(この作品は、2002年12月から2003年1月にかけて開催された「Little Magic Da!Da!Da! Special Christmas」の出品作品です)
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私のぬくもり あなたのために・・・
冬も深まってきた平尾町。
あちこちでクリスマスの曲が流れる。
冬休みは後一ヶ月後の第四中学校。
今日も未夢たちは寒い中、勉強をしている。
今は英語の時間。
暇・・・なんでこんなに英語って暇なのーっ!?
未夢は英語は暇だからあんまり好きじゃない。
だからいつもただノートを写してるだけ。
先生の話なんてちょっとしか聞かない。
よくもまーあんな真剣に・・・
彷徨を見る。
彷徨は真剣に英語に取り組んでいる。
なんであそこまで真剣になれるかねー・・・
未夢はふわぁっとあくびをする。
「光月さん、あくびをするなら先生に見えないようにしてほしいわね。」
「・・・あっ・・・」
一瞬クラスメイト達は未夢の方を見る。
彷徨も。
ばぁーか
声は出ていなかったけれど、口の形でわかる。
確かに「ばか」って言った。
未夢は頬を膨らまして彷徨を睨む。
みんなはノートをとっていた。
二人だけの密かな喧嘩。
そんなのだって二人にとっては大切な時間。
楽しい時間。
英語の時間も終わり、未夢は帰る用意をする。
「みーゆちゃん!」
「未夢ー!」
綾とななみが未夢に寄ってきた。
「ねぇ、未夢ちゃん、帰り際に手芸屋さんに寄って行かない?」
「え?なんで?」
「冬といえば編み物っ!そしてマフラー!それでマフラーを編もうってコト。」
「あー、そういう意味かー。う〜ん・・・別に寄っても良いよ。」
「やった。ということで決まりね!」
綾は少し、嬉しそうな顔をして「さぁ、帰ろうか」と言って三人一緒に教室を出る。
昇降口に到着。
三人は上履きから靴に履き替える。
「・・・よぉ、授業中にあくびしてた人。」
「・・・え?」
彷徨だ。
彷徨は三太に半強制的にレコード屋さんに連れられていくとのこと。
「んなっ・・・あくびは出ちゃうものなの!出るものは出るの!」
「どーだか。我慢だってできるだろ?」
「うっ・・・」
「しかも授業中にあくびするなんて、先生に対して失礼だぞ。」
「なによぉ!そこまで言わなくっても良いでしょー!」
二人の喧嘩。
「はいは〜い、いちゃつくのはここまでにしてちょうだい。未夢、借りてくね。西遠
寺くん。」
「いちゃついてねーぞ。」
「そーだよ!いちゃついてないよぉ」
「どーだかね。周りからはそう見えるのよ。未夢。」
「うぅー・・・」
「早く行こうよ、ななみちゃん未夢ちゃん!」
「ということで置賜させてもらうわ〜」
ななみ達は学校を跡にした。
商店街。
「ねぇねぇ、なんでそんなにうきうきしてるの?綾。」
ななみが聞いてみる。
「えぇ〜、それは秘密だよ。」
「なんかそう言われたら気になるよー。」
「うふふっ、未夢ちゃんも西遠寺くんにマフラーとか編まないの?」
「えぇ〜?編まないよー、下手だし。私。」
「ムム。綾、今さっき「未夢ちゃんも」って言ったよね!?ということは・・・」
「・・さすがななみちゃん。」
「まぁね〜」
ななみは得意気に答える。
「あっ、ここここ!ここだよ!手芸屋さん。」
「お店にもなにかあるんだね、綾ちゃん。」
「そうだよ、ここ、安いの!」
「そうなんだ〜」
未夢たちはその手芸屋さんに入って行く。
「いらっしゃいませ〜!ただいま毛糸が一玉なら百円だったのが三玉で百円ですっ!お得ですよ〜。」
店員が勧めてくる。
「ほらね。」
「ホントだ・・・」
「私も買ってみようかなー。」
「え、ななみちゃん編むの?」
「なによ、なんか文句ある?」
「いや、なんかイメージに合わないよねー?」
「イメージなんて関係ないのよっ!!」
「私、さっき店員さんが言ってた三玉百円、見てくるね。」
「あ、うん。」
「いってらー、未夢。」
未夢は一人、毛糸売り場へ向かう。
「あ・・・これか。」
ふーん、結構良い色が揃ってる・・・
私、不器用だけど・・・作ってみようかな?
マフラー・セーター・手袋三点セットまでは揃わないけど、 なら受け取ってくれるよね?
・・・うん、大丈夫。作ってみよう。
未夢は青色の毛糸を三玉手にぎゅっと持つと、レジへと向かった。
「なになに?未夢ちゃん、なにか買ったの?」
「う・・うん、ちょっと。」
未夢は苦笑い。
「ちょっと〜?もしや・・・彷徨くんにマフラー編んであげるの?」
「まっ、まさかー!」
「どーだかね〜」
「もう!綾ちゃんななみちゃんっ!」
「へっへっへ〜」
その後、未夢は綾たちと別れ、西遠寺へと向かう。
西遠寺到着。
あの長い長い階段をのぼりきった。
「ただいまー!」
「おかえりなさませ、未夢さん。」
「きゃ〜いっ!マンマ!おかぁ〜!」
「ただいま、ワンニャー、ルゥくん。」
「今日の晩ご飯はカレーですよ!未夢さん。」
「そうなんだ〜・・・彷徨は?」
「彷徨さんは部屋で本を読んでいますよ。」
「そっか・・・」
未夢は一瞬、ニヤっとした顔をした。
ワンニャーはそんな顔もしらず、台所に行く。
未夢は彷徨の後ろに立っている。
彷徨は未夢の気配に気づいていない。
「かーなたっ!」
未夢は自分の手で彷徨の目を押さえる。
「んぁ?未夢?」
「せーかいっ」
「なんだよ。」
「ん?別になにもないよ。」
未夢はくるっと後ろを向くと自分の部屋に向かう。
するとなにやら後ろから手が・・・
「だーれだ。」
「ふぇぇっ!?かっ、彷徨!」
彷徨はぱっと手を離して意地悪そうにニヤニヤ。
「う〜〜っ!彷徨っ!!」
未夢は彷徨をぽかぽかたたく。
「ばぁか。」
「もう!」
彷徨は未夢の鞄の近くにある袋に気が付いた。
「・・・ちょっとまて。」
「な、なによ・・・?」
「あの袋、なに?」
「袋・・?・・・っ・・、あ、あれはなんにもないよ」
未夢はその袋と鞄をぱっともち、部屋へと走った。
「・・・なんだよ・・・っ・・・」
逃げる事ねーだろ・・・気になるじゃんか。
「お二人とも、さっきはいちゃついてらっしゃってましたね。」
夕食の最中。
「いちゃついてないってば。」
「いちゃついてねー。」
「周りからはそう見えるのですよ。」
ワンニャーは水を一口。
「きゃはっ、マンマパンパ、いーちゃーっ!」
「んなっ!ルゥくんまで。」
「ほら、ルゥちゃまが言うんですから。ねー、ルゥちゃま。」
「あ〜い!」
「ルゥ。そんなに暴れながら食べたら行儀が悪いぞ。」
彷徨が優しく、ルゥの頭をぽんっとした。
「・・あ〜い・・・」
「ルゥちゃま、お行儀良く食べましょうね。」
「あーい。」
夕食後、片付けも終わり。
ワンニャーはルゥと一緒にお風呂に入ってる。
未夢と彷徨は居間に二人きり。
「なぁ・・・未夢。」
「・・・なぁに?」
未夢は雑誌をぺらぺら捲ってる。
「あの袋ってさ・・なに?」
「んなっ、なんにもないよぉ。」
「そうかな?」
彷徨は未夢に近づく。
「そっ、そうだよ。」
「そーかなー?」
「そうだってばっ!」
接近中。
「未夢ちゃん、教えてくれても良いんじゃないかな?」
「彷徨っ!」
「・・・そんなに言いたくないなら別に良いよ。もう。」
「うっ・・・・」
「・・・・」
沈黙が続く。
「今は・・・言えないけど、いつかきっとわかるよ。彷徨。」
「・・あぁ。」
「ごめんね・・・」
「誤る事、ねーぞ。」
「うん・・・」
その後、ワンニャーがお風呂から丁度あがってきたので未夢が入っていった。
その晩、未夢はさっそく編み物を始めた。本によると、一日五時間してれば一週間でできあがるとのこと。
それを知った未夢は毎日五時間することを、決意した。
時は流れに流れ、一週間後。
「でっ、できたーっ!!」
今日は日曜日で学校は休み。
西遠寺に未夢の叫び声が響き渡る。
そして彷徨たちが未夢の部屋にやってくる。
「おい・・・うるせぇ。」
その声に反応した未夢はとっさに出来上がったマフラーを隠す。
「あ・・・い・良いじゃないっ、別にっ・・・、早く出て行ってよ!」
「わかったよ。」
未夢・・・今なにか隠したな?
彷徨はそう思った。そして出て行った。
未夢は出て行ったことを確認し・・・一言。
「よし、今日の晩に渡そっ・・・」
マフラーの出来具合はまあまあ。
ちょっと変なところもありつつ、良いようにできている。
そしてイニシャルをマフラーに入れるのは結構難しいものなのだが、ちゃんと、
「K.T」と入っている。
ちょっとずれてるけど。
「未夢ー!俺、三太に呼び出されたからちょっと行ってくるからなー!」
玄関から彷徨の声が聞こえる。
「あっ、うん!わかったー!」
未夢も玄関に向かって返事をする。
彷徨は返事を聞いて玄関を出た。
「あ・・・ラッピングとかしたほうが良いかな?」
「う〜ん、でもそんなに気、使わないほうが良いかなぁ?」
「どっちにしよう・・・」
時は流れた。
五時過ぎ。
玄関のドアが開いた音がする。
彷徨が帰ってきたのだ。
「おかえり〜」
「ただいま。・・・ルゥたちは?」
「ん?お買い物に行ったよ。」
「そっか。今日の晩飯は?」
「シチューだって。」
「なんか最近、そういうものが多いな。」
「ワンニャーも疲れてるんじゃないの?」
「そうかもな。」
彷徨は自分の部屋に行った。
未夢はそれを確認し、結局ラッピングした、マフラーを持ってきた。
彷徨が居間に戻ってきた。
「なにそれ?」
「え・・・っと・・・その・・・」
いざとなると恥ずかしくなるもの。
でも勇気を出そう。
「こっ、これっ!」
まるで告白シーンでなにかを差し出す女の子みたいな口調でマフラーを彷徨に差し出す。
「・・・え?」
「えっと、その・・・かっ、彷徨にマフラー編んだの・・・ ///」
「へぇ・・・くれるの?」
「う、うん・・・ ///」
「ありがとう。」
「・・・ ///」
未夢は恥ずかしいのか、うつむいたままである。
彷徨は顔では冷静な顔をしつつ、心の中ではすっごい嬉しがってるのである。
彷徨はマフラーを取り出す。
「K.T・・・」
そういうと未夢をぎゅっと抱きしめた。
「ふぇっ・・・ ///」
未夢は周りの音が鼓動で聞こえない。
ドキドキ・・・ドキドキ・・・
なにもきっ、聞こえない・・どうしよっ・・心臓が・・・ヤ・ヤバイ ///
心臓の音・・・彷徨に聞こえちゃってるかも・・・・ ///
すると、彷徨は未夢の耳元で・・・なにやら呟いた。
「う・・うん・・・ ///」
数分の間、二人は抱き合ったままだった。
未夢の心臓のことなんか知らず、彷徨はぎゅっと、ぎゅーっと未夢を抱きしめるので
あった。
呟いた一言。
『・・・未夢、本当にありがとう。 俺、すっごい嬉しいよ―――・・・』
++ 私のぬくもり 終 ++
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どうも、神月香魚です。
めちゃ甘になってしまったような気がします。(小学生のクセに・笑)
今回の設定はまだルゥくんとワンニャーが居る、状態でした。
だからルゥくんのしゃべり方が・・・難しかった。
「いーちゃーっ!」っていうのはいちゃついてるって意味です。
ご理解を(笑
未夢ちゃんが彷徨くんにマフラーを差し出すシーン。
無意識にあーなっちゃいました。(笑
そしてまた、私はなにを書いてんだろう。と思いつつ、後書きは終ります。
それでわ、良いクリスマスを。
神月香魚
BGM 桃色片想い
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