作:宮原まふゆ
「今日は、彷徨の嫌いなクリスマスだねぇ〜」
いかにもからかい口調の美夢が、俺の前を後歩きしながらふふ〜んと笑っている。
彷徨は一睨みし、ふん、と鼻を鳴らして視線を逸らした。
悪かったな、嫌いで。
ああ、嫌いだったよ。去年までな。
そうさ。余計な親父の一言で、皆が楽しそうに歌うあのクリスマスソングは、我が家じゃ親父と一緒に味気もクソもないお経ソングを歌ったさ。
不機嫌な顔を隠さず、ついと、美夢を上目で睨みながら。
「お前だって嫌いな時、あったろ?」
お前の両親、忙しいもんな。
すると。
美夢の足がピタリと止まった。
ああ、俺、また余計なことを・・・・・・。
後悔するくらいなら言わなきゃいいのに、口にしてしまった言葉は、元には戻らない。
どんな顔してるのか、見たいけど、なかなか顔が上がらない。
やっぱ、俺、最低な奴かも。
「んー、確かに」
のほほんとした美夢の声。
へ?
顔を上げると、口元に指を当てて考えてる美夢がいた。
怒ってない?寧ろ共感?
こいつの事だから、口先を尖らせて「なんてことをゆーの!」と言うより早く、手か足が真っ先に飛んでくるだろうと思ってたのだが。
涙まで出たら、更に更に困るのだが。
自分の心配をよそに、美夢はあくまでも美夢のままだった。
「パパもママも仕事仕事ーって折角の休みの日だって、禄に家に居たためしがなかったし。クリスマスだって二人にとっちゃただの年末行事みたいな感じだったし」
そんな親に育ったら、諦めも良くなるよねぇ〜。
「でも、さ・・・」
と、彷徨が口に出そうとしたのを、美夢の言葉が上に重なった。
「でもね。その後、ちゃんとクリスマスを祝ってくれたし、一人ぼっちじゃなかった。そりゃ日付はとっくの昔に過ぎちゃってたけどねぇ〜」
ウチの両親らしいでしょ?
クスクスと、思い出したかのように美夢が笑う。
なんだかその笑顔が眩しくて、居心地悪そうに、目線を逸らした。
なんだ。結構楽しいクリスマス過ごしてんじゃん。
心配して損した。
「彷徨」
「ん?」
「去年のクリスマス、楽しかった?」
今度は俺が考える番かよ。
彷徨は「んー」と空に見上げながら、暫く思い巡らしていた。
去年まで嫌いだったクリスマス。
親父に振り回されて、毎年一人ぼっちだった、クリスマス。
淋しかった、といえば、嘘になる。
でも皆が教えてくれた。
ワンニャーが、ルゥが、そして、美夢が教えてくれた。
クリスマスとは、どういうものかを。
空を見上げていた視線を、チラリと美夢のほうに移す。
「・・・楽しかったに、決まってるだろ」
照れ臭そうに呟くと、美夢がニッコリと微笑んでくれた。
その微笑みが、なんだかくすぐったくて、暫く視線を美夢のほうに向けられなかったが、このままココに居るわけにもいかないと、「もう帰ろうぜ」と美夢を見た瞬間、なぜか美夢の表情は青ざめていた。
「ど、どうし」
「ああああっっっ!!!」
叫び声と同時に彷徨の腕をガシッと腕を掴むと、美夢は強引に西園寺とは別の方向へ全力で走り出した。
なにがあったのか検討がつかず、ただ引きずられるように走る、彷徨。
「ちょっ!ちょっとっ!どこ行くんだよっ!ウチはあっちだろ?!」
「忘れてたの!」
「なにが?」
すると、ばつが悪そうに、美夢はボゾリと呟いた。
「・・・・・・彷徨の、誕生日・・・・・・」
そ、そういえば。
がーーーーーんっっっ!!!
自分の誕生日をすっかり忘れていたのと、美夢に誕生日を忘れられていたショックと、多分、あの親父も自分の誕生日を忘れていたに違いないと、今頃気が付いた自分の間抜けさがズズーンと重なり合い、彷徨の目の前が急激に真っ白になった。
ユラユラと、有無も言わさす美夢から強引に体を引っ張られながら、辛うじて叫んだ彷徨の言葉は、なんとも陽気なクリスマスソングでかき消されたのであった。
「クリスマスなんか、だいっっ嫌いだぁーーーーっっっ!!」
ちゃんちゃん♪
UPするの忘れてましたっ!(大笑)
ホントはクリスマス企画が終わった頃合を見てUPしようと思ってたんだけどね。
まるまる一ヶ月も放置状態だったわけで。(あはは)
んー、久しぶりの短編・・・相変わらず下手だな。
オチもイマイチだなぁ〜。
↑が一番重要みたいです。私の場合は。(笑)