夢、そして運命

出逢い

作:あかね



 

 運命・・・だったのかもしれない。





 

 その日の学校帰り、俺はいつもとちがう道を通っていた。

 別に深い理由があったわけではなかった。 

 交差点まで来て、ふと、足を止めて・・・

 気がついたら、こっちの道を来ていた。


 何というか・・・道に呼ばれているような感じがした。


 


 だんだんと紫色に変わっていく空を見ながら、前方に目をやると、遠くに女の子が歩いていた。

 さらさらと揺れる髪は夕日に染められ、美しい黄金色に輝いている。




 (見かけない人だな・・・)



 
 彼女は遠くを見つめていた。

 まるで、何かを待っているように。




 ― ― ―



 
 カンカンカンカン・・・



 踏み切りの遮断機が下り始めた。


 結構近くまで歩いてきたから、急いでいけば待たずに通れる距離だ。




 
 異変に気づいたのは、その時だった。
 

 さっきから、自分と女の子の距離は縮まる一方なのだ。
 
 そして今も、前方の少女は微動だにしていない。





 (あれって・・・)



 まさか、とは思ったが、

 そのまさかだった。




 彼女は、歩いているのではなかった。
 
 線路の上に、立っていたのだ。









 走れば間に合う。

 でも、助ける必要があるのだろうか。

 
 きっと彼女は、生きることなんて望んでいない。

 それでも、かなりの覚悟を決めてここに来たに違いない。

 ・・・邪魔していいのだろうか。


 ・・・助けるべきなのだろうか・・・


 





 だが気持ちとは裏腹に、俺の足は駆け出していた。



 何故だろう。

 目の前で人が死ぬのを、見たくないから―――?




 いや、違う。


 助けなければならない、

 生きることを教えなければならないという、使命感だった。


 どうしても、彼女を赤の他人に見ることができなかった。


 




 「危ないっ!!」


 幅跳びをするように遮断機を飛び越えた。


 驚いている彼女と目が合ったが、話す時間なんてなった。


 そのまま抱きかかえて踏切から抜け出し、草むらに倒れこんだ。
  



 「おいっ、大丈夫か!?」





 彼女から返事はなかった。





 ― ― ―



 

 「極度の緊張によるショック状態だと思います」

 

 あのまま、何度ゆすっても目を覚まさないので、病院に連れてきた。

 暖かい場所に来て、今は頬も赤らんできている。



 「知り合いですか?」

 「いえ、道に倒れていたので・・・」



 
 これで精神病患者の病棟に入れられたら、彼女はどうなってしまうのか・・・と思い、自殺しようとしていたところを助けました、とは言えなかった。
 
 しかも医者が言うには、何か精神的に悩んでいるのが原因らしい。


 

 「大丈夫でしょう。命に別状はありません」

 「そうですか・・・」

 「ところでどうします?身分証明書になるようなものが何もないので、入院させられないんですが・・・」


 知らないところで目が覚めることを思うと、胸が痛かった。

 病院にいても、他の場所にいても、彼女は生きていることを後悔するだろう。



 でももし・・・誰かに心を開けたならば・・・









 「分かりました、うちにつれて帰ります」





 もし、自分が手助けできるならば・・・




 
 どうしようもない駄文を読んでくださったみなしゃん、ありがとうございました。

 この回を書いてて思ったのは、あかねは彷徨視点で書くのが苦手だ、ということです。(汗)

 前回と比べて、3倍くらい時間がかかりました・・・

 しばらくは、この2人だけが出てくることになりそうです。


 ではでは。

 3月1日 あかね




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