七夕の恋文

作:ロッカラビット




縁側に飾られた笹飾り。

昼間の賑やかな様を思い出しているかのように、夜風に揺れた笹がカサカサと笑う。


風呂上り、水を飲みに台所へ向かっていた彷徨。

ふと笹飾りに目をとめる。

明日は七夕。

みんなで笹飾りを作ろうよ!と言い出したのは未夢。

初めて見る飾りにルゥもワンニャーも大喜びだった。

そして思い思いに短冊へ願いを込めた。




彷徨は月明かりの中、一つずつ短冊を手にとった。



ワンニャーとルゥと未夢と彷徨と思われる4人が描かれた短冊。


願い事なんてまだ理解出来ていないルゥが、こうやって4人を描いてくれたことに少し心が温かくなる。


美味しいみたらし団子を毎日食べられますように。


今でもほぼ毎日食べてるじゃないか、というつっこみは敢えて言わない。ただ、ワンニャーらしくてクスッと笑う。


残るは二つ。

短冊の端がまるで手を繋いでいるように重なっている。

その様子に、伸ばした手を引っ込める。

少し背伸びをして、触れないように短冊を読む。



みんなの願いが叶いますように。



丸っこい文字で書かれた未夢の短冊。

昼間は うーん、うーん、と人一倍考え込んでいたくせに、自分の願いが人の幸せなんて。

まったくどこまでもお人よしというか…。

苦笑いをしつつ、隣に目をやる。



ルゥ、ワンニャー、未夢と繋がっていられますように。


願いを書いた自分の短冊。


本当はずっと一緒にいられますようにと何処かで願ってはいる。
でも、それはきっと本当の幸せではないだろう。

だからせめて、これから離れることになっても繋がっていられるように。



未夢、お前はこの短冊を見て少しは気付いてくれたか?

ルゥとワンニャーだけでなく、お前ともずっと繋がっていたいって思ってること。

それが何を意味しているか。



短冊に込められた恋文。


秘められた想いを知ってか笹飾りが、今度はサラサラと恥ずかしそうに笑った。



[戻る(r)]