作:ロッカラビット
西遠寺にある大きな桜の木の下で、小さな二人が小さな誓いをたてている。
「おれが“かれし”で、みゆが“かのじょ”な。」
「かれち?かのじょ?」
「きのう、かあさんがいってたんだ。“けっこん”するまでは、“かのし”“かのじょ”っていうんだって。」
「へぇ〜、そうなんだぁ〜。」
「それで、“かれし”が“かのじょ”をまもるんだ。」
「まもるぅ?」
「そうだよ。サボテンマンみたいに、わるいやつから、みゆをまもるんだ。」
「すご〜い、かなた、つよいね〜。」
「じゃぁ、“かのじょ”はなにすればいいの?」
「“かのじょ”は……。わかんない。また、かあさんにきいとく…。」
「うん!あっでもね、かなたはみゆに、なにしてほしい?」
「えっ?……。うーん。」
ニコニコ顔で彷徨の返事を待つ未夢。その笑顔を見た彷徨はニコッと笑い一言。
「いつも、わらってて。」
「えっ?わらうの?」
「そうだよ。みゆはわらってて。だってかわいいからさ。それで、おれが、みゆのえがおをまもるんだ。」
「うん!わかった。」
右の小指が絡み合う。
「「ゆびきりげんまん……♪」」
小さく交わされた誓い。
大きな桜が証人で。
時が経ち、再び再会した二人。
あの頃の記憶は無いけれど。
「おい、未夢〜!洗濯物干し終わったら、ワンニャーと…って何やってんだ?」
「あっ彷徨。桜の木を見てた。この木とっても懐かしい気がして…。」
「ふーん。そうか?」
空に向かって伸びる桜を見上げる二人。
「マンマ!パンパ!」
二人の姿を見つけて飛んでくるルゥ。
振り返った未夢に思いっきり抱きついた。
その瞬間。
バランスを崩しそのまま後ろに倒れそうになる。
声も出せずにギュッと目を瞑る。来るであろう衝撃を覚悟する。
しかし背中に触れたのは温かいぬくもりで。
「あっぶねー。」
目を開けると傍に彷徨の顔。背中には彷徨の右腕。未夢を横から包むように支えている。
「あっ!」
その状況にポンッと顔を紅くして、慌てて離れる未夢。
「あっ、ありがとう。彷徨。」
真っ赤になった顔を隠すように横を向き、なんとかそれだけ告げると、飛んでいるルゥを抱き締めて足早に家の中へ入っていった。
そんな未夢の様子に呆気にとられていた彷徨。ふと我に返って、クスッと笑うともう一度桜を見上げる。
風がサワサワ枝を揺らす。
思い出したか?と桜が聞く。
そんな言葉が届くはずのない彷徨。
懐かしい空気。
先程まで右腕に残っていたぬくもり。
何か大切なことを忘れてしまった気がする。
桜を見つめ、右手を見つめ、思い出そうとするがわからない。
ふぅと一息。
右手をギュッと握りしめ、彷徨も桜を後にした。
―――おれが、みゆのえがおを まもるから―――
七夕に合わせて何点か作品をアップしておりましたが、今日で七夕も終わりですね。
最後にもう一つと思いましたが、時間がなさそうなので…。
七夕好きとしては、もう少し書きたかったのですがなんせ時間がね…(言い訳です 笑)
さて今回は、彷徨と未夢の子供の頃ってどんなだったのかな?と考えつつ書きましたが、結局まとまりない感じになっちゃいました(汗)
幼馴染っていいですね〜。本人たちは覚えていなくても、なんだかいいですね〜。
私のこんな駄作たちを読んでくださってる方がいることに感激です。
ありがとうございます。
拍手やコメもありがとうございます。
地道にアップ出来るように頑張ります。