作:ロッカラビット
「綺麗……。」
縁側に座って空を見上げる。長く続いた梅雨が明け久しぶりの快晴になり、夜は空気が澄んで月明かりが寝静まった草花に優しく降り注いでいる。今日は満月。あまりの明るさに星達が遠慮して隠れている。
「未夢、風呂あいたぞ。」
「あっ、彷徨。」
「満月か。」
彷徨は未夢の視線の先を見上げて呟いた。
「綺麗だよね。」
「だな。」
彷徨も未夢の隣に腰を下ろして月を眺めた。
しばらくの間、二人とも言葉も交わさずにじっと月を見つめていた。ルゥとワンニャーは昼間庭を駆け回ったおかげで疲れてぐっすり眠っている。
と、その時
「え?彷徨?」
急に彷徨が未夢の腕を掴んだ。焦ったような顔に、力の入った指。
しばらくその状態で固まっていた彷徨が、慌てて手を離した。
「あっわりぃ。何でもない。あっ俺、寝るから。おやすみ。」
「?うん、おやすみ彷徨。」
部屋に戻る後姿に未夢は首をかしげながら声をかけた。
部屋に入り襖を閉めるとそのままベタッと座り込んだ。片膝を立てて思わず掴んでしまった自分の右手を見つめる。
「居なくなるかと思った。」
小さい声で呟いて、右手を握りしめた。
子供の頃に読んでもらった物語。月へ帰るかぐや姫の絵が切ない顔をしていて、そんなに悲しい顔をするなら帰らなきゃいいのにって思ってた。
未夢の月を見つめる顔が、まるであのかぐや姫のようで…。
自分の手元に置いておきたい。どうしようもなく溢れ出す独占欲。まだ自分の物になった訳でもないのに。まだ何も始まってないのに。
はぁ、と深いため息をついて、握りしめて赤くなった手をまた見つめた。
短編を一つ。
あれ?何だか読んだことあるような作品になってる?もしかしたら過去に投稿された方の真似になってるかも…(汗)
皆さんの作品を読みすぎて、頭に浮かんだのが自分で考えた話なのか、誰かの作品だったかわからなくなってます。
もし気付かれた方、お知らせください。即刻削除か訂正します。すみません。
読んでくださり、ありがとうございました。