明日は昨日

月曜日への往復 9

作:あゆみ

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「遅くまでお邪魔して、申し訳ありませんでした。今夜はこれで失礼します。」

玄関まで送りに出す未来に西遠寺彷徨は挨拶した。

「いいえ。よろしかったらまたいらしてね。」

未来は愛想よく答えた。

「そこまで送るよ。」

未夢は靴を履いた。









「ね、西遠寺君。」

夜道を並んで歩きながら未夢はたずねた。

「なんだ?」

「今夜眠ったら、私は何時へいくの?私の『明日』は何時になるのかしら?」

普通なら金曜日の朝だろう。だが、その時間を未夢はすごしている。またリープすることになるはずなのだ。

「可能性としてあるのは、日曜の夜、月曜の残り、金曜の夕方・・・そのどれでもなければ土曜日の朝だろうな。」

西遠寺彷徨は答えた。

「その中で一番安全だと、君の無意識が判断するところへ、リープすることになる」

「それで、一番安全なのは『いつ』なの?」

「それを俺に聞くなよ。」

西遠寺彷徨は苦笑いした。

「君の判断で、どうとでも決まることなんだぜ」

「あ、そうか・・・そうよね」

「そうさ、俺のほうが聞きたいくらいだ。・・・が」

西遠寺彷徨は不意に真顔になって立ち止まった。

「光月、頼むから金曜日に来てくれないか?」

「え?」

「金曜日の君は、バイクにひかれる寸前だ。今の君にとって、一番避けたい『時間』だろう。
 だが、それを承知で頼む。金曜日に来てくれ。そうしてくれると助かるんだ。」

「だけど、制御できないもの・・・・」

「そうでもないだろ?さっきの君は、ちゃんと月曜日へ往復してこれたじゃないか。
 全然制御できないわけじゃないんだよ。」

「あの時はそうだったけど・・・」

「光月」

西遠寺彷徨は強く断言した。
思わず、未夢はドキリとする。

「約束する。光月はバイクに轢かれたりなんかしない。俺が、必ず守ってやる。
 光月は心のそこから信じてくれれば、間違いなく金曜日にこれる。」

「・・・ほんと?」

「ああ」

「じゃあ、もう一度約束して。」

「もう一度?」

西遠寺彷徨は妙な顔をしたが、今までのような不適な笑みでもなく、
真剣な表情で未夢が聞きたかったせりふを繰り返してくれた。


「光月はバイクに轢かれたりなんかしない。」




「俺が守る」




トクン・・・あれ?
未夢は、たった今自分の中に発生した現象に驚きつつも にっこり微笑んだ。



「信じるわ。西遠寺君は約束はやぶらないものね。」

「頼むぜ。・・じゃぁ戻ろうか。」

西遠寺彷徨は、未夢の家のほうを示した。

「え?」

「今度は俺が送るよ。帰る途中強姦にでも出くわして、また移動されたりしたら、
 余計にややこしくなるからな。」

「だったら、学校の行き帰りも危ないんじゃない?」

未夢はやや上目遣いに西遠寺彷徨を見た。
西遠寺彷徨は ふぅ・・と溜め息を漏らす。

「分かってる。この一件が片付くまでの間、光月から目を離さない。
 明日の朝も、迎えに来るよ。光月の記憶どおりにね。」











その夜、未夢はベッドの中で一心に念じた。
こんなにこの奇妙なリープ現象を願ったことはないほどに・・



「金曜日、金曜日・・・西遠寺君は必ず来てくれる・・・金曜日。金曜日・・・」









月曜への往復(終)


〜注意〜
この作品は以下の作品をリスペクトし
だぁ!だぁ!だぁ!設定ではどうなるか考えて書いたものとなります。
メディアワークス 
「タイム・リープ・・・あしたはきのう」
著者 高畑京一郎


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