作:あかね
「はいっ、彷徨これっ」
2月14日。
未夢から差し出されたのは、例のあれ。
・・・よかった、ちゃんと今年もくれるんだ。
「サンキュ」
「言っとくけど、義理チョコだからねっ」
めずらしく素直にお礼を言った俺にちょっと驚いた後、舌を出しながら言った。
「はいはい、分かってるよそんなことは」
「今年は結構上手く出来たんだ♪ちゃんと食べてよ?」
「やっと食えるもん作れるようになったか」
「ヒトコト多い!!」
「うそうそ、ちゃんと味わって食べるよ」
と、目を見て、真剣なんだぞ、と伝えるように言うと、
「うんっ、一生懸命作ったから、愛がこもってるよ〜なんてね」
ちょっと頬を赤く染めて、捨て台詞を残し、部屋から出て行った。
・・・今年も、本命チョコとしてもらえなかったな。
はぁ、と深くため息をつく。
そろそろ未夢を自分のものにしなくては。
急がないとまずい。
時間の問題ではない、とは思うけれど。
なんせあの容姿と性格じゃ、モテるのは当たり前だし・・・
って、何言ってんだよ。
気を取り直してそっと紙袋を開けると、チョコと手紙がある。
紙切れを手にとって、読んでみた。
『彷徨へ
一応今日はバレンタインだし、義理チョコプレゼントします。
明日ゴミ箱なんかに捨ててあったら許さないからねっ!!
未夢』
捨てるわけ無いだろ、と思っていると、紙が何重かになっているのに気づく。
・・・何だ、この長い手紙は。
メモ用紙をめくってみるとそこには――
『ななみちゃん、綾ちゃんへ
くだらない相談なんだけど、どうしても助けてほしいの・・・
彷徨へのチョコのことなんだけどね、
本命って言って渡したいなって思ってるの。
つまり・・・告白になっちゃうのかな・・・・
でもね、冗談だと思って流されちゃったり、
これまでの関係が壊れちゃったりとか、そういうのは嫌なの。
どうすればいいのかな?もうちょっと自分に自信がつくまで待ったほうがいいかな?
返事まってます。 未夢』