庭に足を運んでみたものの、そこにはパーティが無茶苦茶になっていて、あの華やかな光景が嘘みたいに、残骸のみが残っていた。
近くで後片付けをしていた花小町家の給仕さんにほかのみんなはどうしたのかを聞くと、他の人たちは帰ったということだ。
結局、プレゼント交換もしないまま終わってしまった。
未夢と彷徨は仕方なく帰ることにした。
部屋の中においてあった荷物をとりに行き、花小町家の門のところで待ち合わせることにして、お互いに分かれていった。
彷徨が門のところについてから5分ほどたって、未夢が来た。
二人は西遠寺に足を向け、ゆっくり歩く。
少し歩くと、彷徨は花の頭に冷たいものを感じた。
雪だった。
「あっ!未夢、雪だ。」
彷徨がそう言うと、未夢は思わず顔を漆黒の空にむける。
空からは、まるで神様からのクリスマスプレゼントのようにちらほらと白い粒が降り注ぎだしていた。
「ほんとだぁ。きれいだねぇ・・・ほんと、今日はホワイトクリスマスになったね。」
未夢がそういったとき、はっと気付いた。
「今日の夜から雨だって言ってたから、もしかしたら降るかもね〜。・・・いいねぇ〜降ったらまさに『恋人たちのクリスマス』じゃん!あ〜未夢が羨ましいね〜あんなカッコイイ彼氏がいて。」
「そうそう。未夢ちゃんが羨ましい!」
そう、今日のお昼、プレゼント交換のために綾とななみとで買い物に行ったときに話していたことを思い出したのだ。
そのことを思い出してしまい、未夢は隣に居る彷徨のことを妙に意識してしまい、目を向けられなくなってしまった。
二人は黙りながら、ただ雪のちらつく道を歩いていた。
そして、西遠寺の階段のところまで来てしまった。
「未夢、滑るから気をつけろよ。」
「うん。」
二人はそういうと、ゆっくりと階段を上がっていった。
長い階段を上りながら、彷徨は考えていた。
「(今日、俺は未夢に自分の気持ちを伝えるって決めたんだよな・・・。どうしようか。・・・せっかくプレゼントも買ったんだし、これも渡したいし。・・・たぶん、未夢は受け入れてくれるはずだと思うから。
・ ・・よし、この階段を上りきったら・・・)」
彷徨は手を突っ込んでいるポケットの中に眠る小箱を握り締めた。
そして、二人は階段を上りきった。
「なあ、未夢。いいか?」
「ん、ど、どしたの?」
少しは彷徨を見れるようになっていたが、やっぱり意識してしまい、声がどもってしまった。
少し彷徨は考えていた様子だったが、重い口を開いた。
「なあ、・・・未夢・・・」
彷徨は未夢を呼ぶと、未夢の腕を引き寄せて、自分の胸の中に未夢を抱きとめた。
未夢は、いきなりのことに驚き、胸が張り裂けそうなほど高鳴っていた。
「俺・・・おまえに言わなきゃいけないことがあるんだ。」
「・・・・・・うん。」
未夢は彷徨の腕の中で二つのぬくもりを感じていた。
一つは体のぬくもり・・・彷徨に包まれているので全然寒くなかった。
二つは心のぬくもり・・・彷徨がそばにいるだけで、彷徨の胸に顔をうずめているだけで、
心がほぉうわぁっとしてきて、胸が高鳴り、顔が真っ赤になる。
今も、彷徨が『言わなきゃいけないことがある』と言っているのだが、全く未夢には聞こえてはいなかった。それより、彷徨に抱きしめられていることにどきどきしているのだった。
「未夢、好きだ。」
彷徨がいつもの低い声で未夢にいった。
「・・・・・・うん・・・えっ!」
「・・・おまえなぁ、せっかく俺が勇気を振り絞って告白してるのに『えっ!』はないだろう。・・・で、未夢は?」
彷徨は抱きとめていた未夢を目が合わせられるようになる所まで離した。
「え・・・そ、そりゃあ・・・好き・・・だよ。」
未夢の口からちゃんと好きだと聞けた彷徨は天にも上る気持ちだった。
「俺も。」
そういうと、彷徨は未夢との距離を狭めていった。
そして、彷徨は触れたくて仕方がなかった未夢の唇にキスをした。
最初は軽く。
そして、次第に深く。
ちらほら降っている雪が二人の重ねている唇の上に落ちてきて、二人の熱さに雪は解けてしまう。
最初、未夢は彷徨からのキスに驚いていたが、次第に自分からも求めるようになっていた。
そして、声をかけるともなく二人は唇を離した。
そして、彷徨は未夢をもう一回抱きしめた。
「あっ!そうだ。・・・これ、クリスマスプレゼント。」
彷徨は地面に置いていた白い袋を未夢に渡した。
「えっ!これ・・・私に?」
「そうだよ!そうじゃなかったら、誰にあげるプレゼントなんだよ。」
「あ、ありがとう。・・・なか、見ていい?」
そういうと未夢はがさごそと袋を開けていった。
袋を開けると、そこには真っ白なコートが入ってた。
「うわぁ!・・・着ていい?」
そういうと、未夢はそのコートを着てみた。
彷徨はコートを着た未夢をみて、思わずつぶやいていた。
「・・・似合うよ。」
「・・・えっ!ほ、ほんと?・・・ありがと、ね。・・・そ、そうだ、私もあるんだ。」
未夢は自分の持っていた袋の中から、きれいにラッピングされていた袋を彷徨に手渡した。
「ありがと。・・・開けていいか?」
「うん!」
彷徨はラッピングを解くと、そこには、茶色の手編みの手袋が入っていた。
なぜ、手編みとわかったかは・・・
「・・・ブカブカだぞ・・・これ。」
「ま、まあ、そこんとこは許してよね、ははははは・・・」
「じゃあ、これでまけとこうかな。」
そういうと、彷徨はまた未夢にキスをした。
雪は先ほどより強く降っている。、
が、お互い寒さは感じなかった。
それは、二人が抱き合ってるからでもあるが、
もうひとつ、二人は恋人だから。
白い結晶は何を想い、今日を過ごしているのだろう。
白い星屑は二人を包み、そして雪になって舞い降りる。
何も聞こえない世界で俺はお前をもっと深く感じる。
来年も再来年もずっと・・・二人を感じれるように・・・
FIN
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