星のうた、きみと似た…

作:



さーさーのーはー さーらさら
のーきーばーにー ゆーれーるー
おーほしさーまー きーらきら
きーんーぎーんー すーなーごー



6月の終わりごろからだったか。
うちではずっとこのメロディーが流れている。

声の主は、たいてい未夢。ワンニャーが鼻歌うたってるときもあるけど。
ルゥが未夢にせがむ。もう何十回と聴いた、未夢の『七夕さま』。

本を読み終えたところで、半分に折った座布団を枕にして俺は畳に転がった。
「子供ってなんで飽きないんだろうなー…」
独り言も、歌声にかき消される。

天井の広がる視界の端に、縁側に腰掛ける未夢。
リズムに合わせて、長い髪が揺れている。
その膝で、ルゥがきゃあきゃあとご機嫌に声をあげている。
一緒に歌ってるつもりなんだろうな。


「なんか、懐かしい…」
目を閉じると、音が何倍にも広がる。



流れる風、未夢の優しい歌声。
そこに重なるルゥの楽しそうな声、小さな手をパチパチと叩く。
早めにさげた風鈴が、自分も、と主張した。





さーさーのーは さーらさら
のーきーばーに ゆーれーる
おーほしさーま きーらきら
きーんぎーん すーなーご


彷徨はこのお歌が好きねぇ…


――――かあ、さん……



彷徨…

彷徨…?

かぁなたぁー?


「彷徨っ! ごはんだよ?」

「……あぁ…」

夢だった、…か。

現実の音に重なった、幼いころに聴いた同じメロディー。

声は全然違うのに、そこにのせられた想いがよく似ているな、なんて
思い返した今だから、気付く。


4つの頃。
覚えたばかりのひらがなで、いくつもいくつも短冊に書いた、たったひとつの願い事は叶わなくて。
次の年、笹をとってきたオヤジに、七夕飾りは要らないと言った。



あの頃の幸せはもう戻らないけど、オヤジは相変わらずだけど。
ここで一緒に食卓を囲む家族が居る。
これはきっと…また違うカタチの、幸せ。


「久々に笹とってくるか……」
「ホント!? やったぁ! 飾りと短冊、用意しなきゃ!」
「お願い何にしましょうね〜ルゥちゃま〜」
「きゃ〜ぁ!」





星に願うことなんてないから、願い事の代わりに密かな決意

短冊になんて書けないから、母さんにだけ聴かせてあげる



こいつらは俺が守る

見ていて、母さん―――――



7月ですね。
私なりの七夕です。
彷徨くんの一人称視点。
杏はこれ以上の長さになると一人称に出来る気がしませんw

冒頭は未夢ちゃん、あとのは瞳さんが歌ってます。
未夢ちゃん×ルゥくんと、瞳さん×幼少期の彷徨くんって、ダブるものがあると思って。

自分で書いてて、ちょっとうるっと来ました(笑)
4つの頃…のあたり。まぁまぁ、それは置いといて。

最後の、『聴かせてあげる』って…違和感ありますよね?きっと(^^;;;
杏も彷徨くんらしくない言葉だと思いますが、わざとです。

幼少期の薄い記憶しかないお母さん。
きっとその胸に居るお母さんと話すときって、3歳の男の子に戻るとゆーか…
いつもみたいな口調では話せないような気がしたんです。
彼が彼に形成される段階を、一緒に過ごしていないから。
母と死別したからこその、今の彼なんですけどね。
そんなこんなで、『聴かせてやるよ』は却下しました。。

こんなことやってる場合じゃない!
続きを書いて早く完結させろって感じです。。。
さらさら進む方に逃げちゃいました。
御一行も頑張らねば。

お読みいただきありがとうございます。
拍手、コメントもありがとうございます。
ご感想、ホント嬉しいです!
では、次回もよろしくお願い致します。



[戻る(r)]