午後4時30分。
花小町邸。
そこにはたくさんのクラスメイトと一部のクラスメイトがつれてきた友達が集まっていた。
クリスはクラスメイト以外が参加することに、特に反対もしなかったので、その人たちも参加することとなり、最初の予定の2倍ほどが集まった。
なぜ、そんなに集まったのか。
それは、このパーティに彷徨と未夢が参加するからである。
女性陣からすれば、彷徨の心を独り占めするチャンスなのであり、
男性陣からすれば、未夢の心を独り占めするチャンスでもあるのだ。
そんなハイエナのような輩が多数混じっていた。
午後4時40分
未夢、ななみ、綾の3人は花小町家の門のところにいた。
「・・・っ!すごいよ〜!みんな!いっぱいいるよ!」
一番に門をくぐった綾がその後ろを歩いていた未夢とななみにいった。
二人は綾にいわれて、門の先にある庭のほうを見ると、『Mery Christmas』と書かれた横断幕やたて看板、そしてたくさん飾ってある電飾がクリスマス気分を盛り上げていた。そして、この人数。
思っていた数の倍の人数が来ているので、驚くのも無理はない。
未夢はひとり、『何の目的でこんなに人がいるのだろう』思っていた。
しかし、他の二人は『未夢と西遠寺君狙い』とわかっていたのだった。
3人は庭の方に行き、クラスメイトと楽しく話をしながら、パーティーが始まるのを待っていた。
午後4時50分
彷徨、三太組は開始10分前に何とか間に合った。
というのも、平尾デパートで三太が『まだ見る!』と言い張り、無理やり連れてくるのに時間がかかったからだ。
彷徨は門をくぐったときに、庭に居た人数を見て驚いた。
なんでこんなにいるんだ、と。
人の山を見ていると、未夢の顔も見えた。
ふと、彷徨は、『このコート似合うかな?』とか『ちゃんと受け取ってくれるかな?』と考えるばかりだった。
そして午後5時きっかり。大きな花火の打ちあがる音やクラッカーの音などで、パーティーが始まったことを告げた。
鹿田さんが特設のステージの上で司会進行をしていた。
「本日は、花小町家主催クリスマスパーティーにお越しくださってありがとうございました」
そして、かくし芸などを披露して盛り上がり、ひと段落が着いたとき、鹿田さんが声を張り上げて言った。
「レディース・アンド・ジェントルメン!冬だから踊って体を温めよう!みんなでダンス!ダンス!ダ〜ンス!」
鹿田さんの声とともに華やかな歌が流れて、庭に居たみんなが近くにいた人の手を取り、ダンスをし始める。
そこで、未夢は困っていた。
近くに居たハイエナの輩が未夢を囲んでいたのだ。
「光月さん、僕と踊ってください!」
「いや、未夢さん、俺と踊ってください!」
「未夢っち〜、君と踊るのはこの僕だよ〜っ!」
「・・・・」未夢、絶句。
未夢としては、自分がかわいいことに気付いてないので、一体何事だ!という感じで、未夢に手を差し伸べた2人+望を見ていた。
さて、彷徨は何をしているかといえば、・・・やっぱり未夢のこの状況をただならぬ心境で見ていた。
三太が喋りかけてきたり、見知らぬ女の子+クリスが『一緒に踊ってください(ですわ)』といい、にじり寄ってくるので、丁重に断った(つもり[本人談])のだが、その時に彷徨の目が未夢の方に行っていたらしく、クリスがいつものように『♪ふったりはいーっつもなっかよっしさ〜ん!!』となり、鹿田さんが止めに来て何とか平静を取り戻していたりしていた。
しかしながら、クリスが元に戻ったときには、もう彷徨はそこにいなかった。
彷徨はクリスたちのガヤガヤから抜け出して、未夢の近くに来ていた。
色とりどりの照明の中でも未夢の髪の色は鮮やかな金色に見える。
というか、彷徨にとっては、忘れようにも忘れられないくらい愛しい色だった。
彷徨が未夢の近くに来たとき、未夢はちょうど望からのダンスの誘いを受けたところだった。
彷徨は苛立っていた。
たしかに見知らぬハイエナたちが未夢のところに襲いかかろうとしているのだからというのもあるのだが、彷徨は不甲斐無い自分自身にも憤りを感じていた。
好きな女すら自分の手で守れない。
一向に二人の仲が進展しない。
告白すらできない。
そんなことを感じていた。
ちょっと考えてみればあたりまえのことである。
告白することなんて、そうそう簡単にできるもんじゃない。
しかも、相手が心から好きになった異性だとなおさらだ。
もちろん、うまくいけばそれでいいのだろうが、
うまくいかなかったときはどうすればいいのかなんて誰も教えてなんかくれやしないのだから・・・
しかし、今はそんなことを冷静に考えれるはずもなく、彷徨は気がつくと足が勝手に動き、未夢のほうに向いていた。
「未夢っ!」
彷徨は少しぶっきらぼうに声を掛けて、少し驚きながらも助けてといわんばかりの目で彷徨を見つめてきた未夢の手をとり、花小町邸の庭とは真逆の方に連れて行った。
彷徨のその様子に、ハイエナどもや彷徨狙いの女子、望、クリスまでもが驚いた様子で見ていた。
まあ、この30秒後にクリスが暴れだし、パーティは無茶苦茶になってしまい、なにやら大切な電話が掛かってきて屋敷のなかに入ってしまっていた鹿田さんが庭に出てくるまで、誰にも止められなかったそうな。・・・くわばらくわばら。
未夢と彷徨は花小町邸の裏側にきていた。
「未夢っ!・・・おまえなぁ、ダンスするのが嫌なら嫌でちゃんとあいつらに言えよな。」
彷徨は苛立っていたので、思ったことをそのまま言ってしまった。
「・・・だって!・・・私のところにあんなにも来るなんて知らなかったもん。」
少し頬を膨らましながら未夢は言った。
いつもなら、彷徨はこの顔みたさに未夢をからかうので、ここで喧嘩は終わりになるのだが、今日はそうじゃなかった。
彷徨が冷静さを欠いているからだ。
「知らなかったもんって・・・おまえなぁ、よく考えてみろよ。こんなクリスマスの日にクラスのパーティにでてる男だぞ。女を求めて餓えてるんだぞっ!あそこに出てた女子は格好の獲物だぞっ!・・・ただでさえ未夢はかわ・・・あっ!/////////////////」
危うく彷徨は未夢本人の前で『かわいい』といいそうになったのをなんとかのどの奥に追いやった。
「・・・私が何なのよっ!」
『かわ』とだけ聞いてしまった未夢は、彷徨が何を言いたかったのかを聞いてきた。
「・・・と、と、とにかくっ!今日みたいなときは全部断ること!いいなっ!」
彷徨は気づいていなかったが、少し強い口調ではなしていた。
そのため、未夢は彷徨に嫌われたととってしまった。
「・・・ひっく・・・っく・・・そ、そんなこと・・っく・・言ったって・・・」
未夢は泣いていた。
「・・・ほ、ほんとは・・っく・・か、かなたと・・っ・・おどりたかったんだもん・・っく・・」
「えっ!・・・お、俺と?」
未夢が泣いていることに動揺していた彷徨はこの未夢の一言で、もっと動揺していた。
そして、彷徨がぽつり、ぽつりと話し出す。
「お・・・おれは、ただ、未夢が他の男と一緒にいることが見ていられなかったから・・・」
「だから・・・あんときは何がなんだかもわからなかったから・・・とりあえず未夢をこっちに連れて行こうとしか考えてなかったから・・・」
それを聞いていた未夢は泣くどころか、徐々に笑いがこみ上げてきた。
彷徨もなぜか笑いがこみ上げてきた。
「ははははっ!」
「ふ・・・ふふふふっ!」
二人は笑い出した。
二人とも同じ様な理由で喧嘩をしていることがおかしかった。
ひとしきり笑い、話し終えたところで、二人は庭に戻ろうと足を庭に運んだ。
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