうか?」

口に出したことは始めてかもしれない。しかし、彷徨は普段から未夢の私服に見とれることは何度かあった。

「そうだよ!彷徨こういうの興味ないのかと思ってた。」

「そんなことねぇよ・・・それにしてもどうしたんだ?その服。」

「今日、学校帰ってからななみちゃんと綾ちゃんとでバーゲンに行ってきたんだ!」

「へぇ・・・」

彷徨は未夢から目を離さない。

「この前言ったでしょ?29800円のワンピースが欲しいって!」

「そういえばそんなこと言ってたっけ・・・」

女物の服はそんなに高いのかとびっくりしたことを思い出した。

「それがこのワンピースなんだ!バーゲンで50%OFFだったの!」

「それにしても高いじゃねぇか・・・」

「いいの!欲しかったんだから!」

「まぁ・・・似合ってるからいいけど・・・」

「えっ!?////」


妙なことを口走ったと気づき、彷徨は口を押さえて外を向く。
思いがけない彷徨の一言に未夢も頬をほんのりあかく染める。

「オレ、着替えてくる。」

「うん///」

彷徨はそのまま、かばんを持って自分の部屋に言った。
残された未夢は握りっぱなしのルウの手をジタバタとさせる。

「きゃーい!」

あやしてもらっていると思っているルウは大喜び。
しかし、それは動揺した未夢の姿だった。




着替えを済ませた彷徨が再び部屋へやってきた。
手に古いカメラを持っている。

「未夢。撮ってやるよ!」

「えっ?なに?」

未夢が振り返った瞬間をパシャリとシャッターを切る音がする。

「えぇ〜!!もう撮ったの?」

「あぁ。。。ん?これ壊れてるのか?」

彷徨はカメラを色々な角度から眺める。
フイルムを回してもう一度シャッターを切ってみるが音がしない。

「このカメラも親父が古くから使ってるものだからなぁ・・・」

彷徨はカメラをいじる手を止めて入れたてのフイルムを取り出す。

「これも取れてるかわからねぇな・・・」

フィルムを持ってポケットに入れる。

「古いカメラだね〜。」

「あぁ。親父がむかし、小さい頃オレをこのカメラでよく撮ってたんだよ。
 未夢最近、アメリカの親父さんたちに手紙書くときにプリクラ入れてるだろ?
 写真送ったらどうかなぁと思ってさ。だけど、撮れてねぇだろうな…。」

「そっか〜。モデル未夢さんの色々なポーズを撮れるチャンスだったのにねぇ・・・」

「な〜にがモデルだよ・・」

「なにおー!彷徨さんや!こんなに可愛い子捕まえて!!」

「はいはい・・・」

「心がこもってな〜い!!」







その日その後、彷徨は友人三太に付き合って、中古レコード展に付き合った。
帰り道、ポケットに入れたままの一度しかシャッターをきってないフィルムの存在に気づく。

通りに写真屋があったのでスピード現像を出してみた。
きっと撮れてないだろうと思って出したフィルムから一枚の写真が現像されてきた。


「ありがとうございました〜!!」

写真屋の定員に送り出されてその写真を三太と別れた後見てみる。
ついさっきまで見た未夢の姿がそのまま映し出されている。


しばらく凝視していた写真から彷徨は目をそらし。
自分のシャツの胸ポケットに入れる。






その写真はちゃんとアメリカの未夢の両親に届けられたのだろうか・・・・・









それは・・・・・










ご想像にお任せしましょう・・・













2003/9/6 あゆみ


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