夕焼けの帰り道

作:ロッカラビット




「うぅ。今日は冷えるねぇ。昨日よりぐんと気温が下がった気がするよ〜。」


「重い。」


「コート着てても、風が冷たくて、寒い寒い。」


「重い。」


「もぅ!仕方ないでしょ〜、ワンニャーが特売日だからって大量に買い物頼むんだもん。
まったく、会話にならないじゃない。」


大きな買い物袋をさげた二人が、夕焼けに染まる小道を歩いている。


「んなこと言ったって、重い物は重いし。ってか、お前、これどうするつもりだったんだ?」


これと指されたのは彷徨が持つ買い物袋。

今日の買い物当番は未夢だった。

大量の荷物を抱えて未夢がスーパーたらふくを出た所に、たまたま本屋帰りの彷徨が出くわしたのである。


「あ〜、えっと・・・・……。」


「はぁ…。」


「そんなに呆れることないじゃない!…た、確かに多いなぁとは思ってたけど、彷徨がいなくてもちゃんと家まで持って帰ったわよ!」


「へいへい。」


「あぁその顔は信じてないでしょ!私だって、やる時はやるんだから!」


「……。
そうか、そうかぁ。それなら、ほい。」


彷徨が持っていた荷物を差し出す。


「えっ!」


ニヤッと笑う彷徨に、負けじと未夢が荷物を受け取る。

両手にそれぞれぶらさげた荷物は、地面すれすれの所でなんとか持てている。

あまりの重さに一歩も動けずにいる未夢。

『あぁ、あんなこと言わなきゃ良かったよ〜。彷徨の意地悪。…って、自業自得かな。さて、どうしよう…。』
地面に引っ張られる重さにつられるように、思考回路も落ちていく。

必死に重さに耐える未夢を今度は北風が襲う。

『うぅ、寒い。もぅ今日は本当についてないなぁ。』
冷えた体が体力を奪い、元気もなくなっていく。




と、急に視界が暗くなる。


「えっ?」


驚いて声をあげた次の瞬間には、元通り夕焼け空が目の前に広がっていた。



「……。
あれ?これ。」


急に温かくなった首元に手をやると、先程まで彷徨が巻いていたマフラーが。


「え?……。あっ、荷物。」


両手にあった荷物も無くなっている。



「おい、置いてくぞ。」


声のする方に視線を向けると、前方に買い物袋をさげた彷徨がいた。


驚いて固まったまま彷徨を見つめる未夢。


「寒いんだろ?早く帰るぞ。」


くるっと向きを変えて、去っていく後ろ姿に、ハッと我にかえる未夢。


「あっ、待ってよ〜。」


慌てて追いかけてくる未夢の足音を聞きながら、ひょいっと荷物を持ち直して振り返る。


「次の買い物当番、よろしくな。」


ひるんで止まった未夢を見て、フッと笑うとまた西遠寺を目指して歩き出す。


「うっ。…………。う〜ん、でも仕方ないか。」


首元に巻かれたマフラーを触りながら小さく呟く未夢の顔はほんのり赤く、笑みがこぼれていた。

もう一度、マフラーをギュッと握りしめてから、彷徨に向かって走り出す。


「ちょっと待ってよ、彷徨。私も荷物持つから〜。」




紅く染まる空に火照った顔を隠すように、前だけ向いて歩く二人。

和やかな会話に、楽しそうな笑い声。

そこに漂う穏やかな空気に、北風も遠慮気味に過ぎていった。



お題募集してみるものですね。

なんと、こんな私にもお題をいただきまして///

嬉しくて小躍りしつつ、思いつくまま書き上げてみました。

お題は「マフラー」でした。


ですが、なんせ才能がございませんので、こんな仕上がりに。←予想通り(笑)

すみません・・・。

また「マフラー」を使って違う物語を組んでみたいと思います。

リクエストありがとうございました♪

お題をもらって書くのって、楽しいですね。


他にも何かリクエストとか、お題与えてやってもいいよって方がいらっしゃいましたら、お待ちしております。

ご覧いただき、ありがとうございました。


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