プリンスプリンセス

3

作:あゆみ
















教室、音楽室、化学室、体育館…
彷徨は校内のいたるところを探した。

(くそ…どこいったんだ未夢)
(守るって約束したのに…未夢…未夢…未夢…)













「寒い……ここって、屋上?」

未夢は学校の屋上にいた。
屋上の校旗を上げる支柱に未夢はロープでくくりつけられ
ドレス姿の未夢は寒さと恐怖で体が震えてる。

「誰か〜助けて〜彷徨〜」












彷徨は走っていた・・・・
(未夢……みゆ…ミユ……)

とそこに男子生徒たちの話し声が聴こえた。

「これで、花小町の優勝はいただきだな……」

(ん?…)

「でもまずくねぇか?光月を…」

(未夢?未夢のこといったよな?)

「おい。おまえら。未夢に何かしたのか?」

「おまえ…だれだ?…ゲッ、西遠寺…」

彷徨はずっとかぶっていた野獣の面をはずした。


「未夢に何したのか言ってみろよ」

「……ちょっと……監禁した……」

「……な…なんだと……」

「今日のミスコンは花小町さんに優勝してもらいたかったんだ」

「それで…未夢を…」

「でも、もうミスコンは始まってるしな。もう光月は失格な。」

「……こにやったんだよ」

「は?」

「未夢をどこにやったんだっていってるんだよ!!!!」
彷徨は複数の男子生徒のうち一人の胸ぐらをつかんで叫んだ。

「・・・・っ!なにするんだよゥ…このやろう!!」



―――――――――――――・・・・・・………














………・・・・・――――――――

「…彷徨…彷徨…」

11月の寒さと薄着のため未夢は凍えていた。
腕を支柱に縛り付けられているため、手を合わせることもできない。


『それではミス平尾高校!!優勝者の発表をします!!……優勝は……
2年代表!花小町クリスティーヌさん!!おめでとうございます!!』

ワァ――――


と遠くで文化祭のミスコンの声が聞こえてくる。





(そっかクリスちゃん優勝したんだ………私一人いなくても一日は無事に終わるのね……
私なんかいなくても……)

とそのとき屋上の鉄扉の開いた。

(見つけた……)

彷徨は未夢に気づかれないように屋上に出て、そっと支柱の側に行った。
支柱に縛り付けられている未夢を見た。

(震えてる……)

そっと彷徨は未夢のいる屋上より一段高い部分の下まで来た。
そこからひょいと顔を出して。

「お姫様。お迎えに上がりました。」

「!!!!!!」


身軽に未夢のいる所に飛び乗った。
彷徨は縛られている未夢の前にひざまずく形で座る。

「こんな所でな〜にやってんだよ!!」

「なにって………なにって……そんな事私に聞かれても分からないわよ――――――!!」

未夢は彷徨が来てくれたことが、うれしいのに、安心したのに、怒った態度を取ってしまう。

彷徨は未夢の前から包み込むように未夢を縛っているロープとほどいている。

(くそ…こんな、こんなことしやがって…)

「だいたいねぇ…彷徨は来るのが遅いのよ!!」

「あぁ。」

「ミスコンにも出れなかったじゃない!!」

「あぁ。」

「優勝したら校内の男子たちから『未夢ちゃ〜ん』とか呼ばれたりさ…」

「あぁ。」

「そ…そしたらねぇ。彷徨なんか私に声かけれなくなってね……」

「あぁ。」

「彷徨よりかっこいい男の子と付き合ったりしゃって、彷徨をふっちゃ………………」




ロープをほどき終わった彷徨は、未夢の最後の言葉を聞き終わらないうちに
体を離し、真剣な顔をして未夢に口付ける………………………



初めに未夢の唇をついばむように…
二度目は未夢の唇を確認するように…


そして三度目は顔の角度をかえ、深く・・・深く…・………



「・・……っ!・・・・・・・・・・・・」
未夢も初めは驚いていたが、彷徨の確認するような軽い口付けに
怒っていた(ふり)も落ち着いて、最後には彷徨の頭に手を回して受け入れる。

ちょっぴり苦いキス…二人は今日の穴を埋めるように求めあった。











長いキスを終え

「これでも?」

と彷徨がにやりとしながら言う。

「/////////……………////////」

「遅くなって悪い。聞き出すのに手間取って…」

「そういえば、彷徨その顔どうしたの?」

今気づいたが彷徨の顔にはあざのようなものがいくつもできている。
唇も切れているみたいだ。

「いや……ちょっとな……」

「なにかあった?」

「いや。未夢は気にしなくていい。」

「そう。。。あー―――今日は散々な一日だったな!!」

今は彷徨に後ろから抱きしめられお互いに暖をとっているのでさっきまでの震えが無くなった。

「そうだな・・・。ミスコンも残念だったな。」

「ううん。今日シンデレラって言うのはあんまりうれしくなかったからいいの。」

「なんで?」

「だって…王子様が彷徨じゃないんだもん…」





野獣のマントに包まれている未夢。

(私はベルがいい…)








二人の視線の先には文化祭の後夜祭が行なわれている。
キャンプファイヤーの炎が二人を暖かく包んでいた・・・・・・・・・・・・






END







(2003/3/19)


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