作：あゆみ
遠い・・・宇宙の彼方・・・・
またあえるよね
いつまでもあなたが幸せでありますように・・・・
もう手の届かない所に行ってしまったけど
あなたが笑っていてくれるなら、
あなたが元気でいてくれるなら、
私は・・・笑って見送れる・・・・・
夜。満天の星空。
「ほら、こいよ！」
「ちょっとまって！足が・・・・。」
今日は私が西遠寺で過ごす最後の夜
下の部屋では親たちが何度目のパーティだろう
お祝いだといい、連日祝賀会をしている。
私のお母さん未来が宇宙飛行士としての仕事が一段落し日本に帰国してきたの
凱旋祝いだといい、私と彷徨のおじさん親3人で毎晩のように酒におぼれているのだ。
そうそう、彷徨のおじさん、パパとママが西遠寺に迎えに来たときに階段の下でばったり会ったんだって
インドで修行を終えて帰ってきたの
そして、今日は私の西遠寺で過ごす最後の夜
明日、家に帰る。
そんな最後の夜
彷徨が外に出ようって私を外に誘ったの
親たちはデロデロに酔っ払っている
彷徨と私は今、屋根のうえにきたんだ
彷徨が誘った場所は自分の家の屋根の上だった
なかなかうまく体をもって行けなくて彷徨に助けてもらいながら屋根に登った
先に上った彷徨は私を引っ張りあげた後、瓦に腰掛けていたから私もその隣に座った
やっと一息・・・
「フゥー―――。結構高いんだね」
「そうさ平屋とはいえ家の屋根の上だからな。」
「うわぁ―――きれ――い！！見て見て！彷徨！星があんなに！」
「あぁ。あの階段はつらいけどあれのおかげで家は丘の上に建ってるから、電柱とか空を遮るものが無いんだよ。」
「そっか。あの西遠寺の階段はつらいけどこれでちゃらだね！」
「今日で最後なのになんでこんな素敵な場所を秘密にしてたのよ！」
「秘密にしてたわけじゃねぇよ。ルウとワンニャーもいたからな。空を飛べるとはいえ、
こんな高いところで何かあったら大変だろ。」
「そっか・・・。」
「危ないやつを３人も見てられないからな！」
「そうだね・・・・。ってその中に私も入ってるの？！」
なによなによ、今だって彷徨に助けてもらわないと上れなかったけど、私が危なっかしいってどういうこと？！
「そりゃそうだ。3人の中で未夢が一番危ない。」(ニヤッ)
「―！！赤ちゃんより私のほうが危ないっていう・・・・・・キャ！！」
おちる！・・・・・
興奮した私は彷徨に向かってこぶしを振り上げようとしたところ体のバランスを崩してしまった。
ガシッ！！！
あれ？落ちてない・・・
体が何かに支えられていて・・・・
「フ―――・・・・」
「あ・・・ありがと」
あ・・・彷徨が私を助けてくれたんだね。
いつもそうだった・・・わたしがピンチの時には助けてくれて・・・
「赤ん坊以下だって怒っていたやつは誰だっけ？？」
「うっ・・・」
それをいわれると・・・
「だからつれてこれなかったんだよ・・・」
「わ・・・わかったわよ・・・・ありがと」
そんな怒ってるっていう顔しないでよ・・・・最後の最後まで彷徨には怒られるのかぁ・・・・
あっ・・・彷徨の肩越しに星空。
きれい・・・・・・
彷徨の腕が私から離れた
「きれいだね・・・」
「あぁ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
空に輝くたくさんの星
あの中にオット星はあるのかな・・・
だめだ・・・まだ考えちゃう・・・
ルウ君・・・・・
ワンニャー・・・・
「よくがんばったな。」
ポツリと彷徨がつぶやいた
「えっ？！」
何突然？！
「見送りのときよく泣くのをこらえたな」
「う・・・・ん・・・・・。私が笑ってないとルウ君も安心して帰れないしね・・・・」
私が地球でのママなんだからしっかりしないと！って思って・・・・
「・・・・・・・・・」
「だ・・・って約束したじゃない！？ あのときの約束が無かったら笑顔で見送れなかったな・・・・」
彷徨との約束・・・ルウ君が別れのときに自分たちが泣いていたら帰れなくなってしまうからって・・・
「・・・・・・・・・」
「彷徨のおかげだよ、あの時肩を揺らしてくれなかったら泣いちゃってた・・・・」
あの時、『未夢・・・』と声をかけてくれた。大丈夫か？泣いてないか？って彷徨の気持ちが伝わった・・・
「・・・・・・・・・」
「そばにいてくれてありがと。彷徨」
ほんとに感じる・・・彷徨の存在が私の支えになった
ふっと私は彷徨に微笑んだ。
いつまでも引きずっていちゃだめだな・・・・
しっかりしないと・・・
もうルウ君は地球にいないんだから。
元気にならなきゃいけない！私が悲しい顔をしてたらパパもママも心配しちゃう・・・
「無理してないか？」
「えっ？」
なんで・・・・！
「無理にルウたちを思い出さないようにしてないか？」
「そ・・・そんなこと・・・・」
何で今考えていたことを・・・
「感情を抑えられないからか？」
「ル・・・・ルウくんたちの事は・・・・・」
いつまでも引きずっていちゃいけない・・・そう今思った・・・
「おまえ泣いてないだろ」
「えっ？」
「おれも、未夢に見送るときは笑って見送ろうとはいった。が、それはルウの前だけでいいんだ」
「・・・・・・・・・」
そうなの？
「俺の前で無理して笑わなくていいんだよ」
「・・・」
いいの？泣いちゃっていいの？
「今だってそうだ。空の星をみてルウたちのことを考えていた・・・。ちがうか？」
「・・・・・」
彷徨・・・
彷徨がうつむいていた私の顔を覗き込んできた
「無理するな・・・・。いいよ。俺たちは仮とはいえルウの両親だったじゃないか。寂しいのはあたりまえなんだ。」
「・・・」
かなた・・・もうだめ・・・・・・・・・・・
「うけとめるから・・・・」
「・・・・・・っ・・・・・ふっ・・・・・」
「がまんするな」
「・・・・うっ・・・っ・・・っ・・・・かなたーーーー」
私は顔を覗き込んでいた彷徨の胸にしがみついた。
そして、今までのたまっていた寂しさを全て出すように泣きつづけてしまった・・・。
彷徨は何も言わずにそばにいてくれる。
満天の星空・・・・
わたしは星の数ほどの涙を彷徨に
彷徨はその涙を全て受け止めてくれて・・・・・
「えらかったよ。おまえ・・・・いい母親だった・・・」
そっと彷徨がつぶやいた。
ありがとう・・・・ありがとう・・・・彷徨・・・・・・・・・
次の日の朝
「何だよおまえその顔・・・・ブッ!!」
きのうの夜泣き尽くした私の顔（特に目が）腫れあがっていた
「なによ。こんな顔になっちゃったわよ」
「それにしてもひでーな」
「誰のせいよ・・・」
「誰だろうな (クックック）」
「ううー――・・・」
(でもありがと・・・彷徨）
「そんな顔で帰れるのかよ・・・・クックッゥゥ」
「帰るわよ・・・」
「みんな見送りに来るぞ」
「えっ？！」
うそっ？！！！！！
「駅にまで未夢を見送りに行くんだって昨日三太が言ってた。」
「うわぁーどうしようこんな顔見せられない」
「覚悟を決めろよ ・・・クックッ・・・・・」
「わかってるわよ！彷徨のばか！そんなに笑わなくてもいいじゃない！」
そんなーーーーよりによってこんな顔・・・・
「・・・・クッ・・・。わるい・・。でもおまえ・・・その顔は・・・」
「なによ――――――――――！！彷徨の馬鹿―――――――――――――！！！！」
そして昼
二日酔いの両親と共に私は
自宅に帰るため駅に来た。
見送りに来た友人たちにそんな顔になった理由を問いただされる中、彷徨は隅で肩を揺らして笑っていた。
何よ馬鹿・・・
「また遊びに来るから！」
そういって私は電車に乗ってホームが見えなくなるまで手を振った
そう、これは永遠の別れじゃない！
また会えるんだから
彷徨にはお礼言いそびれちゃったな・・・・
チクンッ・・・・
あれ？なんだろ・・・・
心が疼く・・・
未だ気づいていない未夢の気持ち・・・・
そしてこの別れは、このあとの未夢と彷徨に大きな心の変化を与えるものになるのだった。。。。
続く・・・