作:あかね






 
 「・・・暑い」

 「私は暑くないもん」



 今日の未夢の行動は、いつもにまして理解し難いものだった。


 真夏の午後。

 クーラーのない西遠寺で、

 手を繋ぐだけで真っ赤になる彼女が、

 後ろから抱きついている。


 
 「だから暑いって」

 「だから私は暑くないって」

 

 何度もくり返される幼稚なやり取り。

 ため息をついた俺に、未夢はさらにぎゅっと抱きついた。


 
 心臓に悪い・・・と思う一方で、心がつまる。

 まだ未夢の顔を見てはいないが、きっと震えるような目をしている。




 「何かあったのか?」

 「べ、別に何にもないよ」

 一瞬たじろぐ未夢。

 ・・・図星なくせに。


 「じゃあなんで抱きついてくるわけ?」

 「理由がなきゃ、抱きついちゃだめ?」

 「だって暑いし」

 「彷徨、そんなに私のこと嫌いなんだ・・・」



 「なぁ、何があったんだよ」

 「何もないって」

 「俺の目ごまかせるとでも思ってんのか?」

 「思ってるもんっ」

 「やっぱごまかしてんじゃん」

 「・・・っ」

 
 「あのね」

 「うん」

 「パパとママ・・・9月の1日からまた半年くらい、海外に行くんだって」

 「そうだったのか・・・」

 「何で私の同意もなしに、決まってから言うのかなぁ」

 「きっとさ、海外行ったりするのに私は邪魔なんだろうなぁ」

 「私、誰からも必要とされてない気がするの」



 「なぁ、未夢は今19だよな?」

 「えっ、そうだけど・・・」

 「じゃあさ、今日おまえの親家にいる?」

 「多分・・・なんで?」

 「ちょっとな」


 彷徨は舌を出して笑った。


 


 その日の夜。


 私の彼は、パパとママに「俺に未夢を下さい」って言いに来た。

 唖然としているパパと、目を輝かせてるママに向かって、

 「9月1日の夜にかっさらいに来ます」とか言って。

 
 ・・・罪だよねぇ。
 



 お久しぶりです、というか、初めまして、というか・・・
 本当に久々の小説です。
 ・・・以前にもましてうまく書けないっていう・・・(苦笑)
 テーマが「いろは」とのことでしたので、私は「始まり」の方を使いました。
 え?全然使ってない?(汗)そうなんですよね、最後しか出てきてないんですよねぇ・・・
 ま、まぁ、多めに見てやってくださいな(逃)
 というわけで、駄文を読んでくださったみなしゃん、ありがとうございました〜☆彡










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