君に贈る理由 作:宮原まふゆ

この作品は、2003年春に開催された「Special love white day〜Miyu day〜」の参加作品です。

平尾町商店街 OMACHIデパート。


彷徨は、デパート内にある宝石店の前でウロウロと歩き回っていた。
歩いては立ち止まり、また、歩いては立ち止まる。
自分でも怪しい人物だよなと思いながらも、何を買えば良いか判らずに、迷いながら『あるモノ』を探していた。
それに今日買わなければ、彷徨にはもう日にちがないのだ。

そう。
もうすぐ未夢の誕生日が来る。

ガラじゃないよな…と思いながらも、彷徨は未夢に渡すプレゼントを買いに今日、このOMACHIデパートに足を運んだのだった。

「お客様、どの品をお求めですか?」

突然、後ろから声を掛けられて、彷徨はビクリと肩を上げた。
振り向くと店員らしき人が、彷徨を見ながら営業スマイルで立っていた。
これで何回呼び止められたであろうか?
彷徨は顔を引きつりながらも、何度目かの愛想笑いをした。

「え?いや……あの……」
「宜しかったら、見て行かれませんか?」

と、店員は彷徨を椅子に腰掛けさせると、ガラスケースを慣れた手つきで開けて、何点か宝石を取り出し前に並べた。
彷徨は呆然とその様子を見ていただけであった。

「どうです?綺麗ですよね」
「あ、はあ…」

決まりきった言葉につられて、曖昧に答える。

「恋人にですか?」
「こっ…!いや、ちがっ……その……」

彷徨は突然言われた『恋人』という言葉に、あたふたと両腕を振り行動で否定した。
別に否定したわけではないのだが、彷徨にとって急にそんな事を言われると、柄にもなく動揺し―――――いや、単に恥ずかしいのだ。



(今、未夢がいたら、怒るか泣くだろうな…)



確率としたら70%は『怒る』ほうで、彷徨は未夢がここにいないことに感謝した。
それにまだ自分達はそこまで進展してない。(と思う)
今のままがいいと思う時もあれば、未夢を見ていると気持ちを抑えられない時もある自分を、彷徨は複雑な思いで受け止めていた。

焦ってもしょうがない、と無理やりこじつけて。
いつか暴走するかもしれない、と不安に駆られながらも。

彷徨の耳に微かな笑い声が聞こえて、ふと振り向いた。
するとその様子を見ていたのであろうか、店のお客や店員が口元に手を当ててチラチラと此方を見ているのが判った。
ギロリと睨むが、それ以上に彷徨の今の状況が面白いのだろう。
クスクスと笑う声が耳障りに聞こえてくる。



(まいったな……)



肩を竦ませて小さくなって座っていると、前にいた店員が、
「気にしなくてもいいですよ。もうすぐホワイトデーですからね。最近男性が買われることが多いのですよ」と微笑んだ。
はは…と彷徨は軽く笑って、小さく溜息を付く。



(気にしますってば……)



次から次へと説明をする店員に、彷徨ははうんざりとした表情で半分は殆ど聞いてなかった。
どれもこれも同じように見えて、全然『これだ』と言うモノがない。
しかも値段を見ると全て高金額で、とても自分の小遣いで買える代物ではなかった。だが無理にでも高価なものを買わせようと、店員は次から次へと自分の前に出しては長々とアピールする。
はっきり言って、うっとおしい。
やっぱ別のモノにしよう…かと、ぼんやり考えた時、ふと目に入ったものがあった。

「あ、あの。これ見せて貰えませんか?」

ガラスケースから出されたそれは、とても小さくて、とても綺麗だった。



(…これだ)



彷徨は直感でそう思った。
繁々とそれを見ていると、頭上から店員の声が降りて来た。

「気に入られました?」
「……」

返事はしなかった。
気に入るのは、貰った本人しか判らないことだ。
気に入ってほしい…と思う。

「恋人に贈る品でしたら、この石はピッタリですよ」
「はは…」

だから…と否定するにも億劫で、彷徨は苦笑いして誤魔化した。
暫らく考えて、彷徨はやっと決心したように顔を上げた。

「これ、プレゼント用に包んで貰えますか?」
「では、暫らくお待ち下さいね」

と言うと、その店員は宝石を持って奥へと行ってしまった。
はぁー…と、まるで肩の荷が下りたような開放感を得たように、彷徨は大きく息を吐いた。
落ちついたのか、彷徨は店を何気なく見渡した。
綺麗に飾られたディスプレイ。
柔らかな照明に照らされて、キラキラと宝石が瞬く。
ホワイトデーが近いという事で、確かに男性も多いのだが、皆彼女同伴だ。
その中で彷徨だけが一人ポツンと椅子に座っているのだ。



(俺、今すっごく場違いなトコにいるような気がするんですけど……)



げんなりとした表情で視線を外して、別のほうを見やると、一組のカップルが店員と一緒に品定めをしているのが目に入った。
男の傍らで、指に嵌めた指輪と男を見ては、幸せそうに微笑む女性。
男のほうも何度も頷いて満足した表情だ。



(あいつもこんな風に喜んでくれるといいな…)



「……お客様?」
「は、はいっ!」

慌てて振り向くと、既に店員は立っていて、小さな袋を彷徨の前に差し出した。
袋の中には小さな箱が一つ。
水色の箱に白いリボンが綺麗に巻かれている。

一瞬、本当にこれでいいのだろうかと、頭を過った。
本当に喜んでくれるのだろうか、と――――――。

店員はクスリと笑うと、彷徨に声を掛けた。

「知っていますか?この石にはちょっとしたおまじないがあるのですよ」
「おまじない、ですか?」

不思議そうに顔を上げた彷徨を、その店員はにっこりと笑って頷いた。その店員の笑顔は、あくまでも営業スマイルで疑えば切りが無いのだが……。
教えましょうか?と言われて、何気なく頷いた。
ただ、何となく。





* **





未夢がまだ西遠寺に居た頃、何度かこのデパートにワンニャー(変身中)と一緒に訪れたことがあった。
もっともルゥの服やベビー商品を買うだけの目的であったが。

そんなデパートで買い物をしていたある日、未夢がたたっと自分達の居る場所から一人離れた。

「どこいくんだよ」
「んー、ちょっと」

しょうがないなと未夢の後を追い掛けると、未夢はある店のガラスケースの前でへばり付いて、繁々とその中を眺めていた。。
緑色の瞳を輝かせて、じっと中を見ている未夢が妙に可笑しい。

「なにやってんだよ、未夢」
「ねぇねぇ。見て見て彷徨。綺麗だよぉー、ほら」

ガラスケースの中には沢山の指輪やネックレスが、整然と並べてあった。
宝石とかの類には全く興味がない彷徨は、何故女性が宝石を欲しがるのか理解出来ない。

「…綺麗だけど…別に興味ない」
「むーっ!別に良いわよ。興味なくても」

プイとそっぽを向かれて、彷徨もむっとした表情になる。



(なんだよ、その態度は)



何故か自分の存在を拒否されたようで、未夢と同じように横を向くと彷徨はツンと口を尖らせた。

「本当に綺麗ですねぇ〜。オット星では見かけませんね、このような石は」
「そうなの?」
不思議そうに未夢は後ろを振りかえり、ワンニャーを見た。

「はい。オット星の地下は全部掘り起こされてますからね。こんな綺麗な石があると今だ報告させていませんし…、それにこんな綺麗な石があったら、未夢さんと同じように女性は喜んで付けるでしょうしねぇ。」
「だよねぇ〜そうだよねぇ〜…」
と、共感しあっている二人の後ろで、彷徨は更に不機嫌な顔をした。

確かに綺麗だと思う。
だがこんなのを付けていたら勝手悪いとは思わないのだろうか?第一こんなに小さくて、高い宝石を身に付けていたら、付けた途端に無くしそうだ。



(…やっぱり女って判らない)



と、彷徨は無造作に頭を掻いた。


「あっ!あったっ!」
突然、未夢が声を上げた。
未夢は嬉々とした様子でガラスケースを指差しながら言った。

「ワンニャー、これ!私が欲しいのはこれなの!」
「どれどれ?これも綺麗ですねぇ!何故これがいいのですか?未夢さん」
「へへへぇ〜」
と未夢は照れ臭そうに笑う。

「あのね、この石を持つと恋が成就するんだって。素敵でしょ?ホントはね、3月生まれだからアクアマリンなんだけど…」
「誕生日の石があるのですか?」
「うん。月によってそれぞれ違うんだよ。7月はルビーだし。これママの誕生石だから知ってるんだぁ」



(女って、なんでこんなことになると詳しいんだ…?)



溜息を付きながら横目で見た未夢は、ジッと中の宝石達をうっとりとした表情で見ている。

憧れ。

そんな表情を醸し出している未夢。




…いつか…




突如、胸の奥でそんな衝動が沸き上がり、彷徨は思わず口元に手を置いた。
何故そう思ったのか、彷徨自身困惑していた。
その答えを探るように、彷徨はじっと未夢は見つめ続けた。



(俺、どうしたんだろ……)



そして。
その衝動は、今でも継続しているのだ―――――。







* **







「3番ホームに列車が到着致します。黄色い白線より外に出ないようご注意ください…」





アナウンスの声が聞こえ、椅子に座っていた彷徨はむっくりと立ち上がった。
大きなアクビを一つして、彷徨は列車が来る方向を見た。
彷徨の前を時間ごとに通り過ぎて行く列車は、通り過ぎる度に彷徨の髪を揺らしていく。
ヒヤリとした風の中に温かなな風が微かに頬をかすめた。
彷徨はその風の中に、春が近いとこを密かに感じていた。


15日。
未夢が列車に乗って平尾町に来る。
丁度、未夢の誕生日が土曜日ということで、花小町が未夢のために誕生日会を開くことになった。勿論いつものメンバーと一緒だ。
来られるどうか未夢に確認すると、

「じゃあ、彷徨の家に泊まってもいい?」

と聞いて来た。
いいよ、簡単に答えたがいいが、後から彷徨は悔やんでしまった。
未夢がまた西遠寺に泊まる。
彷徨にとっては嬉しい反面、複雑でもあった。
あの頃の、未夢と接していた頃とは違うのだ。『友達』とは全く違う感情を、今未夢に感じている自分を、未夢は本当に判っているのだろうか?と彷徨は不安に思う。
その…好きな奴が、一緒の屋根に寝泊りするってことは………。
戸惑う彷徨が見えないのを良い事に、未夢はあっけらかんとした声で言う。

「また一緒に居られるね」と。

考え過ぎだろうかと思いながらも、鼓動は本人よりも正直で、ドキドキと高鳴って速度を早めて行く。
お陰で彷徨は一睡も出来なかったのだった。





時刻どおり、列車はホームへ滑り降りた。
どっと列車の中から乗客が降りて来る。
彷徨は未夢がどこから降りてくるのか、苛立ちながらも見探した。



(どこだ?…どこにいるんだ?未夢)





トンッ…。




長い髪の少女が、跳ねるように列車から降りて来た。
癖のない髪がスルリと流れて、風にフワリと揺れた。
あれは……間違いない、未夢だ。

「未夢っ!こっちだ」

彷徨は思わず大きな声で叫んだ。
クルリと振り向いた未夢は、緑の瞳を輝かせて、嬉しそう微笑んだ。

「彷徨っ!」

未夢は荷物を両手で抱えながら彷徨の方へ急いで駆け寄る。
彷徨も急いで近付く。
「久しぶりだね…と言っても、電話で話してるからそんなに違和感ないね」
「ああ。そうだな」
と、互いに顔を合わせながら照れ笑いをした。

彷徨は未夢を眩しそうに見つめた。
暫らく見ないうちに、また綺麗になったような気がする。
それにコートを羽織ってないせいか、やけにほっそりと見える。
未夢は白いハイネックのセーターに、赤いチェック柄のプリーツ風のミニスカートだ。

「何よ…そ、そんなに見ないでよ。恥ずかしいじゃない……」

頬を染めて上目で見る未夢が凄く可愛く思えた。

「あ…悪い。少し…痩せたか?」
「痩せたように見える?へへっなんか嬉しいなぁー。でも体重は全然変わらないんだよ。背は少し伸びたかなぁ」
白くほっそりとした手を耳元にあてて、照れ臭そうに笑う。

何気ない表情。
そんな表情が、彷徨には大人びた感じに見えて、ドキリと鼓動が高鳴った。

「ま、出るとこはまだ出て無いみたいだけどな」
「悪かったわねっ!」

手を振り上げて怒る未夢を、彷徨は笑いながら交わす。
あの頃の、あの時の思い出がよみがえるようだ。
賑やかで暖かだった、あの時の記憶が―――――。



(やっぱり、このままがいい…のかな…)



彷徨は素早く床に置いていた荷物を取ると、肩に担いだ。

「行くぞ」
「え?あ、うん。」

未夢は慌てて彷徨の後ろを着いて行った。






二人が改札口へと向かう途中、彷徨は急に立ち止まった。



(そういえば……)



未夢が覗き込むように彷徨を見る。

「どうしたの?彷徨」
「あ…、いや、なんでもない…」
訝しげな表情をした未夢に悪いなと思いながらも、また彷徨は歩き始めた。

今日は未夢の誕生日。
今言葉にして言ったほうがいいかなと一瞬思ったが、この人込みのなかじゃ余りにも場違いだと思い、口を止めたのだ。
だがこれから行くパーティーで皆と言ってもな…と思う。
どうせなら二人っきりの時に言いたいと思うのが本音だ。



(たった一言なのにな…)



彷徨はタウンジャケットのポケットに手を突っ込んで、その中にあった小さな箱に触れた。



箱は指で弾かれて、再びポケットの奥へと滑り込んで行った。







***







彷徨は未夢をバイクの後ろに乗せて、クリスの家に直行で向かった。
着いた途端、未夢は三太達からクラッカーで大歓迎を受けた。
どうやら待ち伏せしていたらしい。

「「未夢ちゃん、お誕生日おめでとぉ〜っ!」」
「ありがとう〜、みんな」

未夢は嬉しそうに微笑んだ。
彷徨はそんな未夢を見て、ほっとするように吐息を付いた。
実はバイクに乗ってから、彷徨は一言も未夢に声を掛けてないのだ。
何か言いだけにジャケットを引っ張っていたのは判っていたのだが、今日プレゼントをどう未夢に渡すべきかで頭が一杯になっていた。



(俺って、情けね…)



と、反省しながらヘルメットを外す。
すると未夢が自分が被っていたヘルメットを持って、彷徨に近付いて来た。
ヘルメットを受け取ると、「良かったな」と彷徨は微かに笑って言った。

「うん!」
未夢は嬉しそうに、彷徨に笑顔を向けた。


そして彷徨は、やはり情けないと自分を自嘲したのだった。




クリスから案内されて、広間に入る。
そこには大きく『Happy Birthday Miyu』と書かれた大きな紙が貼られ、その廻りには皆して作ったのだろう。紙で作られた色とりどりのチェーンリングや花が部屋中をぐるりと囲んでいた。
テーブルには、これまた豪華な料理がズラリと並ぶ。

「未夢ちゃんの誕生日パーティーですもの。わたくし、腕を振るって作りましたのよ。沢山食べてくださいね」
とニッコリとクリスが微笑んだ。

未夢は大きなテーブルの上座に座らされた。
なんてたって今日の主役である。
居心地悪いのか、それとも照れ臭いのか、未夢はホンノリと赤く染まった頬を、しきりに指で擦っている。

「いやぁ…緊張しますな…席、移動しちゃ駄目?」
「だぁーめっ!今日は未夢ちゃんの誕生日なんだから、未夢ちゃんはここに決定!」
「…ふぁ〜い…」
がっくりと肩を落した未夢に、横に座っていた彷徨が声を掛けた。


「今日はそこで大人しくしてろよ」
「なんか…面白がってるようなんですけど…?」
「気のせいじゃないか?ふっ」
「その含み笑いはなによっ!」
「いや〜別に〜。ただ未夢が見世物になってる姿が面白くてな」
「やっぱり面白がってるじゃないっっっ!!!」


「お前ら相変わらず仲が良いなぁ〜」
彷徨と未夢の姿を見て、三太が懐かしくそうに頷く。
「「仲良くないっ!」」と二人同時に言ったことさえも、微笑ましく思えて、
三太達は彼らが遠く離れていても、心通じ合っていると確信した。

「ほら、仲良いじゃん」

その後、二人が顔を赤くして黙り込んだことは言うまでもない……。







三太達はそれぞれ未夢にプレゼントを用意していた。

綾からは、手編みで作られたボーダー風のバック。
ななみからは、銀にターコイズの青い石がはめ込まれたアンティークなペンダント。
クリスからは、小さな天使の頭が音楽にあわてせ左右に動く、オルゴール。
三太からは、トリのプレミアムCD(特別記念でCDが作られたらしい)
望からは今日咲いた薔薇の花束と、その薔薇で作られたポプリ入りの小ビン。


そして、彷徨は――――――。


「俺はあとで渡すよ…、家に忘れてきたんだ」
「へぇ〜、あの西遠寺くんが忘れ物ねぇ〜」
顎に手を当てて、望が疑いの目で彷徨を見る。

「別にいいだろ?あいつ今日、俺ん家に泊まるんだからよ」
うざったそうに彷徨は答えた。
だが望は彷徨を挑発するように、ニヤリと皮肉っぽく言い寄る。
「ははぁ〜ん。西遠寺くん、さては未夢っちと二人っきりになった時に指輪でもあげるつもりなんじゃないのかい?『これ、僕からの愛だよ…』なんて言ってさぁ〜。どうだい?どうなんだい?西遠寺くん?!」



(こ、こいつ…)



「なんで未夢なんかに指輪をあげなきゃならないんだよっ!」
徐々に押し迫ってくる望に、逃げたい一心で彷徨は強く言い放った。
が。
望に向かって言った肩先に、未夢の姿が目に飛び込んで来た。
彷徨は一瞬全ての時間が止まったような感覚に落ちた。



し、しまった―――――――っ!



彷徨は口を押さえた時には既に遅く、未夢が蒼白した表情で彷徨をじっと見ている。
急に喉がカラカラに乾いたようで、息が苦しい。
だけど、今言わないと……。

「…未夢、あのな…」
やっと声にしたが、未夢は急にスクスクと笑い始めた。

「駄目だよ望くん。彷徨を苛めたってなんにも出てこないよ。彷徨が私に指輪なんか渡すもんですか。宝石なんて興味ないって言っていたし。それに私もいらないし。だって私が指輪なんて嵌めたら、壊して無くしてしまうのがオチだからねぇ〜。」

後悔と罪悪感が彷徨の心に渦巻き、未夢の言葉がズキズキと突き刺さる。
未夢の表情が無理に作り笑いしてるようで、痛々しい。

「さっ!クリスちゃんの手料理を食べよ〜っと!」
クルリと未夢は彷徨に背を向けて、小走りに去っていく。
彷徨は追いかけもせず、クッと顔をしかめて俯いた。

「西遠寺くん。君、乙女心全く判ってないなぁ〜」
しょうがないなぁ〜と軽く溜息を付いて、望は肩を竦ませた。

「うるさいっ!」
彷徨はクルリと望に背を向けて、その場から立ち去ろうとした。
が、望が再び声を掛け彷徨を立ち止まらせた。

「そんなに強く言わなくても聞こえてるよ。でもね、もう少し未夢っちの気持ちを判ってあげないと、君の前からいなくなっても僕は知らないからね。ま、そのほうがライバルがいなくなって、僕は助かるんけどねぇ」
「……」




いなくなる?
あいつが?




急に彷徨の目の前が暗黒に包まれたように薄暗くなっていく。
皆の声も聞こえない。
彷徨は孤独という世界に引きずられたような錯覚に落ちていた。




ワンニャーもルゥもいなくなった…。
その上、未夢までも俺の前からいなくなるのか?




オレ、ノ マエカラ?




身体中に襲いかかった孤独という名の恐怖。
それは確実に彷徨を捕え、心をかき乱してあざ笑うかのように包み込む。
ふと見た未夢の後ろ姿がやけに遠くに感じる。
手を伸ばしても届かない不安が、彷徨を苛立たせていく。





予想もしていなかった。
いつも側にいると思っていた。
確かに今は離れているけど、それでも心は通じ合っていると思っていた。
それだけで十分だった。



いや、違う。

本当は焦っている。



未夢がいつか自分を忘れてしまうんじゃないかと。
このまま来なくなってしまうんじゃないかと、いつも判れ際で不安にかられる。



いつか、
自分を呼ぶ声が、聞こえなくなるのではないか?
あの笑顔も、見られなくなるのではないか?



詰まらない想像が、現実になることを怖れている。
だけど、そんな不安な気持ちを未夢に押し付けるほど、子供でもなくて、
我慢出来るほどの余裕を持った大人でもない。
矛盾な感情にどうしようもないほど苛立ちを感じて、情けないほど胸が苦しい。



(…くそっ・・・)



「未夢っ!」

彷徨は強い口調で叫んでいた。
自分ではそんなに強く叫んでいたわけでは無いのだが、僅かにうわずった声がそうさせたのだろう。
ビクッと未夢は身体を硬直させて、彷徨にゆっくりと振り向いた。

「な、なによ…」
思わず未夢は逃げる態勢を取る。
しかし彷徨は、脅えた表情の未夢を無視するかのように、未夢の肩を右腕で包み込んだ。

「え?なに?」
見上げる未夢。
何がなんだか判らないと言った表情だ。
身体が後ずさりする。

「ちょっと来い」
「え?なんで……きゃっ!」
彷徨は、驚いている未夢の膝裏に腕を滑り込ませて、ひょいと抱き上げる。

「ちょっ!ちょっと彷徨っ!!何するのよっ!降ろしてよぉーーーっ!!」

「お前が逃げたそうにしたからだっ!」
それでもジタバタと足をばた付かせて抵抗するが、未夢の肩と膝裏にガッチリと彷徨の手が強く掴まれている。

「皆、今日はすまない。ごめんなっ!」


彷徨はそのまま暴れる未夢を抱き抱えて、広間を出ていった。






残された三太達は、その光景を呆然と眺めていた。
突然の出来事に皆、声も出ない。


「彷徨くんが…未夢ちゃんを抱き抱えて…帰っちゃった…?」
「うん…帰った…」


綾とななみは互いに顔を合わせると、悲鳴の如く叫んだ。

「きゃぁあああああああああっっっ!!!なんかドラマみたぁ〜いっ!!これはもう舞台でやらないと誰がするっ?!って感じだよね?久しぶりにあった同級生が1年ぶりに対面して、お互いどう思っていたかを告白するって純愛ピュアストーリーで決定ねっ!早速シナリオを書かなくっちゃ!!」
「西遠寺くんがあそこまで行動移すとはねぇ〜。よっぽど未夢が好きなんだねぇー、やるねぇ〜っ西遠寺くんっ!あっ、衣装担当は任せてね!綾」
「了解!」
綾とななみは親指をビシッと立てて、盛り上がる。

「へえ〜彷徨、光月さんのことになると途端に変わるよなぁ〜。だけどなんで急に帰ったのかなぁ〜病気かなぁ〜」
三太が心配そうに二人が行った扉を見つめた。
それを聞いた綾が、溜息を付くようにしみじみと言う。。
「三太くん、超鈍感…」
「なんでだよぉーっ、心配してやってんだろ?」
「別に心配しなくてもいいの。病気じゃないんだから…」
「え?違うのか?」
「う〜ん、違うって言ったら嘘になるけどね。恋は一種の病気みたいなものだからね。あ、この場合は西遠寺くんなんだけどねぇ〜」
「彷徨が病気?」




ガタンッ…




奇妙な音が部屋中に響き渡り、その音のほうを皆して振り向いた。
ガタガタとテーブルが揺れている。
その揺れは次第に激しく揺さぶられて、ビシッと音を立ててヒビが走る。
一同一瞬にして後ずさり。

「彷徨くんが…彷徨くんが…未夢ちゃんを…………抱き抱えて帰っていったですって…・・・・・・…それも無理やり?

『彷徨っ!恥ずかしいから降ろしてっ!』
『いや、もう今日は駄目だ、絶対未夢を離さない』
『彷徨…』

王子様抱っこされた未夢ちゃんは、彷徨くん首にきゅっと抱きつく。

『じゃあ彷徨、もうずっと離さないでね…』
『当たり前じゃないか…未夢…』
『嬉しい…彷徨…』

と更に抱きつく未夢ちゃん。
そして、そして、そしてぇーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!

恋人同士になったことは知ってましたけどぉーーーーっっっ!!!!!
あ〜そこまでイチャイチャモード全開アーンドッラブラブモード炸裂してべったり幸せモード見せつけるなんてっ!絶対当て付けですわぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」

大理石で出来た巨大ダイニングテーブルを軽々と持ち上げて、グルグルと降り回す。部屋中崩壊寸前で、皆逃げるのに必死だ。

「ぐあぁああああああああああああああああああっっっ!!!」




ポンッ…。




突然クリス後ろに人影が現れて、肩をそっと叩いた。

「はい。お嬢様、鹿でございますよぉ〜」
「…あら。可愛い鹿さん、よしよし」


クリスはニッコリと笑い、鹿田の着ぐるみをゆっくりと撫ぜた。



(「「鹿田さん…感謝…」」)



ぐったりと三太達は床に座り込んで、クリスの暴走が収まったのに安堵した。

「ところでクリスお嬢様、西遠寺さんと光月さんはどうされたのですか?」
「えっと…未夢ちゃんが疲れている様子でしたので、彷徨くんが無理やり帰させたようですわ」



(クリスちゃんの頭ではそう整理されたか…)

(あくまでも信じたくないみたいね…)



「そうですか…、ではまだ気分が悪いのでしょう…」
「それ、どういうことですの?鹿田さん」
「はい。まだお二人は西遠寺さんが乗ってきたバイクの近側にいらっしゃいましたよ」
「「!!」」

5人は目をそれぞれ合わせると、一目散に玄関へと走った。




***




「お願いだから、もう降ろしてよぉーーーっっっ!!!」
相変わらず足をばた付かせる未夢を、彷徨は一喝する。

「そんなに暴れているとパンツ見えるぞっ」
「えっ?きゃっ!」

慌てて未夢は空いた手でスカートを押さえて、大人しくした。
彷徨は未夢を背負ったまま花小町邸を出ると、バイクを停めた場所まで運んだ。
バイクの後ろにそっと未夢を座らせる。
彷徨はそのまま未夢が逃げないように、未夢の両脇に手を置いた。
そして未夢を見ることもなく、彷徨は深く俯いた。
見上げても、一向に目を合わせてくれない彷徨に、未夢は不安に駆られたようだ。

「どうしたの?彷徨。…今日変だよ?さっきのは私気にしてないから…大丈夫だよ?」
「……」
それでも何も言わない彷徨に、未夢は寂しそうに見つめる。

「ねえ…彷徨、なんか言ってよ…」
未夢はそっと彷徨の腕に手を添えた。

ゆっくりと彷徨は顔を上げて、未夢を見た。
不安そうに眉を寄せて、新緑の瞳に薄っすらと影が出来る。
小さな唇が物言いたいげな様子で少し開いて、彷徨をジッと見つめている。


(そんな顔するなよ…)


彷徨は情けないほど罪悪感に駆られた。

「…違うんだ…」
「違うって?」
「あの言葉は悪いと思ってるけど…その…違うんだ…」
「だから何が?」
少しじれったそうに未夢が言う。
彷徨は渋々ジャケットのポケットから一つの小さな箱を取り出して、無言で未夢に渡した。

「こ、これは?」
彷徨は恥ずかしげに目線を反らして、
「誕生日の…プレゼントさ」
「え?でも…彷徨、忘れたって…」
「…嘘だよ」
「嘘?」

頭を掻きむしりながら、彷徨はどう言ったらいいか迷っていた。
自分が恥ずかしいからと言って、誤魔化して付いた嘘が今になって自分を苦しめている。
自分で蒔いた種だから仕方ないと言えばそうなのだが。
どうしても、これだけは―――――。

「どうしても、二人っきりの時に渡したかったんだ…モノがモノだけにな…」
「…開けても、いい?」

じっと自分を見つめる未夢に、彷徨は一瞬たじろいたが、それでもコクッと頷いた。
リボンを解いて、包み紙を丁寧に剥がす。
するとそこには、小さな青いスエードの箱が入っていた。
ふと見上げた未夢に、彷徨は慌てて視線を外す。
未夢がゆっくりと開けると、キラリと光る小さな指輪が入っていた。

「これ…私に?」
「ああ。前に欲しがっていただろ?ムーンストーンの指輪」
「え?」
「その…ずっと前、未夢と一緒に行ったデパートでさ、お前がこれを好きだって言っていたのを、覚えていたんだよ…それで…」
「彷徨…」

嬉しそうに目を細めて、未夢は指輪を見つめる。
彷徨はそんな表情を見て、自分の心さえも幸せに満たされていくような気がした。

「…はめてやろうか?」

自分でもそんな事をいうなんてビックリしたが、何故か言いたい気分になってしまった。
未夢の表情を見ていると、つい……。

「え?い、いいの?」

彷徨は頷くと、指輪を貰って、未夢の右手を自分の左手に滑り込ませた。
白くほっそりとした指。
薬指を持ち上げて、そっと指輪を入れる。
未夢の指は折れてしまうんじゃないかと思うくらい、細く柔らかだった。

「大丈夫か?」
「うん…心配ないよ…」

奥まで指輪を入れると、未夢は満足そうに手をかざして嬉しそうに見つめる。
そして、全てから守るように指輪を左手で包み込んで胸元に当てた。

「彷徨、ありがとね…。凄く嬉しい……大切にするからね」

薄っすらと目尻に涙を浮かべた未夢が、とても愛しいと思った。




そっか。
あの時の衝動はこのことだったんだ。
俺は未夢を喜ばせたかったんだ。
自分が未夢から幸せをもらうように、未夢にも幸せを与えてやりたかったんだ。
だけどあの頃の俺は、自分が未夢を喜ばせることなど考える余裕なんて無かった。
自分のことで精一杯で、未夢のことなど考えてなかった。


俺は何を不安になっていたんだろう。
例え離れ離れになったとしても、自分が未夢を好きならそれでいいではないか。
自分より大切な存在なのは、もう判りきってること。
未夢ならきっと大切にしてくれる。
この指輪も、あの時過ごした時間も、自分の気持ちも、全て。
自分が未夢を信じなくて、どうする?



信じていればいいんだ。
何がなんであろうとも。



彷徨は自分が未夢のことをこんなにも想ってることに、思わず苦笑いをした。
だがそれは、とても満足げな微笑みだった。





「でも彷徨、何故あの時望くんに『指輪じゃない』って言ったの?」
不思議そうに未夢が聞く。

「…恥ずかしかったんだ…」
ポツリと呟く彷徨に、え?と聞き返す。

「だからさ…恥ずかしかったんだよ。あいつの言ってること思いっきり図星だったしさ。で、未夢にあの場所でこれ渡しちまったら、皆から冷やかされるは目に見えてるもんなぁ…そんなのさせたくなかったんだよ、特に今日は」
未夢の誕生日だもんな、と彷徨は微笑んだ。

「でも、私を抱き抱えて出るほうがよっぽど恥ずかしいんじゃない?私、凄く恥ずかしかったよぉ〜〜〜〜っ!」
「ああ、すまない…。ただ俺、あの時何も考えられなかったんだ…必死だったからさ。俺って馬鹿だよな。当分皆に顔見せられねぇーよ」

なにやってんだろ、俺って…と、彷徨は照れ臭そうに髪を掻いた。
未夢はクスクスと笑い出した。

「彷徨って、動揺しちゃうと墓穴掘るタイプだからねぇ〜ほほほっ」
「…悪かったなっ」



(未夢に関しては…だけなんだけどね、俺としては)



ブスッとした彷徨に未夢は更に言った。
「いいんじゃない?完璧な彷徨さんにも一つは欠点があってもさ。私はそっちのほうが好きだけどなぁ」

未夢がニッコリと微笑む。



(…敵わないな…)



彷徨は小さく溜息を付くと、おもむろに未夢の右手を持ち上げた。

「ん?なに?」
小首を傾げて、未夢は彷徨を見た。
彷徨は未夢の手をゆっくりと口元に近づける。

「かっ!彷徨っ!!ヤダッ、なにすんの?」

彷徨から逃げようと、腕をひっこめようとする未夢に、
「駄目だ、逃がさない」
と、更に未夢の手を徐々に近付けさせる。
そして彷徨は未夢の指にはめられた指輪にキスを落した。
柔らかな唇の感触に、未夢の指がピクリと震える。




彷徨は思い出していた。
あのデパートの店員の言葉を。




「このムーンストーンは恋人達の強い味方なんですよ。恋愛を成就させ、そしてその愛が末永く続くように導いてくれるのです。それに満月の夜にムーンストーンを口に含むと念願が成就し、初恋の人に贈れば幸せが約束されるのですよ」




信じる、とは言わない。
だけど、本当に願いが叶うのなら。




永遠に。




未夢だけを―――――――。







「おまじない、な」

彷徨はゆっくりと指輪から離れると、未夢に向かって舌を出した。
目を大きく開いて、未夢は驚いた表情を彷徨に向ける。

「え?知っていたの?彷徨。このムーンストーンのおまじない…」
「ああ。店員から教えて貰ってな…やっぱ未夢も知っていたか」
「だって、好きだもんこの石…それに…」
「それに?」

ドキドキと鼓動が高鳴る。

「…それに、彷徨から貰いたかったんだぁ、ムーンストーン…」
未夢は舌をペロッと出して、悪戯っぽく笑った。

「願い、叶っちゃった…」




頬を染める未夢の肩に、彷徨はそっと掴んだ。
バイクが微かに揺れる。
見上げた未夢の瞳と、彷徨の瞳がぶつかる。
彷徨はすっと瞼を細めて、未夢を見つめた。

その瞳は優しく、そして熱い―――――。



「誕生日、おめでとう未夢…」

「ありがと、彷徨…」



ごく自然に近付く。それが当たり前のように。
瞳を閉じた未夢に、彷徨がゆっくりと重なっていく……。




ガサッ




微かな音に気がついた二人は、ふとその方向を見た。

「げっ!」
「み、皆っ?!」

ぎょっと彷徨と未夢は驚きの声をあげた。
茂みの中から、三太達5人が申し訳なさそうに照れ笑いをしながら、ぞろぞろと這い出て来た。

「お、お前等ぁ〜っ!いつからそこにいたんだよっ!!!」
「んー、彷徨くんが未夢っちにはめた指輪にキスしたところからかなぁ〜」
「なっ!!!」

蒸発しそうなほど赤面した彷徨に、望がさらに追い討ちを掛ける。

「やっぱり指輪だったんだねぇ〜。僕のカンも大したものだね」
と、顎に手を宛てて自慢げに微笑んだ。


(くっそぉーっ!コイツだけには絶対見られたくなかったのに…)


「見ちゃったの?見ちゃったのぉ〜っ???」
パニクる未夢を尻目に、ななみと綾は嬉しそうにニコニコ顔だ。

「うん、バッチシッ!いやぁ〜良いものを見せてもらったよぉ〜」
「未夢ちゃん、ご馳走さまぁ〜」
「ご馳走さまって…・とほほ…」

未夢はガックリと頭を下げた。
その時、未夢はあることを思い出し、ガバッと再び頭を上げた。

「クリスちゃんっ!!クリスちゃんはっ?!」
「あ、それなら大丈夫。ほら」

茂みの後ろを見ると、クリスは身体中カチコチの石状態になって突っ立ていた。
コンコンと叩いてもビクともしない。

「う〜ん、堅いですなぁ…」
「クリスちゃん、未夢ちゃんと彷徨くんのラブシーンを見てよっぽどショックだったんだろうねぇ〜」
「まあ現実逃避したいって気持ちも判らないわけじゃないけどねぇ〜」
と、同情した綾とななみだが、口元は微かに笑っている。

未夢は苦笑いするしかなかった。



「俺、生でキスシーンみたの初めてだよぉ〜、スゲーな彷徨」
目をキラキラさせて興奮しまくる三太に、彷徨はブスッとした表情でボソッと言った。

「…してねーよ…」
「はい?」
「してねーって言ったの!あと数センチって時にお前等が現れたのっ!!全部っ!!お前等のせいでっっ!!!」

眉毛を上げて、キッと三太達を睨みつけた彷徨に、
「「ごめんなさぁーーーーいっっっ!!」」
と一斉に頭を下げて、皆逃げ足で屋敷へ入って行く。

追いかけようとした彷徨を、未夢がジャケットを引っ張って制した。
「彷徨っ!」
「ん?」
振り向いた彷徨を見て、未夢はほっと安堵した表情をした。
彷徨は先ほどより穏やかで、楽しそうだった。

「ううん、なんでもないっ」
と言って、未夢は嬉しそうに彷徨の腕に自分の腕を絡ませた。
添えられた右手がキラリと光る。
下を向いた彷徨の視線と、上目使いに見上げた未夢の視線とがぶつかり、お互い何も言わずにクスクスと笑い出す。

「なあ未夢」
「何?彷徨」

少し躊躇った後、空を見上げて彷徨はポツリと呟いた。



「後で…続きしような」
「…」



返事の変わりに、絡まれた腕がキュッと抱かれて。
彷徨は愛しそうに未夢の右手を握りしめた。




季節が巡る度に、俺らは一つずつ歳をとっていく。
その時々の場面は違うかもしれないけれど、
それでも、いつまでも変わらない温もりがあるといいと想う。
仲間がいて、大切な人たちがいて、そして好きな人がいて…。
ずっと自分達の側に、いつまでもいて欲しいと願う。





来年も再来年も、ずっと、ずっと―――――。













END

やり直していい?(もうですか!^^;)
今回意味まったく不明な小説を書いてしまったような気がする…。
何が言いたかったのだろうかと、今読んでもよく判らん。(自爆)
この企画が終ったらLMで修正版のをキチンと出しますんで!!

ちなみにこの小説は、
彼らは高校生ってことになっております。(アニメが主)
未夢は実家ですね。
バレンタイン小説と同じ設定でもよかったのですが、こっちのほうがリアルかな?と。
遠距離恋愛は辛いけど、盛り上がるしぃ〜♪
こんがらがっちゃった方、ゴメンなさい。
李帆の小説は気分屋なんです。(笑)

最後に。
未夢、誕生日おめでとう。
で、小説が彷徨寄りになっちゃってゴメンよ。(^^;

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