七夕に願うは・・・ 作:霧山夏樹




一年に一度、逢瀬を重ねる恋人たちがいる・・・









一年に一度、会うことができる











しかし、一年に一度しか、会えない・・・











その恋人たちを見て、彼らはどう思うだろうか・・・













「お〜い、未夢、飾り出来たか?」





「うん!このくらいでいいかなぁ?」





「いいんじゃないか?このくらいで」





「じゃあ後は飾るだけだね!彷徨、竹はあった?」





「あぁ、もう縁側においてある」





「じゃあ早く飾っちゃおう!」







未夢と彷徨は飾りの入ったダンボール箱を持ち、縁側に持っていった





今日は7月7日―七夕である。

一年に一度、織姫と彦星が出会える日

ここ西遠寺でも、そのことに気がついた未夢が「七夕祭りをやろう!」と言い出した。

そのため、七夕祭りを行うことになった









あたりも暗くなりはじめたころ、七夕飾りを飾り終えた

きれいに飾りつけされた竹をしみじみと見ながら未夢は呟いた





「は〜・・・飾りつけ、終わったね〜」



「あぁ、そうだな。じゃあ夜まで待ってるか」



言いながら彷徨は立ち上がり、部屋に戻ろうとした

すると、未夢はその彷徨を引き止めた。

手には何か紙を持っていた





「彷徨、はい、これ短冊だよ。願い事書いて後で飾ろうね」





彷徨は「わかった」と言い、未夢から短冊を受け取った

そして、短冊を書くために二人とも部屋に戻っていった









それから数時間後、辺りはすでに暗くなり、夜空に星も輝いていた





未夢達は早めに夕食を済ませ、縁側に座り、夜空を見ている

すでに短冊も飾られている

なぜか短冊の数が異様に多くなっていたが・・・





「しっかし、なんか短冊の数が多くないか?」

彷徨は短冊の数にあきれていた

彷徨の短冊は一つである。つまり未夢が飾ったとしか思えない

ためしに一つ見てみるとそこには





「数学の成績が上がりますように」





と書かれていた。それを見て彷徨は思わずため息をついてしまった







「お前なぁ・・・高校生にもなってこんな願い事するなよ」



「いいでしょ!ほんとに切実なんだから・・・」



「じゃあ、もっと確実に成績が上がる方法教えてやるよ」



「え、何々?」



彷徨の言葉に未夢は目を輝かせながら聞いてきた

そんな未夢がかわいいと思ってしまうんだから彷徨も重症だ





「簡単さ、授業中寝ないでちゃんと話を聞けばいい」





彷徨に言われ、未夢は「な〜んだ」とガッカリしていた

そのまま彷徨は他の短冊も見ていった



それには「英語の成績があがりますように」や、「料理がもっと上達しますように」といった内容ばかりだった

自分が書いた内容を読まれ未夢は恥ずかしそうに俯いている

さすがの彷徨もそれらを見てガクっと力が抜けてしまった

未夢の願いにあきれながら

「こいつの精神年齢をもう少し上げてもらうように願えばよかったか?」と内心思っていた

そして、他のより飾り付けされた短が目に付いた
それを手にとって見るとそこには





「ルゥ君たちとまた逢えますように」





と書かれていた。

彷徨はその短冊をはずし、竹の一番上につけはじめた。

その彷徨の行動を未夢は不思議に思い、たずねた



「彷徨、何してるの?」



聞かれて彷徨は舌をペロっと出しながら答えた



「こっちの方が、願い事、叶う気がするだろ?」



彷徨の答えに未夢は満面の笑みを浮かべながら「うん」と嬉しそうだった





短冊をつけ終え、そろそろ縁側に戻ろうときびすを返そうとすると、足元に一枚の短冊が落ちていた。

彷徨はそれを拾い上げてそれを読んだ



「織姫と彦星が逢えますように」



彷徨はそれを「未夢らしいな」と思いながらもう一度竹に戻し、未夢のとなりに座った

すると、未夢が尋ねてきた



「ねぇ、彷徨、織姫と彦星は会えたかな?」



「あぁ、きっと今頃二人で楽しく過ごしているんじゃないか?」



「そうだよね!一年に一度だもん!楽しく過ごしてるよね」


そう話す未夢の表情は悲しそうな顔をしていた





未夢たちも一年前、一年に一度というほどではないが、離れたところで生活していた

そのため、会いたいときに会えない苦しさを知っている

だから、一年に一度しか会えない織姫たちの気持ちが分かってしまうのだ







彷徨はそんな未夢の様子に気がつき、未夢の肩に優しく手を置いた



「大丈夫、もうおれたちはずっと一緒だろ?」





言いながら、彷徨は未夢の指にはめられている指輪を指差した

未夢も彷徨の言いたいことが分かったらしく、「うん」と呟いた



「じゃあもう一つの約束」



「約束?」



未夢は分からないといった顔をしている。

彷徨はそれをみてニヤリと笑った



「永遠の約束をするときにすることは?」



ようやく内容を理解できた未夢は顔を赤くした

何度やっても緊張するものだ

それでも未夢はその瞳を閉じた

彷徨はそれを確認すると、未夢の肩に両手を置き、徐々に顔を近づけた

そして、二人の顔がこれ以上ないくらいに近づき、二人の唇が重なった







瞬間、風が吹いた











その風に二枚の短冊がさらわれた











一枚は彷徨の短冊











「未夢とずっと一緒にいられるように」











そしてもう一枚は・・・











未夢の「織姫と彦星が逢えますように」という短冊だった











しかし、その裏にも文字が書かれていた











「彷徨といつまでも一緒にいられますように」







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後書き

みなさん、どうもです!

霧山夏樹です!



テーマは「夏」ということで七夕をテーマに書いて見ました!

ご存知の方もいると思いますが、この作品、「二人の距離」は以前、書いていた長編の新作です!

設定は高校生になった二人ということにしています。

(高校生が七夕するかー!という突っ込みはお許しを)

なお、本作品はこちらで行われた「プチみかん祭」に投稿したものです


ご意見、ご感想などいただけると嬉しいです!





それでは、しゃん同盟一周年おめでとうございます!

それでは!















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