拍手後のおまけ作品

**タイトル想いの伝え方のおまけ**彷徨side

作:ロッカラビット



***
このおまけは、タイトル「想いの伝え方」の5話完結作品の後日談です。
未夢side、彷徨side、ワンニャーsideの3つがあります。
どれが見られるかは…。
***



**タイトル想いの伝え方のおまけ**

〜二人の気持ちが通じ合ったその後・彷徨side〜


クリスマスまで、あとわずか…。

どこもかしこもクリスマスの飾りつけで賑やかだ。


「あぁ〜わかんねぇ〜。」


お店を何軒かまわった彷徨は、広場のベンチに腰かけると空を仰ぐ。

自分には場違いな可愛らしいアクセサリーが並ぶお店に入るだけでも、周囲の視線が痛いのに…。

結局決められずに、逃げるように店を後にする自分自身にも呆れてしまう。


「未夢…。」


思い浮かぶのは満面の笑みでこちらを見つめる未夢の顔。

その笑顔を目の前で見たいが為に、日がな一日こうして出歩いているのである。


「もう一軒、行ってみるか。」


ぼそっと呟いて立ち上がる。

うぅーと一度背伸びをしてから歩きだす。

そういえば、こないだ三太と出掛けた時に見かけた店…。

自分の記憶を頼りに慣れない道を進んでいく。


「あった。」


人気のない道に、古ぼけた看板。

少しくすんだウィンドーから中を覗く。

飾られたツリーに弱々しく光る電飾がなんだか温かく感じる。

ブリキのオモチャが並ぶ中に、ふと、彷徨の目がとまる。

気がついたらお店の扉を開けていた。


「いらっしゃい。」


ゆっくりとした優しい声が聞こえて、奥からおじいさんが出てきた。


「あっ、あの、これ、ください。」


値段も確認せずに、目的の品を指さす。


「やっと、出逢えたな。」


おじいさんは優しく笑うと、彷徨が指した指輪を大事そうに持ち上げる。

不思議そうな彷徨をよそに、おじいさんは話を続けた。


「これは、売り物じゃないんじゃよ。
だが寂しがり屋な指輪での。
こうやって、窓越しに街を見るのが好きらしい。
だからこうやって、ここに並べて置いたのだが今まで一度もこの指輪を欲しいという人が現れなかった。
あなたが初めてじゃよ。
もしかしたら、この指輪があなたを待っていたのかもしれんな。
これは、あなたに貰ってもらいたい。
クリスマスのプレゼントかい?」

「あっ、はい。」


じっとおじいさんの話を聞いていた彷徨が、慌てて返事をする。


「どうやらこの子の真の貰い手は、可愛らしいお嬢さんのようだ。
指輪が喜んでおる。きっと大事にしてくれるだろう。」


おじいさんは指輪に話しかけると、そっと小箱にしまった。

手際よくラッピングを済ませると、最後に赤いリボンを付けて彷徨に差し出す。


「末永く、お幸せに。」


戸惑いながらも、指輪を受け取る彷徨。


「あ、あの、おかね…」


彷徨が言葉を発しかけた所で、しーっと指を口にあてたおじいさんがウィンクして見せた。

先ほどまで彷徨の目の前にいたはずが、もう部屋の奥にいる。


「えっ?」


驚く彷徨をよそに、おじいさんの姿は消えていた。


「あっ、ありがとうございました。」


彷徨は頭を下げると店を後にした。

来た道を歩きながら、混乱する頭で手にした小箱を見つめる。


「メリークリスマース」


先ほどの優しいおじいさんの声が聞こえた気がして振り返る。

けれどそこには誰もいなかった。

少し太った体に白い髭、優しい笑顔に穏やかなしゃべり声…。

おじいさんの姿を思い出す。


「まさかな…。」


小箱を握りしめて、空を仰ぐ。


クリスマスまであとわずか…。


拍手後のおまけの話。

タイトル「想いの伝え方」のおまけ***彷徨side


[戻る(r)]